八条学園騒動記
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第二百九十四話 ジョルジュの神頼みその四
「そしてね」
「恋愛成就だね」
「恋愛は御祈りからなのよ」
「そこからはじまるんだ」
「そうよ。それからよ」
また言うナンシーだった。
「だから。いいわね」
「わかったよ。それじゃあね」
こうしてジョルジュはナンシーを入り口に待たせる形で神殿に入った。するとだ。
神殿の中に一人の老人がいた。カトリックの神父の法衣と古代エジプトの服を合わせた様な白い丈の長い服を着ている。丁度神父の服を白にした様な感じだ。
胸には女性を象徴するアンクがある。その老人がだ。ジョルジュに対して尋ねてきた。
「御祈りですか」
「はい、そうです」
「わかりました。それならです」
老人はジョルジュを神殿の奥に案内した。するとそこに切れ長の目の黄金の女神像があった。
その目は緑だ。その女神を見て言うジョルジュだった。
「この女神様が」
「神殿の主イシス女神です」
「ですよね、やっぱり」
「では御祈りを捧げられますね」
「はい、そうします」
率直にだ。ジョルジュは答えた。
「今から」
「わかりました。ではその前にです」
「その前に?」
「御賽銭を入れて下さい」
見れば女神像の前には賽銭箱がある。日本の神社のそれにそっくりだが銅製で金色だ。
「そちらに幾分か」
「わかりました。それじゃあ」
「御祈りの方法ですが」
今度は礼拝の方法が話される。
「イスラムのものになります」
「イスラムですか」
「ただし詠唱はありません」
神を讃える言葉のそれはないというのだ。
「そのまま御祈り下さっていいです」
「そうなんですか」
「はい。では宜しいでしょうか」
「わかりました」
一も二もないといった感じで返す。そうしてだ。
実際にアッラーの拝礼でイシスに願いを定める。それが終わってからだ。
ジョルジュはその老人、イシスの神官に対してだ。立ち上がってから尋ねた。
「あの、どうして御祈りは」
「イスラムのものかというのですね」
「それはどうしてなんですか?」
「古代エジプトでは違いましたが」
古代のだ。その頃の信仰ではというのだ。
「ですがそれでもです」
「何千年の間に変わったんですか」
「はい、変わりました」
「そういえばエジプトにもイスラムが入りましたね」
「そうしてイスラム教国になりました」
尚エジプトは銀河に進出してサハラの戦乱の中に消えている。今はない。
「そしてです」
「信仰が復活しても」
「イスラムの影響が残っているのです」
「それでなんですか」
「他のエジプトの神々は知りませんが」
「イシス信仰ではそうなんですか」
「そうなっています」
神官はこうジョルジュに話す。
「そうした次第です」
「成程、そうだったんですね」
「はい。それでなのですが」
「それでとか?」
「恋愛成就の御守りはどうでしょうか」
礼拝はイスラムだがどうも日本の神道に似ていた。
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