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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百四十三話 終わらない明日

                第百四十三話 終わらない明日
ザルクはほぼ壊滅した。アスランはカガリと共に何とかジェネシスの中に入った。
見ればその中のザルクもほぼ掃討されていた。生き残った者は拘束されプラントの者達の手に戻っていた。
「アスランさん」
ザフトの兵士の一人が彼に気付いた。
「来られたんですか」
「はい、父は」
「閣下はもう」
「死んだのですか!?」
「いえ」
それは否定された。
「ですが」
「危ないのですね」
「はい」
兵士はアスランに対して頷く。
「その通りです。最早」
「そうなのですか」
「今医務室におられます」
兵士はそうアスランに説明した。
「御会いになられますか?」
「行くんだ、アスラン」
カガリは後ろからアスランに声をかけてきた。
「カガリ・・・・・・」
「御前のたった一人の親父さんなんだろう!?だったら」
「そうか」
「そうだ。だから」
「わかった、カガリ」
アスランはカガリのその言葉に頷いた。
「じゃあ」
「ああ」
二人は医務室へ向かった。既にザフトの将兵達は撤退に移っていた。残ろうとしているのはクルーゼただ一人になろうとしていた。
医務室に向かう。そこでも撤退準備にかかっていたがその中でパトリック=ザラは移動式のベッドに横たえられていた。顔には既に死相が浮かんでいる。
「父上!」
「アスラン、どうしてここに」
パトリックは彼の姿を認めて声をあげる。
「どうしてここにいるのだ」
彼はアスランは行方不明になっていたと思った。だからここに彼が姿を現わしたということが意外だったのだ。
「ロンド=ベルにいました。今まで」
「そうだったのか」
彼はそれを聞いて納得したように頷いた。
「生きていたのだな」
「はい」
「ならばよい。これからのプラントは」
「これからのプラントは」
「ナチュラルとも共存していかなければならない。わかるな」
「はい、それは」
アスランは父の言葉に頷いた。
「これからのプラントは」
「それは御前達に任せる」
彼は言う。
「既に後はアイリーン=カナーバに任せてある。彼女により講和は」
「なるのですね」
「そうだ。そして最後に言いたい」
アスランの顔を見て微笑んできた。その死相が浮かんだ顔で。
「御前を見られて。幸せだった」
そう言って彼は息を引き取った。パトリック=ザラの最期であった。
「父上・・・・・・」
アスランは泣いてはいなかった。ただ父を見下ろしていた。
「アスラン、御前の父様は立派だった」
カガリがアスランに対して声をかけてきた。
「だから御前も」
「わかっている。カガリ」
アスランはカガリの方を振り向いて言った。
「決着をつけて来る」
「待ってるぞ」
カガリはその彼に微笑んだ。その笑顔は彼を信じるものだった。
フリーダムとデスティニーがジェネシスに向かう。それをガイアガンダムが追っていた。
「どうしたんだ、ステラ」
ジェネシスから出て来たカガリが彼女に声をかける。
「シン、助けに行く」
ステラはカガリにそう答えた。
「だから」
「大丈夫だ」
カガリはステラの側に来て言う。
「あいつは絶対に戻って来る。安心しろ」
「戻って来る?」
「御前、あいつのことが好きなんだろう?」
カガリは問う。
「信じているんだろう?」
「うん」
カガリの言葉に頷く。
「じゃあいい。後で出迎えればな」
「わかった。じゃあ」
ステラはそれに頷いた。カガリの言葉を受けてロンド=ベルに戻った。
キラ達はジェネシスの動力炉に辿り着いた。アスラン、ディアッカ、イザーク、ニコルも今そこに到着した。
既にそこにはクルーゼがいた。彼の他には誰もいない。
「ふふふ、遂に来たな」
「ラウ=ル=クルーゼ」
六人は彼から目を離さない。
「やはり貴方は」
「そうだ。私はここから全てを破壊する」
彼は言う。
