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八条学園騒動記

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第二百八十二話 別荘その九


「同じになるけれど」
「しかし意味は違う」
「ううん。どっちがいいのかしら」
「天守の方が一般的だがな」
「けれど信長は確か」
「天主だったからな」
「この場合はどうなるのかしら」
 七海も首を傾げさせて言うのだった。
「ちょっとわからなくなってきたら」
「意外と重要なことみたいだな、このことは」
「ええ、日本のお城のことを考えたら」
「そうなるか」
 二人がこんな話をしているとだ。セーラがだ。
 微笑みだ。こう話したのだった。
「私達は天守閣で統一しています」
「そうしてるの」
「天守閣でか」
「そちらが一般的なので」
 だからだというのだ。
「それでなのです」
「ううん、天守閣なのね」
「この別荘ではそうなるのか」
「おそらく天主閣の方が正しいです」
 信長の用いた言葉としてはだ。そちらだというのだ。
「ですがそれでもです」
「天守閣って言う方が一般的なのね」
「そうなるか」
「はい、ですから」
 セーラは穏やかな口調のまま話していく。
「天守閣にしています」
「成程ねえ。それで天守閣なんだ」
「とりあえずこの別荘は」
「そうです。安土城ですが」
 今度はその安土城の話をするセーラだった。
「他にも候補のお城がありました」
「どのお城なの?」
「大阪城や姫路城です」
 そうした城だとだ。セーラは彰子に答えた。
「他には熊本城も考えました」
「何か立派なお城ばかりね」
「名古屋城もいいかとも思ったのですが」
「それで安土城したのはどうしてなの?」
「一番奇麗だと感じたからです」
 安土城の天守閣、それがだというのだ。
「ですからこのお城にしました」
「他のお城はもうしないのね」
「実は実家にです」
「実家にって?」
「あらゆる国のあらゆる宮殿を合わせたシヴァ家の宮殿があるのですが」
 マウリアにあるだ。彼女の実家の宮殿だというのだ。
「藩王宮なのですが」
「まさかそこに?」
「日本のそうした天守閣も全部」
「集めて築いてるとか」
「そうしているとか」
「はい、そうしています」
 そうした宮殿だというのだ。セーラの実家であるシヴァ家の藩王宮はだ。
 この話を聞いてだ。七海がこんなことを言った。
「それだとあれね。阿房宮よね」
「秦の始皇帝のですね」
「あの宮殿も全部の国の宮殿を合わせた風にしてたっていうし」
 国家統合の象徴の意味もあったのだ。確かに始皇帝の贅沢と建築欲により築かれたものであるが。尚この宮殿は項羽に焼かれ歴史から早々と消え去っている。
「その感じじゃないの?」
「そうですね。実際にです」
「始皇帝の影響あるの」
「考えは似ているかも知れません」
 こう答えてだ。さらに話すセーラだった。
「ただ。それでもあらゆるいいものを取り入れるという考えで」
「文化統合とかではないのね」
「はい、また違います」
 そうだとだ。セーラは七海に話した。 
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