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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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第十三話





 射撃を開始した九九式軽機関銃の七.七ミリ弾は、今まさに武装した女性を槍で討ち取ろうとした敵盗賊達の鎧を貫いて薙ぎ倒していく。

「射撃開始ィッ!!」

 伊丹が叫び、ベ式機関短銃を構えた樹達も引き金を引いて射撃を開始する。既に白兵戦に備えて着剣をしている。(ただし樹のベ式機関短銃は現地改造していて、現地で手に入れた短剣を装備している。しかし取り付け部分が貧弱なため折れやすい)

 九九式短小銃と九九式軽機関銃、ベ式機関短銃の銃弾は東門にいて民兵を討ち取ろうとしていた盗賊達を次々と撃ち倒していく。

「早く中にッ!!」

 伊丹はそう叫び、東門で生き残っていた民兵達は慌てて味方の柵の中へと入っていく。盗賊達はそれを追おうとするが九九式短小銃と九九式軽機関銃の射撃で地面に横たわらせるのみだった。

「片瀬ッ!!」

「了解ですッ!!」

 片瀬が盗賊達に九七式手榴弾を投げる。地面に転がった手榴弾は数秒してから爆発してその破片が盗賊達を殺傷する。

「な、何だッ!? 爆発の魔法かッ!?」

「目が、目が~~~ッ!!」

「続けて投げろォッ!!」

 九七式手榴弾の効果を見た樹はそう叫び、他の陸戦隊員が九七式手榴弾を投擲して次々と爆風で盗賊を吹き飛ばす。そして負傷した盗賊達に樹達はベ式機関短銃と九九式短小銃で止めを刺していく。

 しかしそれでも盗賊達の数は増える一方であるが此処で山砲と歩兵砲の射撃準備が完了した。

「準備完了ッ!!」

「山砲撃ェッ!!」

 伊丹が吠えて四一式山砲が盗賊に対して九四式榴弾を発射した。九四式榴弾が東門に命中してその爆風で盗賊達がまたも吹き飛ぶ。

「こ、これはまさかアルヌスの……」

「続けて歩兵砲撃ェッ!!」

 生き残っていた盗賊の言葉を遮るかのように九二式歩兵砲が九二式榴弾を発射して再び盗賊達が吹き飛ぶ。

 その時、ロゥリィは「もう駄目ッ!!」と言ってハルバートを構えて盗賊達の群れへと突撃したのだ。

「あの馬鹿ッ!!」

 樹はそう叫んだ。更にロゥリィの突撃に我もとばかりに九九式軽機関銃を構えた栗山も突撃する。

「クソッタレッ!! 隊長ッ!!」

「あぁッ!! 軽機と砲兵以外は突撃ィッ!!」

 そしてロゥリィと栗山を守るために水野と軽機と山砲と歩兵砲を受け持つ砲兵を残して樹達も突撃する。勿論ヒルダも突撃する。そのため剣を抜刀していた。

 その頃、イタリカ上空にはアルヌスから出撃した航空部隊が漸く到着したのである。

「艦爆隊は城門にいる盗賊を攻撃しろッ!!」

 九七式司令部偵察機に乗り込む攻撃隊指揮官の健軍大佐が司偵の左を飛行している九九式艦爆隊に黒板を見せながら怒鳴る。日本軍の無線は聞き取れないのがあるので特地航空隊は無線機を新型にしようと計画中で出撃前に全て降ろしていたのだ。

 特地からの要請で政府はアメリカと交渉して無線機を購入したりするがそれはまだ先の話である。今のところはパイロット同士での合図や黒板でする事になっていた。

 それはさておき、命令を受けた九九式艦爆隊の三機編隊がダイブブレーキを開いて急降下を開始した。小隊は急降下をしながら機首の七.七ミリ機銃弾を発射して東門の城門にいた盗賊を蹴散らして二百五十キロ陸用爆弾を投下して東門を破壊する。