「このプロヴィデンスの力でな」
「そんなことはさせるか!」
イザークが彼に対して叫ぶ。
「たった一人のエゴで世界を滅ぼさせてたまるか!」
「そうだ!」
ディアッカも叫ぶ。
「俺達の世界は俺達でやっていく!悪いがあんたの思い通りにはならないぜ」
「残念だよ」
クルーゼはその言葉を聞いて彼等に言う。
「君達は皆私にとってはいい部下だったのだが」
「それは貴方にとって都合のいい駒だったからですね」
ニコルが珍しくきつい言葉を出してきた。
「だから貴方は」
「俺達は御前を倒す」
アスランが言った。
「プラント、そして皆の為に!」
「そうだ」
レイもやって来た。
「ラウ、俺も皆と一緒に行く。だから」
「ふふふ、そうして私と別れるのか」
「俺はラウ=ル=クルーゼだった。だがもう俺は貴方じゃない」
レイは言う。
「俺はレイ=ザ=バレルとして生きる。これからは貴方じゃない」
「そうか。ならば滅ぶのだ」
クルーゼは彼に対しても言う。
「私もな」
「気をつけろ」
マサトから通信が入ってきた。
「クルーゼの力はまだ完全には発揮されていない。彼は真剣ではなかったんだ」
「何っ!?」
「あれで!?」
「わかっていたのか、木原マサキ」
クルーゼは彼に対して応えてきた。
「私のことが」
「そう、木原マサキが教えてくれた」
マサトはそう答えた。
「貴方は彼も関わっていた研究により生み出された人間の一人、そしてその力も」
「そう、私もまた君と同じなのだよ」
クルーゼはそうマサトに語る。
「コーディネイターなのだ、君は」
「だが僕は貴方とは違う」
マサトは言い返す。
「そして木原マサキも。貴方とは違う」
「ふむ、否定するか」
「だから僕は貴方を認めない。この世をすねて見ようとしない貴方を」
「それが悪いのかね」
しかしクルーゼはそう返す。
「私は今まで幾度の戦いの度に期待していたのだよ。人類の破滅を」
彼は言う。
「私を生み出したこの世界の破滅を。だがそれは常に防がれた」
「当たり前だ!」
シンは彼に叫ぶ。
「そう簡単に滅んでたまるか!」
「そうなのだ!だから私が滅ぼしてやるのだよ!」
クルーゼはシンの言葉に応えて言う。
「この私が!今度こそな!」
「そんなことはさせない!」
今度はキラが言った。
「貴方は僕が止める!」
「ならばやって見せるがいい」
いきなり無人のジンやゲイツを出してきた。
「それで私を止められるのならばな」
「行くぞキラ」
シンがキラに声をかける。
「ここで負けたら何もかも終わりだぞ」
「わかってるよ、シン」
キラはその言葉に頷く。
「時間は少ないけれど」
間も無くジェネシスの融合炉が爆発する。時間はそれまでだった。
これでジェネシス、そしてプラントの守りはなくなる。クルーゼの望みはここではまずは達成されるのだ。
そのうえで彼が生き残ればどうなるか。おそらくまたザルクを再結成して暗躍をはじめるだろう。そしてプラント、人類を脅かす。それだけはさせるわけにはいかなかった。
七人の少年はクルーゼに向かう。しかし後ろから何者かが姿を現わした。
「何っ!?」
「まさか」
「いたぜ、ガンダム共!」
あの三機のガンダムだった。彼等が姿を現わしたのだ。
「抹殺してやるよ!ここで!」
「死ね」
「こいつ等、こんなところまで来たのかよ!」
ディアッカが三人を見て叫ぶ。
「何てしつこいんだ!」
「しかも精神が崩壊している」
アスランはそれを見て言う。
「いや、これは禁断症状なのか?」
「そんなことはどうでもいい」
イザークが述べる。
「こいつ等を止めなければいけないだけだ」
「そうだな。じゃあ俺が行くぜ」
「俺もだ」
「俺もな!」
ディアッカの声にアスランとイザークが続く。彼等が足止めに向かった。
「レイ、僕達は」
「わかっている」
ニコルとレイは無人のジンやゲイツに向かう。こうしてキラとシンとクルーゼに向かわせる。
「皆、身体を張って」
「だからだ!」
シンはキラに鋭い声で言う。
「俺達は何があってもあいつを倒す!いいな!」
「わかったよシン、今ここで」
「ケリをつけてやる!」
