| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条学園騒動記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二百八十九話 カトリの思うことその四


 それでそのうえでだ。彼はカトリに述べたのだった。
「それでかな」
「そうなのよ。バレエもスケートも本当にね」
「数ミリを争うものなんだ」
「感覚はね。そういうものなのよ」
「精密機械だね」
 マルティはどちらの芸術もだ。それだと評した。
「それだと」
「そうよ。本当に精密機械なのよ」
「だから数ミリでもなんだ」
「野球でも。ピッチャーはそうみたいだけれどね」
「握りが数ミリ違うと?」
「同じ球種の変化球でも違ってくるっていうじゃない」
「カーブとかシュートでも大小があって」
 それで数種類のカーブを使い分けるピッチャーも昔からいる。高橋一三というピッチャーは大小三種類のカーブを投げ分けてそれを武器をしていたのだ。マルティはこう言われるとだ。
 少しだけわかった。その彼を見てだ。
 その野球に例えてだ。カトリは言ったのである。
「だから。それと同じで」
「スケートやバレエも」
「そう、変わるの」
「そういうのだったんだ」
「精密機械って言ったわよね、今」
「うん、言ったよ」
「だから。精密機械だから」
 それ故にだというのだ。
「本当に数ミリ単位で変わるのよ」
「ううん、それはまた繊細だね」
「繊細よ。バレエもスケートも」
「じゃあこれから少しそこを訂正していくのかな」
「ええ、そうするわ」
 まさにそうするとだ。カトリはマルティに答えた。
 そしてそのうえでだ。早速だった。
 立ち上がりそのうえでだ。マルティに述べたのである。
「じゃあ今からね」
「練習?」
「そう。バレエで重心をね」
「訂正するんだ」
「スケートは元々バレエからはじまってるから」
 アイススケートはだ。そうなっているのだ。だからこそバレエに対してこのうえない情熱を向けているロシアではスケートもかなりのものなのだ。
 そのバレエについてだ。また言うカトリだった。
「だから。バレエよ」
「そのバレエの重心を訂正したらそれだけで」
「そう。スケートも違うから」
 それ故にだというのだ。
「やってみるわ」
「熱心だね。すぐに練習して訂正するって」
「思い立ったらすぐによ」
 まだ席に座ったままのマルティにだ。カトリははっきりとした声で答えた。
「やらないとね」
「部活に燃えているね。まあもっともね」
「もっともって?」
「それは僕もだけれどね」
 マルティは思わせぶりな、何か隠している笑顔でカトリに答えた。
「同じかな」
「映画にビデオになの」
「そう。どちらにもね」
「そういえばマルティの実家って」
「映画館をやっててレンタルビデオショップも経営してるよ」
「そうだったわね」
 このことをだ。二人はここで話したのだ。
「だからこの学校でも」
「そう、映画研究会にビデオ鑑賞部に所属してるんだよ」
 こうカトリに話すマルティだった。
「それでね」
「成程ね。ただね」
「ただ?」
「何か引っ掛かるけれど」
 直感的にだ。カトリは察した。それでだ。
 マルティのその顔を見ながらだ。こう言ったのだった。
「妙にね」
「何かな」
「その映画やビデオのジャンルだけれど」
 それが気になるというのだった。
「何が好きなの?それで」
「推理だよ」
 しれっとだ。マルティはカトリに今の問いに答えた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