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八条学園騒動記

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第二百九十二話 日本の妖怪その二


「出て欲しい時には出て来なくて」
「出て欲しくない時には出て来る」
「そういうものなのよ」
「世の中って上手くいかないね」
「そうそう上手にいかないのが世の中よ」
 ナンシーは眉を顰めさせてマルティに答えた。
「何時何があるかわからないしね」
「口裂け女も急に出て来たことも考えると」
 今度はカトリが言ってきた。
「そうなるわね」
「そうでしょ。とにかくね」
「とにかくよね」
「思い通りにいかないのよ」
 また言うナンシーだった。
「世の中は何でもね」
「うん、このことについてもね」
「そうなのよね」
「それでも記事は書かないといけないのよ」
 これは絶対だった。
「新聞部だからね」
「新聞部故に」
「そう、それ故によ」
 ナンシーは前は見ていた。
「書かないとね。さて、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「それじゃあっていうと?」
「自分で取材に出るわ」
 今日はだ。そうするというのだ。
「目撃の報告を待ってるんじゃなくて自分で探しに行くわ」
「そこで若し自分が口裂け女に会ったらどうするの?」
 カトリはナンシーを心配する顔で彼女に問うた。
「その場合はどうするの?」
「ああ、その場合ね」
「襲われるけれどいいの?」
「ポマードとベッコウアメは持ってるから」
 この二つはだ。既にだというのだ。
「大丈夫よ」
「いざとなればなのね」
「そう、ぶつけるから」
 そのだ。ポマードとベッコウアメをだというのだ。
「もう備えはしてるから」
「調べてるだけはあるのね」
「調べてる人間がやられたら洒落にならないじゃない」
 微笑んでだ。こうも言うナンシーだった。
「そうでしょ。それはね」
「確かにね。そこはね」
「そう。だから大丈夫よ」
 にこりと笑ってだ。ナンシーはカトリに答えた。
「例え実際に出て来てもね」
「だといいけれどね」
「備えは忘れないわ」
 ナンシーはまた答えた。
「このことは第一に考えてるしね」
「じゃあ大丈夫だね」
「例え本物が出て来てもね」
 実際にそうなってもだとだ。マルティとカトリも言う。
「それこそ例え今ここで出て来ても」
「大丈夫なのに」
「ポケットの中にあるから」
 そのだ。ポマードとベッコウアメがだというのだ。
「何時何処で出て来ても大丈夫よ」
「ならいいよ。けれどね」
「そういうものを持っていてもね」
「一人でいるのはよくないよ」
「相手は三人姉妹って説もあるから余計にね」
「ボディーガードなのね」
 そのことの話だとだ。ナンシーもわかった。
「それのことね」
「そう。ましてナンシーは女の子だから」
「そのこともしっかりしてよね」
「ボディーガードね」
 その存在についてはだ。ナンシーは視線をちらりと左にやった。 
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