二機のガンダムは並んで突き進む。そこにドラグーンが襲う。だがキラは射撃で、シンはビームサーベルでそれを切り払っていく。切り払いながらクルーゼに突き進む。
「そうだ、そうでなくては面白くはないのだよ!」
狂気を露わにした声で叫ぶ。
「さあ来るのだ!そして滅亡の曲を奏でるのだ!」
「それは御前一人でやれ!」
全てのドラグーンとクルーゼからの攻撃をかわしきれるわけではない。シンもキラもダメージを受けていく。
「俺達は生きる!何があってもな!」
「そうだ!貴方には何もないのかも知れない!」
キラも叫ぶ。
「けれど僕達は違う!僕達には帰る場所もある!」
「皆もいる!」
「だから・・・・・・貴方を倒して世界を!」
「ラウ=ル=クルーゼ!」
「覚悟!!」
シンとキラの動きが完全にシンクロしていた。ドラグーンの嵐の如き攻撃で既に深い傷を受けている。しかしそれでも動きを完全に合わせてきていた。
「キラ!」
シンがまず彼にこえをかける。
「俺が突っ込む!いいな!」
「わかった!シン!」
キラもそれに応える。まずはシンが突っ込んだ。キラは動きを止めて照準を合わせる。
全ての照準をプロヴィデンスにロックオンさせる。コクピットにそれを知らせる音が鳴る。
「よし、これで!」
全ての砲撃をクルーゼに浴びせた。それがまずプロヴィデンスを貫いた。
「むうっ!」
「今度は俺の番だ!」
シンのデスティニーはその掌に思いきり光を集中させる。フリーダムの攻撃を受けて怯んでいるプロヴィデンスの腹にそれを叩き付ける。
プロヴィデンスが宙に浮かぶ。だがまだ健在だった。キラとシンもまだ攻撃を止めてはいなかった。
「キラ、止めだ!」
「うん!」
二人はまたしても動きを合わせる。その手に持っているサーベルを抜き螺旋を描きながら二人で同時にクルーゼに下から突き進む。二人の天使が二条の光と共に向かう。
「うおおおおおおおおっ!」
「これで決めるんだ!」
二人の光がクルーゼを中心をして交差した。ビームサーベルを同時に斬りつけて抜ける。プロヴィデンスはそれを受けて完全に動きを止めてしまった。
「な・・・・・・プロヴィデンスが敗れるとは」
「貴方は何もわかっていない」
キラが彼に対して言う。
「皆それぞれ苦しみを抱えているんだ。けれど生きている」
「そうだ!」
シンもそれに続く。
「レイを見ろ!御前と同じだが前を見て生きている!」
「シン・・・・・・」
レイはそれを聞いて呟く。
「皆そうなんだ!御前は一人だけすねているだけだ!」
「だから貴方は敗れたんだ」
キラがまた彼に言う。
「それは決して正しい力には成り得ないから」
「ふふふ、それはどうかな」
しかしクルーゼはあちこちで破損し炎と雷を出していくプロヴィデンスの中で二人の言葉を笑っていた。
「人は愚かなものだ。だから幾度も滅びかけた」
「確かにそうかも知れない」
キラもそれを認める。
「けれど同じ位素晴らしいものだから今まで生きてこられた」
「御前は人の悪い面だけしか見ていないだけだ!」
シンもまた。彼はキラと同じ想いを抱いていた。
「俺には守るものがある!マユが!皆が!」
「僕にも皆がいる!父さんと母さんも!」
彼は今自分の家族が誰なのか言い切った。それは今まで育てててくれた家族だ。もうその出生はどうでもいいものになっていた。
「御前にもいた筈だ!だが御前はそれを見ようとしなかった!」
「そんな貴方に!負けはしない!」
「ふふふ、若いな」
クルーゼはそれを聞いてまた笑った。
「ではそのまま突き進むがいい。そして」
プロヴィデンスは炎と化した。ラウ=ル=クルーゼも今ここに散ったのであった。
「ラウ・・・・・・貴方は最後まで」
レイはその爆発を見て呟いた。
「わからなかったんだね」
「けれど御前はわかった」
シンが彼にそう述べる。
「だから今は」
「わかっている。しかしそろそろ」
「時間だよ、皆」
キラがアスラン達に声をかける。
「もうすぐジェネシスが」
「わかってるけれどよ!」
ディアッカがそれに応える。
「こいつ等しといんだよ!」
