八条学園騒動記
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第二百九十三話 しゃんしゃん火までその三
「そうしたことはね」
「だから今回は口裂け女は僕達の前に出て来なくてね」
「しゃんしゃん火を呼んだら出て来たのね」
「そういうことになるね。さて」
撮影を終えてからだ。ジョルジュはあらためてナンシー、そして他の面子にも言った。
「これは確実に一面を飾るニュースだけれどどうするのかな」
「ええ、すぐに部室に戻るわ」
写真部の部室にだとだ。ナンシーはジョルジュに答えた。
「そうするわ。それでいいかしら」
「僕に異論はないよ」
「僕もです」
ジョルジュだけでなく後輩も答えた。
「それじゃあ今から部室に帰ってね」
「記事を書きましょう」
「一面は決まりね」
ナンシーは笑みも浮かべていた。
「もう確実よ」
「先輩、何か思わぬ展開になりましたね」
「そうね。けれどね」
「けれどっていいますと」
「肝心の相手は出てこなかったわね」
このことについだ。ナンシーはいささか残念そうに述べたのである。
「口裂け女はね」
「そうですね。やっぱり妖怪ってのは」
「探すと出ないのね」
「そうしたものですかね」
「みたいね。残念だけれど」
「ここで出て来たらもっと凄いことになりますね」
後輩は少し笑顔になって述べた。
「それこそどうなるか」
「そうよね。けれどどうもこう言うとね」
ナンシーもわかってきていた。
「出て来ないものみたいだから」
「じゃあ口裂け女は諦めますか?」
「出て来たらその時はその時よ」
ナンシーは今は少し素っ気無かった。
「ポマード用意して撮影するわよ」
「わかりました。じゃあその時は」
「ええ。ただね」
「ただ、ですか」
「まあ出て来ないでしょうね」
半ば諦めていた。もう既にだ。
「それならそれでいいわ」
「ですか。じゃあもうこれでいきますか」
「いきましょう。とりあえず撮影は」
「終わったよ」
ジョルジュが答える。
「もうね。それもばっちとね」
「あっ、本当ね」
ナンシーはジョルジュが撮ったその写真を見た。見ればだ。そこにはその三つの燃え盛る火球があった。実にはっきりと映っていた。その写真を見てだ。ナンシーは満足した顔で微笑んだ。
そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「これでいいわ」
「うん。ただね」
「ただって?」
「それってどうなのかしら」
ここでだ。ナンシーはそのしゃんしゃん火、写真の中のそれを見てまた言った。
「物凄く鮮やかに映ってるけれど」
「それが駄目なの?」
「ええ。かえって嘘臭く見えない?」
「嘘じゃないよ」
撮ったジョルジュにしては自信がある。だから言う言葉だった。
「僕が実際に撮ったって言えるよ」
「だから。ジョルジュが撮ったのはわかるけれど」
「それでもなんだ」
「そうよ。ちょっと鮮やか過ぎない?」
首を捻りながらだ。また言うナンシーだった。
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