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ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士

作者:涙カノ
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第61話 =すずらん亭=



「お、美味そうだな」

「そんなにがっつこうとするとログアウトしてから辛いわよ」

リーファの言葉にケーキを食べようと持ったフォークをそのままテーブルの上に置く。どうやらここもアインクラッドと同様に

仮想の満腹感が発生するらしい。あの城と違うのは最初から美味いものが食べられるところがある…ってことくらいか。彼女の

行きつけの酒場兼宿屋《すずらん亭》はデザート類が豊富で無駄に手の凝ったような豪華デザートでもないためデザートを作る

側の俺としては正直、食べて味を覚えて作りたいものばっかだった。シルフの彼女も何でも自由の頼んでいい、とのことだった

のでキリトとユイは一品ずつという遠慮な姿勢に対し俺はモンブランにパフェ、木の実のケーキを頼み、俺の周りだけデザート

で一杯になった。

「それじゃ、改めて、助けてくれてありがと」

デザートの後から運ばれてきた不思議な緑色の酒を注いだグラス3つをカチンと鳴らし中に入った液体を渇いた喉に流し込む。
リーファやキリトも同じらしく2人とも一気に飲みをしてグラスはすでに空だ。ここでの酒はアルコールが入ってないのかもし

くは仮想世界ではアルコールを再現できないのかわからないけど絶対に酔わないのが利点だ。

「いやまぁ、成り行きだったし……それにしてもえらい好戦的な連中だったな」

「あむ…んむ……キリトの言うとおりだな。ああやって襲われるのってよくあることなのか?」

早速デザートを食べながらの質問に対しリーファは酒をもう一杯グラスに注いでから口を開いた。

「うーん…サラマンダーとシルフが仲悪いのは確かなんだけどね。領地が隣り合ってるから中立域の狩場じゃよく出くわすし、

勢力も長い間拮抗してたし。でもああいう組織的なPKが出るようになったのは最近だよ。きっと……近いうちに世界樹攻略を狙

ってるんじゃないかな……」

「それ、世界樹のことについて教えてほしいんだ」

「そういや、そんな事言ってたわね。でも、なんで?」

「「世界樹の上に行きたいんだ」」

世界樹の上にいると思われるアスナを助け出して…などという目的は話せないけど。俺たち二人が同時に言った言葉にリーファ

は呆れたような顔をするがその表情も一瞬で消える。

「……それは、多分全プレイヤーがそう思ってるよきっと。っていうか、それがこのALOっていうゲームのグランド・クエストな

のよ」

「と言うと?」

リーファの話によるとこのアルヴヘイム・オンラインは俺たちが目指そうとしている世界樹の上にある空中都市アルンに一番最

初に到達し《妖精王オベイロン》に謁見して《アルフ》に転生させてもらうことで飛行するための鎖となっている滞空制限をな

くしてもらうって言うのが一応の目的…という内容らしい。
空中都市アルンに行くルートはわかっているらしいのだがその途中にあるドームを守っているガーディアンがものすごい強さら

しくALOがリリースされて1年という年月でもいまだに到達できていないらしい。それでプレイヤーたちが「バランス改善しろ」
と署名を集め小父さんがCEOのあの会社『レクトプログレス』に要求を出したのだが…