「くっ、御前等も巻き込まれるんだぞ!」
イザークがオルガ達に対して言う。
「それでどうしてまだ!」
「駄目です、やっぱり薬物中毒で」
ニコルがクロトの攻撃をかわしてイザークに答える。
「彼等はもう」
「逃げるしかないな」
アスランはシャニの鎌をかわしていた。
「何とか」
「御前等先に行け」
シンが仲間達に言う。
「俺が足止めするからな」
「僕も」
キラも名乗り出た。
「だから皆」
「キラ、シン」
アスランがそれを聞いて二人を見る。
「いいのか、それで」
「ヒーローってのはあれだろ?」
シンは笑ってアスランに述べる。
「こういう最後の見せ場があるんだよ」
「そうだね」
キラもくすりと笑ってシンに続く。
「一人だったり二人だったりするけれど」
「今は二人だ」
シンも笑っていた。
「それで二人でな」
「笑顔で帰って来るんだよね」
「そうさ、だから」
シンはここまで言って三機のガンダムの前に出た。キラもまた。
「祝勝パーティーの用意をユウナさんに頼んでおいてくれよ」
「後で僕達も行くから」
「わかった」
アスランが二人の言葉に頷く。
「待ってるからな」
「ああ」
「アスラン、また後でね」
アスラン達はジェネシスを後にする。もうザフトの脱出艦艇も遠くにいた。彼等が安全圏まで出た時。ジェネシスは大爆発を起こした。
キラとシンは宇宙空間の中に漂っていた。ヤキン=ドゥーエの宙域だ。そこで大破したフリーダムとデスティニーにそれぞれ乗っていた。
「なあキラ」
シンが彼に声をかけてきた。
「何?」
「ちょっと格好よく帰って来るってわけにはいかないみたいだな」
「そうだね」
キラはそれに応える。二人は今コクピットの中でぼんやりと銀河を眺めて話をしていた。
「まあ今は話しようぜ」
「話?」
「ああ。どっちにしろな」
シンは言う。
「何か俺達これからも色々とあるだろうな」
「そうだろうね」
キラもそれに頷く。
「ずっと生きている限り嫌なこととか辛いこともあって」
「それでも生きていかなくちゃいけない」
「ああ」
シンは頷く。
「前を見てな」
「だから僕は行くよ」
キラは今言った。
「何があってもね」
「俺もだ」
シンも応える。
「絶対にな」
「そうだね。じゃあ帰る?」
「けれどもうガンダムは」
「無理してでも帰るか?」
シンはそう声をかける。
「何があっても」
「そうだね。それじゃあ」
動こうとする。しかしそこに。
「おい、いたぜ」
「キラ!」
ムウとカガリの声がした。
「な、俺の言った通りだったろ。ここにいたな」
「ええ」
マリューが彼の言葉に頷く。
「貴方も生きていたし」
「俺は不可能を可能にする男だからな」
ムウは笑ってそれに応える。
「つっても運がいいだけだけれどな」
「ふふふ、そうかもね」
マリューもそれに笑う。
「けれどあの時は本当に」
「やばかったけれどな、マジで」
「おかげでストライクはボロボロだぜ」
アルフレッドが笑っていた。
「修理が大変だな」
「すいません、まあ整備班には迷惑かけますね」
「マードックやセランにお礼言っとけよ」
「ええ」
ムウは彼の言葉に頷く。
「しかしフリーダムとデスティニーもまた」
「キラ、大丈夫か!?」
カガリのストライクルージュはもうフリーダムの側にいた。
「探したんだぞ」
「カガリ」
「シン、いた」
ステラはガイアでシンの側に来ていた。
「大丈夫みたい」
「何とかな」
シンはそれに応えた。
「生きてはいるさ」
「よかった」
「ああ、何とかな」
「そう」
「キラ、御前も」
カガリもキラに言う。
「よく生きていた、本当に」
「けれどカガリ」
キラはカガリに対して言う。
「君はわざわざ」
「兄妹なんだぞ」
それがカガリの言葉だった。
「御前は私のたった一人の」
「そう、有り難う」
「キラ」
アスランがミネルバから彼に声をかける。
「言ってたな、パーティーは」
「うん、じゃあシン」
「ああ」
二人は肯き合う。
「僕達の帰る場所に」
「俺達の仲間のところに」
彼等は戻った。ところが帰って来たのは彼だけでなかった。
「ナタルさんも!?」
