八条学園騒動記
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第二百九十九話 噂は急にその十
「言われたんだよ」
「ロザリーは馬は」
「乗れないよ」
乗らないのではなくそちらだというのだ。
「馬ってのは乗るのが難しいだろ」
「それもかなりな」
「馬ってのは生き物だからね」
ここがだ。バイクや車とは違うのだ。
「だから乗れないんだよ」
「だがそれでもか」
「そうだよ。あたしが馬に乗れてね」
そしてそこからだった。
「馬族だって噂があったんだよ」
「運動神経がいいからか」
「運動神経がよくても馬に乗れるとは限らないだろ」
「運動神経が影響するがな」
乗馬もスポーツだ。それなら運動神経が影響するのも当然だ。
だがそれが必ず馬に乗れるとは限らないというのである。ロザリーが言うのはこのことだった。
「それでなんだよ。あたしは乗馬は駄目なんだよ」
「そういうことか」
「うちのクラスで乗馬っていったらね」
「ナンかポルフィだな」
とりわけナンだ。生粋のモンゴル人の。
「その二人だな」
「ナンが馬族ならまだわかるだろ」
「そうだな。いつも乗っているしな」
登下校も馬だ。ちょっとした移動の場合もナンは馬を使う。
「普通はナンだと思うが」
「けれどあたしだったんだよ」
「ロザリーが馬族か」
「おかしな噂に思うだろ」
「実にな。しかしその噂にか」
「あたしも困ってたんだよ」
思い出した苦笑いでだ。ロザリーは言う。
「この前ね」
「そんなことがあったのか」
「僕はじめて聞いたよ」
アルフレドとジミーも言ってくる。ジミーはこの噂も知らなかったのだ。
「僕はその噂ははじめて聞いた」
「そうだったのか」
「全くね。変な噂だったよ」
ロザリーは苦笑いのままで述べた。
「あたしが何で馬に乗るんだよ」
「それでその噂の元は何だったのだ」
「何だったんだろうね」
知らないという返答でだ。ロザリーはビアンカに答えた。
「本当にね。あたしも知りたいよ」
「出所は不明か」
「それでも拡散するのが噂なんだよ」
「何処から出るのがわからなくとも」
「まだあんたの場合みたいにわかる場合はよくてね」
「わからない場合もあるか」
「そういうことだよ。今もわからないんだよ」
こうビアンカに話すロザリーだった。
「けったくそ悪いっていえば悪いけれどね」
「そうか。それで馬族だが」
「町にいるだろ。辮髪とかモヒカンとかチョン髷の連中がね」
連合で不良の髪型だ。彼等の意思表示である。
「あの連中の中にいるって言われたんだよ」
「ロザリーがか」
「全然想像できないだろ」
「全くな」
まさにそうだとだ。ロザリーはビアンカに話す。
「しかしそうした話になったのか」
「理解不能だろ。あたしも何だって思ったよ」
「しかも噂の元は不明か」
「何処のどいつが言ったのかな。まあそうした話は置いといてな」
ロザリーはまた自分の携帯を見た。そうしてビアンカ達に話すのだった。
「また変な噂が出てるぜ」
「今度は何だ」
「どういった話題なの?」
アルフレドとジミーがロザリーに問うた。
「また誰かの噂話か」
「そういった感じの話かな」
「いや、その町の馬族がさ」
どうかというのだ。その町を馬で走り回る彼等が。
「変な一団にボコられたらしいぜ」
「妙な一団だと」
「それって一体」
「ええと。馬族らしいね」
その奇妙な一団もだ。彼等と同じくそうだというのだ。
「その連中にうちの学校の馬族連中がやられたらしいな」
「また妙な一団が出て来たのか」
「何か次から次にそんなのが出て来るね」
アルフレドとジミーはロザリーの話を聞いてこう言うのだった。だがこの謎の馬族の一団が騒ぎを起こすのだった。そして二年S1組の面々が巻き込まれることになるのだった。
噂は急に 完
2012・6・1
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