「『当ゲームは適切なバランスの元に運営されており』云々。今のやり方じゃ世界樹攻略できないっていう意見も多いわ」

「…何か見落としてるとか……?」

RPGではよくあることだ。ここから先が進めなくてバグかと思ったら結構序盤で手に入れれるキーアイテムが必要だったとか行

くべき町の順番が違っていたりとか…。

「キークエストを見落としている…。もしくは単一の種族では絶対に攻略できない…?」

キリトがそういうとババロアを食べようとしたリーファはその手を止めてキリトを見た。

「へぇ、いいカンしてるじゃない。クエストの方は今躍起になって検証してるけど」

「……あとのほう、おかしくないか?」

「どういうことだよ、リクヤ」

「だって、アルフ…だっけ?その種族に転生できるのは一番最初に謁見した種族だけなんだろ?だったらこの時点で矛盾してる」

もし、キリトが言った単一の種族では攻略できないとして、合同で攻略を進めるという案があったとしたら1秒でも遅れてしま

った種族は目の前で協力した種族がアルフに転生してるのを悔しく眺めるしかない。ということで現状世界樹攻略は無理、とい

う結論らしい。

「…でも諦めきれないよね。一旦飛ぶことの楽しさを知っちゃうとね……たとえ何年かかっても…」

「それじゃ遅いんだよ!!…何年もかかったらあいつらが……」

望まない人生を過ごすことになってしまう……とは続けれなかった。すると、よほどの大声だったのかリーファとキリトが驚い

てこちらを見てきている。ユイも今までかじっていたクッキーをおいて俺の方にふわりと座ってきた。

「…ゴメン…驚かせちゃってさ…」

頑張って笑みを作ろうとするがどうも力が入らない。あまり人前では怒りとか見せたくないのにな…

「り、リクヤ君…あいつらって…?」

「…それは…」

「キリト君は何か知ってるの?」

俺が言葉を濁すとリーファは聞く対象を変え、聞かれたキリトはしばらく考えて、それから言った。

「……人を、捜してるんだ……」

「ど、どういうこと?」

「…簡単には説明できない…」

リーファは多分、嘘のつけない人間だと思う。それだけにオンラインゲームでは信用してもいい珍しい人物だ。でもそれでも他

人、事情を全て話すわけには行かない。

「いろいろ教えてくれてありがとな、リーファ。それとご馳走様。リーファに出会えてよかったよ」

そういい、俺は席を立とうとした。が、突然誰かに引っ張られるように体勢を崩しかけた。

「ちょ、ちょっとまってよ!世界樹に…行く気なの?」

「あぁ…この眼で確かめないと」

同じく立ったキリトがそういい、俺も頷く。

「無茶だよ…そんな…。ものすごく遠いし、途中で強いモンスターもいっぱい出ると思うし…」

「大丈夫だって。強さなら俺たちもそこそこ強いさ」

少なくともここにいるのはあの城で判明したユニークスキルの使い手3人のうちの2人だ。俺はともかくだがキリトが負けるわけ

はない。そう思っていると俺たちが驚くようなことをリーファが言ってきた。

「――なら、あたしが連れて行ってあげる!」

「…いや、でも、会ったばかりの人にそこまで世話になるわけには……」

「それにリーファって結構有名人だろ?そんな人が俺たちについてきちゃやばくないか!?」

ここ、すずらん亭に「レコンは彼氏?」などと言う雑談をしながら来たのだがその時の周りの視線が少しおかしかったのだ。最

初は明らかにぎょっとしたような眼でこちらを見てくるがその真ん中にいるリーファを見たとたんにその視線をやめて何も言わ

ずに通り去っていく。リーファの顔が周りの人に認知されているから起こる現象…だとおもう。

「いいの!もう決めたの!!」

だが女子の扱いには不慣れな俺と同様のキリトもリーファの勢いに負けてしまい一緒に行くことが決定した。…この状況と同じ

ようなことがあったっけ…とリーファを説得しているときに俺は思い返していた。22層の家でボス戦に行くとき俺が「危険だか

ら残ってろ!」と言ってもユカたちは「そんな危険な場所に1人で行かせるわけには行かないわよ」などと何回ももめた。で、案

の定俺が負けて毎回一緒にボスに挑むこととなったのだが…。

「あの…明日も入れる?」

「あ、う、うん」

「入れるけど…」

「じゃあ、午後3時にここでね。あたし、もう落ちなきゃいけないから、あの、ログアウトには上の宿屋を使ってね。じゃあ、

また明日!!」

そうリーファは立て続けに言うと早々に左手を振ってウィンドウを出した。

「あ、ちょっと待って」

言ってないことがあったのを思い出し、恐らくログアウトをしようとしたリーファを呼び止める。

「…俺たちに同行するって言ってくれてありがとう。正直不安だったんだ」

まず、アルンへの道がわからないし―そこはユイに頼めばどうにかなりそうだった―他にもプレイヤーしか知らないようなこと

もあったはずだ。この世界には翅のせいか結晶なんて便利アイテムが無いため世界樹の元まででもちょっとした旅になる。それ

にもかかわらずリーファは同行してくれると言ったんだ。感謝以外の何ものでもない。

「……ふふっ……おやすみなさい」

「あぁ。おやすみ、リーファ」

そういうとリーファは光に包まれて消えた。ありがたいと言うべきかやはりと言うべきか消えるときにはポリゴンが割れるよう

な感じではないらしい。

「…どうしたんだろうな、彼女」

キリトがさっきまでリーファのいた場所を見ながらそう呟いた。

「さあ…今の私にはメンタルモニター機能がありませんから…」

「でも、結構心強いな」

「はい。マップなら私もわかりますけど、戦力は多い方がいいですからね……でも」

とユイは俺の顔に急接近して人差し指をビシッと立てて口を開いた。

「ただでさえ、にぃはねぇたちがいたんですから浮気とか駄目ですよ!!」

「はぁっ!?浮気って!?」

何故そうなった、と隣のキリトを見るが彼もわからないらしい。まだ俺はあいつらとは恋仲という関係まではいっていないので