キラはナタルを救出したと聞いて声をあげた。彼はもうアークエンジェルに戻っていたのだ。
「ああ、生きてるってな」
ムウが今それをキラに述べる。
「ラーディッシュにいるってさ。キースが助けたんだ」
「そうだったんですか」
「ああ、かなりの怪我は負っているが命に別状はないってさ。よかったな」
「はい」
キラは複雑な顔でそれに応える。
「それでだ。会うかい?」
「ナタルさんに」
「そうだ。よかったらな」
「じゃあ」
キラはムウと共にラーディッシュに向かった。そこにはフレイもいた。
「フレイ」
「やっぱり来たわね」
フレイは彼に対して声をかけてきた。ティターンズの服を着ている。
「うん、ナタルさんがいるって聞いて」
「そうなの」
「ああ、それでナタルさんは」
「こっちよ」
彼女は医務室に彼を案内する。
「今手当てを受けているわ」
「じゃあ」
「一緒に行きましょう」
キラはフレイに連れられて医務室に向かう。そこにシンが来た。
「貴方、誰?」
「俺か?シン=アスカだ」
シンは名乗った。
「君は何ていうんだ?」
「フレイ=アルスターよ。そう、貴方が」
「そうか、君がか」
シンとフレイはお互いを見合う。空気が強張る。
「君の親父さんを殺したのは俺だ」
「私を助けたのは貴方ね」
「えっ」
クルーゼのドラグーンからだ。フレイはそれを覚えていたのだ。
「有り難う」
「・・・・・・いいのか」
シンはフレイに対して問うた。
「それで」
「ええ、いいわ」
フレイはそれに答える。
「私も貴方も戦争してるから。だから」
「・・・・・・・・・」
「その時はね、キラにも酷いこと言ったし利用しようとしたわ。コーディネイターなんて皆いなくなればいいって本当に思ったわ。それは否定しないわ」
フレイは俯いて答える。キラとシンはそれを黙って聞いていた。
「けれどわかってきたの。コーディネイターとかそういうのって小さなことなんだって。ロンド=ベルにいて。そしてティターンズで貴方と戦ってその貴方に助けられて」
「俺もキラとは何度も戦った」
シンは言う。
「本当に殺すつもりだった。ナチュラルは嫌いだった」
「今は?」
「キラは仲間だ。そして皆も」
それがキラの今の考えだった。
「だから俺は今はキラと」
「そう。じゃあ」
フレイは顔をあげる。
「これから宜しく。フレイって呼んで」
「ああ。じゃあ俺はシンって呼んでくれ」
「ええ、シン」
「フレイ」
二人は笑顔になった頷き合う。そしてキラを入れて三人で医務室に入った。
そこにはフレイと同じくティターンズの軍服のナタルがいた。彼女は医務室のベッドから上体を起こしていた。
「アルスター少尉」
「艦長・・・・・・」
「もう私は艦長ではない」
そう言って微笑んできた。
「ドミニオンは大破したしな」
「そうですか」
「連邦軍に今月まで誘導されている。そこで修理を受けるそうだ」
「ですか」
「私もまた。どうなるかわからない」
「同じですね」
フレイはナタルのその言葉に頷く。
「私も」
「さて、どうなるかな」
ナタルは少し微笑んで述べた。
「捕虜になるか。それとも軍事法廷で」
「おいおい、何を言ってるんだ」
横にいたヘンケンが彼女に言ってきた。
「君はこれからラーディッシュの副長になるというのに」
「えっ!?」
ナタルはその言葉に思わず目を向けた。
「あの、今何と」
「君はアークエンジェルの副長からラーディッシュの副長に転属になったのだよ、今日付けでな」
「そうだったのですか」
「暫く怪我で鮮烈を離れていたがこれからまた頼むぞ」
「え、ええ」
そういうことになっていた。
「ではバジルール副長、これからは」
「はい、ラーディッシュでお願いします」
「そしてアルスター少尉」
「はい」
今度はフレイに声をかける。フレイもそれに応える。
「君もロンド=ベルのパイロットになる」
「ロンド=ベルにですか」
「そうだ、アカツキのパイロットとして。いいな」
「わかりました。では」
フレイは明るい顔で応える。それからキラとシンに対して顔を向けてきた。
「また仲間ね」
「いや、それは違うな」