 そして制空隊の九六式艦上戦闘機と九七式戦闘機が地上に向けて機銃掃射を開始して機銃弾を盗賊達に叩き込む。

 一方、その下で栗山とロゥリィが猛烈な白兵戦を展開していた。

 そこへ樹達が追いつき二人を援護する。

「白兵戦をするとは思わんかったわッ!!」

 樹はそう叫びつつ盗賊の腹を銃剣で刺して引き金を引いて一連射を撃ち込む。そして直ぐに抜いて盗賊を蹴り倒す。倒された盗賊は地面に叩きつけられ二度と動く事はない。

 後方の柵では水野達が九九式軽機関銃で援護射撃をしている。そこへ戦闘機隊と九九式襲撃機隊が飛来した。

 両隊は急降下をした。ロゥリィ達が奮戦している盗賊へ向けてだ。

「ヤバッ!!」

 急降下を見た伊丹達が走る前に樹は走り出して白兵戦をしていたロゥリィの腰をガシッと掴んでそのまま逃げる。それはもう一目散に逃げる。

「ちょ、ちょっとぉッ!!」

「あれは流石に無理だッ!!」

「やかましいわドアホどもッ!!」

 暴れるロゥリィに樹は怒鳴り、両隊の邪魔しないように逃げる。勿論栗山は両隊の急降下を見てあっという間に退避した。

 そして水野達がいる柵まで逃げると両隊は一斉に七.七ミリ機銃弾を発射して六十キロ爆弾を投下した。

「全員伏せろォッ!!」

 伊丹の言葉に樹や兵士、民兵達が伏せた。

 七.七ミリの弾丸は盗賊達の身体を貫き、肉片へと変えていく。そして爆弾が命中して盗賊を吹き飛ばす。

「に、逃げろォッ!!」

 攻撃隊の攻撃に恐れを抱いた盗賊達は慌てて逃げ出した。しかし戦闘機隊が駆けつけて七.七ミリ弾をぶっぱなす。

 盗賊達は楯を構えるが弾丸はそんなのをものともせずに貫通して盗賊達の命を奪う。

 その状況をピニャは呆然と見ていた。ピニャの耳から聞こえてくるのは盗賊達の悲鳴、銃撃音、爆弾の演奏だった。

 それも程なくして終わりを告げる。

「突撃ィッ!!」

 朝日が上り、アルヌスの方向から加茂大佐率いる第一戦車連隊の九七式中戦車と九五式軽戦車が突撃を開始した。更にその後方に待機していた一木大佐の歩兵第二八連隊が突撃を開始する。

「突撃ィッ!! 突っ込めェッ!!」

『ウワアァァァァァァーーーッ!!!』

 九九式短小銃に銃剣を着剣した兵士達が雄叫びを上げて突撃をする。更に一木大佐は士気を上げるために突撃ラッパを吹かせている。

 九七式中戦車が短砲身の五七ミリ戦車砲を発射して盗賊を吹き飛ばす。

「ヒイィッ!!」

 砲弾の攻撃で腰が抜けたのか地面にへばりつきながら逃げようとする盗賊もいたが、それらは追いついた歩兵第二八連隊の兵士が突いた銃剣が盗賊の喉を突き刺して絶命させた。

「くそォッ!!」

 一人の馬に乗った盗賊が剣を構えて九七式中戦車に斬りかかった。しかし、二五ミリの装甲が剣を貫く事は出来ずハッチを開いて出てきた戦車長が十四年式拳銃で撃って仕留めた。

 第一戦車連隊と歩兵第二八連隊の参戦で盗賊達は完全に戦意を失って次々と剣や槍、楯を捨てて両手をあげて降伏の意思を表したのであった。

 その光景を樹達は見ながら安堵の息を吐いた。

「……何とか間に合いましたね」

「あぁ、予想通りに盗賊が第一戦車連隊と歩兵第二八連隊に蹂躙されたな」

 ふと、樹は何も動かないロゥリィを見た。桜色の唇をニィと歪めてその隙間から鋭い犬歯を覗かせて視線はある方向を見ていた。

 ロゥリィを支えるために腰を掴んで攻撃隊から逃げていた樹だったが、いつの間にかロゥリィを持っていたため腰からロゥリィの胸に手が移動していた。

 樹の右手はロゥリィの左胸を押さえ込んでいたのだ。(言わばお姫様抱っこ)

「………」

 その事に漸くながら気付いた樹は顔を青ざめながらロゥリィを降ろした。そして地面に脚がついたロゥリィがまずする事は樹の顔を殴る事であった。

「ぷぎゃッ!?」

 樹はそんな声をあげて地面に倒れ、伊丹達はそんな樹に無言で敬礼をするのであった。



 一方、ピニャとハミルトンは第一戦車部隊と一木支隊の戦闘に終始呆然と見ていた。それは戦闘が終わり、傍らにいたグレイから声をかけてもらうまで呆然としていた。

「……何なんだ今の戦闘は……」

「「………」」

 漸くピニャの口から開いた言葉にハミルトンとグレイは何も言えなかった。

「ですが姫様、これでイタリカの戦闘は終わりました」

「そうであろう。……問題はこの後だ」

 奴等は一体何を要求してくる?

 もしイタリカを攻めるなら彼女では到底太刀打ち出来ない。全てはあの火を吹く鉄の軍馬や火を吹く杖(戦車砲や軽機関銃)等によって帝国軍の兵士達はミンチに変えられるだろう。

 あのような魔法を使われイタリカを占領したらあっという間に彼女はおろか、ハミルトンやミュイ達は首を鎖で繋がれて奴隷にされてしまうかもしれない。

「……どうしたものか……」

 ピニャの呟きはハミルトンには聞かれなかった。





 
 

 
後書き
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