浮気もなにも無いと思うんだけど…とまぁ、こういうときに面倒な妹はその親に任せよう。

「浮気って言うならキリトだろ」

「パパ!?…しちゃ駄目ですよ!!」

「しないよ!!しないしない!!」

思わず投げられたキリトは泡を食って首をぶんぶんと横に振るが、その光景がおかしいかのようにユイは笑いながら飛び立って

食べかけのクッキーを再びかじり始める。

「くっそぅ…からかいやがって」

「…ほんと成長したな~」

あのたどたどしい話し方の時からはまったく思えないほどだった。

「さて……練習してくるかな…」

「練習…?何の?」

随意飛行、とだけ答え俺はそのすずらん亭をでた。

――――

得意そうなキリトに手を借りるほうが手っ取り早そうだけどなんか癪だしこういう初めてのことはなぜか1人でやりたいという

気持ちが強かった。

「……ここらへんかな?」

すずらん亭を出て、少し歩くといろいろな建物が立ち並んでいるなかで珍しく結構広い空き地っぽい場所が見えた。先ほどキリ

トがぶつかった例の塔の後ろ側がここから見える。

「…まずは…仮想の骨と筋肉……」

いきなり骨を動かすようなことはせずに実際にあるというイメージを膨らませていく。リーファに苦笑いされながら「まずはそ

こからだね」と言われてしまったのでしっかりと膨らます。だが、ここでそのイメージを消すかのような出来事が起こる。

「…誰だ?そして、領主館前で何をしている?」

そういわれ、首元に長い日本刀のようなものが添えられた。

「…え?」

「動くな。こちらの質問に答えた方が身の為だぞ」

動くなと言われたため不用意に首も動かせない。だが、声からするに女性だろう。

「…名前はリクヤ…種族はヴォルトで……えっと…随意飛行の練習…です…」

初ログイン早々死にたくないし、隠すことでもないので普通に言う。

「ほぅ…」

…ちょっと待て?さっきこの女性『領主館』前って言わなかったか?

「…ここって領主館前なのか!?」

思わず後ろを見るとそこには長い長刀を構えた長身の女性が。ダークグリーンの髪色をしているその背中までありそうな長髪に
白い肌、切れ長の眼、高い鼻筋や薄く小さな唇といい、いわゆる美人さんがそこにいた。そしてその後ろにはリーファの自慢し

ていた綺麗な建物がある。

「…あれがリーファの言ってた…」

「ん?君はリーファを知っているのか?」

どうやらこの女性もリーファを知っているらしい。なので簡単にだがサラマンダーに襲われたリーファを俺とスプリガンで助け

たこととその彼女に連れられてここまで来たことを話した。

「…確かに、シグルトからもサラマンダーに襲われたという報告はきていた。…ともかく、そのことについては礼を言おう」

その女性は軽く頭を下げてお礼を言ってくれた。その体を揺らすときに…男だから仕方が無いのか女性特有のあの膨らみに目が

いってしまう。リーファもそこそこ大きい方だったと思うけどこの人は俺が今まで見たことのある女性の中で一番でかい…ちな

みにそれまでの一番はユカだ。

「…い、いや…そんなたいしたことはしてない…ていうか…なんというか…」

キリトのやつがそのまま飛んでいったせいっていうのもあるけど…。でも、あそこでリーファが攻撃を受けそうになってたら俺

も普通に飛び出していたかもしれない。

「それでも私の友達を助けてくれたことには変わりないさ……そうだ、そのお礼と言ってはなんだろうが」

と、その女性は俺をくるりと半回転させて背中に手を触れてきた。

「先ほど随意飛行の練習と言っていたからその練習のお手伝いでも…」

「…い、いや!お礼なんて!!……っ!!!!????」

などと遠慮しているとなにやら背中にぷにっとした柔らかい感触が……。その女性、名前をサクヤと言うらしいけどそのサクヤ

さんの顔が至近距離にある…

「え…ちょっ!サクヤさん!?」

完璧にこれ…胸だよな?気付いてないのか、この人は…。と後ろを見ると何やらニヤリとしている大人の女性が…。やばいこの

人わざとだ!!

そんなあやしい講習が30分近く続き、多分俺の顔は真っ赤だったと思う。

だが、このあまりに刺激的な行為がよかったのかリーファに習っていたときよりか比較的に翅は震えだし、無事に俺も随意飛行

をものにすることが出来た。…恥ずかしさでいっぱいだったけど…。

「…あ、ありがとうございます……」

「礼にはおよばないさ。リーファたちでさえ苦戦していたサラマンダーを瞬殺したんだ。傭兵として雇いたいくらいだ」

あ、なるほど…さっきのあれはそのための行為ってことか?そうでなければ不信感を抱いて終わりだろう。

「それはありがたいけど……」

そうなると自由にこの世界で動くと言うことは難しくなってくると思う。

「俺には行かなきゃいけないところがあるんです」

「…そのための随意飛行、というわけか?」

「…はい」

コントローラに限界はない、なんて言ってたけどここからコントローラでは確実に足を引っ張ってしまう。それだけは絶対に嫌

だ。キリトの剣としているためにはアイツと対等じゃないと…。

「そうか……じゃあ、またいつか」

そういい、サクヤさんはスイルベーンで一番綺麗だとリーファが絶賛していた領主館へと入っていく。俺はその背中に手を振り

ながら少々考えることがあった。

「……何者なんだ?」

明日、リーファにでも聞いてみよう…。







 
 

 
後書き
リ「テスト週間じゃなかったのか?」

涙「…テストなんて諦めたさ……」

リ「いや、せめて最後まで頑張ってくれっ!?」

涙「さて、アニメ見てて思ったけどさサクヤさんがもう来ヶ谷さんにしか見えないんだww」

リ「…来ヶ谷って?」

涙「リトルバスターズ!の最強の女性だね。人間の域を超えてるよ」

リ「で、どこが似てるんだ?」

涙「黒い長髪にあの大きな胸!!」

リ「外見だけじゃねぇか!!……もう駄目だな、こいつ…」 
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