シンは笑ってフレイに述べてきた。
「違うって?」
「ライバルだろ?」
それがシンの返事だった。
「フレイと俺は。違うか?」
「あら、じゃあ負けないわよ」
フレイはその言葉に笑みを作って返した。
「ザフトのトップガンにもね」
「何なら追い抜いてみろ」
シンも笑って述べ返す。
「そう簡単にはやらせないぜ」
「やれやれ」
キラはそんな二人を見てぼやきながらも顔は笑っていた。
「何か皆元に戻りましたね、これで」
「そうだな、ヤマト少尉」
ナタルがそれに笑顔で頷く。
「君も元気そうだな」
「はい。色々ありましたけれど」
「そうか。それは私もだな」
ナタルは言う。
「だがお互い生きていてこうして再会できたのは」
「嬉しいですよ、本当に」
「では再会を祝して」
「お酒ですか?」
「い、いやそれは」
ナタルは急に堅苦しい様子になった。
「君は未成年だしな。私も飲めないし」
「でしたね」
「うむ。だが祝勝会をしてくれるらしいしな」
「それに出て」
「私達にとっては歓迎会だ」
ナタルは述べる。
「有り難いことにな」
「場所は何処ですか?」
「マクロスだ」
ヘンケンが答える。
「もう皆用意できているらしいぞ」
「おっと、そうだった」
シンがその言葉に気付く。
「それがあったんだ。行くぞキラ」
「そうだね。じゃあ」
「飲むぞ、今日は」
「待て」
ナタルがシンの今の言葉に目を向ける。
「君は今飲むと言ったな」
「そうだけど」
あっけらかんとした様子で答える。
「それが何か?」
「君は未成年だろう。それで酒は」
「そういやそうか」
「そうだったね」
キラもふと言う。
「皆飲んでいるけれど」
「全く。困ったものだ」
ナタルはそんな彼等を見てぼやく。
「まあいい。では行くか」
「怪我はいいんですか?」
キラがあらためて問う。
「そちらは」
「ああ、大事はないからな」
「それじゃあ」
彼等はマスロスに向かい宴に入った。彼等が来たその瞬間に派手にシャンパンとクラッカーが鳴ったのであった。
「よお、待ってたぜ」
ディアッカが最初に彼等の前に出て来た。
「遅かったな」
「色々あってね」
キラが答える。
「ナタルさんとフレイも来たし」
「そうか。増えたんだな」
イザークはそれを聞いて呟く。
「それは何よりだ」
「あれっ、御前もいるのか」
シンはここでイザークの姿に気付いた。
「ロンド=ベルに入るのか?」
「ザフトからの出向という形になった」
「そうか」
「シンさん達もですよ」
シホがここでやって来た。彼女もいる。
「アイリーン=カナーパ議長から正式にそう達がありました」
「正式に?」
「はい。ラクス=クライン嬢と共に」
「そういうことだ」
イザークはそう語る。
「これからは俺も御前達と一緒だ。宜しくな」
「ああ、こちらこそな」
「宜しくお願いします」
イザークとシホも参加した。だがそこでアスカが言う。
「銀河童もこっちに来たのね」
「御前!まだ河童か!」
「うっさいわね!じゃあその髪型止めなさいよ!」
二人は早速喧嘩をはじめた。
「御前だけは!この俺の手で!」
「やろうっての!?容赦はしないわよ!」
「それはこっちの台詞だ!今度こそ!」
二人は喧嘩をはじめた。シホが必死に二人の間に入るがそれでも二人の喧嘩は続く。
「この二人はやっぱりこうなるか」
ディアッカはそれを見て苦笑いを浮かべていた。
「困ったものだぜ」
「けれどこれで全員揃いましたね」
フィリスが笑顔で述べる。
「イザークさんとシホさんの加入で」
「そうですね」
エルフィもそれに頷く。
「やっとですよ」
「何かと大変だったけれどね」
ジャックは笑みを浮かべていた。
「これでプラントでの戦いは終わったし」
「レイ、あれでよかったんだな」
「ああ」
レイはハイネの言葉に頷いていた。
「俺は俺だ。だから」
「そうか」
「なら御前も飲め」
ミゲルはグラスを差し出してきた。そこにがビールがなみなみと注がれている。
「楽しくやろう」
「ああ」
レイも楽しくやりだした。そこへ謎の三人がやって来た。
「あれ」
ニコルが最初に彼等に気付いた。
「あの人達は!?」
「何か面白そうじゃねえか」
「激烈にやってる!?」
「・・・・・・美味い」
いきなり酒を飲み食べ物を漁りだしている。皆見たこともない連中だった。
「誰だ、あれ」
「ああ、彼等ですか」
アズラエルがカガリに答える。
「彼等があの三機のガンダムのパイロットですよ」
「あいつ等がですか」
「はい、彼等もロンド=ベルに参加することになりました」
「初耳ですけれど」
マリューはそれを聞いて述べる。
「大体彼等はジェネシスの爆発で死んだ筈では」
「それが生きていまして」
「生きていたんですか、あれで」
「はい。とりあえずまだ正式にはパイロット登録はできませんが」
「また何故」
「薬物の問題で」
今度はナタルに答える。
「できないのですよ。あれをどうにかするのが」
「できるのですか、それが」
「はい。赤木博士やサコン君のおかげで」
彼等がいるということが何よりも心強かった。その為あの三人もロンド=ベルに入ることができたのだ。
「できることがわかりました。後は彼等のガンダムを修復しまして」
「鮮烈に正式に参加ですか」
「次の戦いには間に合いますよ」
アズラエルは述べる。
「ですから御安心下さい」
「次にはですか」
「また早いですね」
アズラエルの言葉にマリューもナタルも当惑した顔を見せる。
「能力はそのままですよ」
「あの戦闘力をですか」
「ええ。戦力的にはかなり大きいです」
「戦力はですか」
「ちゃんとコントロール役もいますし」
「どうも」
劾もやって来た。
「宜しくお願いします」
「はあ」
「それにしてもどうにも」
ナタルは困った顔を見せたままであった。その顔のまま言う。
「彼等まで入るとはこれまた」
「何だ、これ」
彼等は目の前でラクスの作ったサンドイッチを手に取っていた。
「美味いな、これ」
「そうだね」
オルガとクロトが早速頬張っていた。
「タラコに沢庵か?後は」
「ザワークラフト!?面白い組み合わせだね」
「・・・・・・いける」
「こっちのジュースもいいな」
今度はクスハの特製ジュースに口をつける。
「これはまた」
「身体によさそうだね」
「健康第一」
「あいつ等まさか」
ドモンは平気な顔で食べ続ける彼等を見て述べる。
「味覚がないのか?」
「そうみたいね」
レインがそれに頷く。
「どうやら」
「いや、それでもよ」
ヂボデーがここで言う。
「あんなの食ったら身体がもたねえだろ」
「丈夫だってこと?」
サイシーはそれに問う。
「平気ってことは」
「まさか、あれは私達でも無理だった筈」
ジョルジュは驚きを隠せない。
「それがどうして」
「まさかあいつ等」
アルゴはその表情のない顔に微かに驚きを出して述べる。
「俺達より身体が丈夫だというのか」
「何て奴等だ」
宙ですら唖然としている。
「あんなものを食って平気なんて」
「即死は免れないってのにな」
凱はさりげなく酷いことを言っている。
「化け物だな、また」
「何はともあれ彼等の加入もいいことかもね」
ユウナはそれを見て述べる。いささか他人事だ。
「戦力的にはね」
「少なくとも滅多に死にそうにはないな」
カガリの言葉はきつい。
「あれだとな」
「まあね。それはね」
ユウナもそれに頷く。
「それもかなりね」
「味方巻き込まないといいけれどな」
「やっぱり気になる?」
「当たり前だ」
カガリは答える。
「あんな滅茶苦茶な奴等だ。大丈夫なのか?」
「多分ね。いや、ちょっとは覚悟しておいた方がいいかも」
「やっぱりか」
「まあまあ。薬が完全に抜けたら全然違うから」
「元の人間性に戻るのか?」
「多分ね」
「そうしたらあいつ等もまともになるのか」
劇物を貪り食う三人を見ながら述べる。
「それは確かだよ」
「だといいがな」
そんな話をしながら三人を見る。何はともあれプラントを巡る戦いは終わり今一つの話が終わったのであった。それだけは確かであった。

第百四十三話完

2007・2・17  
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