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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百三十九話 レクイエム

             第百三十九話 レクイエム
  気付いた時には遅かった。それは既に配備されていた。
「レクイエム!?」
ロンド=ベルの面々はその名を聞いて思わず声をあげた。
「何です、それ」
「御大層な名前ですけれど」
「ティターンズの新兵器だ」
ブライトがそう説明してきた。
「彼等がコロニーレーザーを持っていることは知っているな」
「ええ、セダンの門のあれですよね」
「前の戦いで壊れたのを今修理中なんですよね」
「そうだ。それを応用したものだ」
ブライトはカイとハヤトにこう述べた。
「応用ってどうやったんですか?」
スレッガーがそれに問う。
「射程を大きくしたってだけじゃないですよね」
「具体的に言えばレーザーの軌跡を曲げられるようにしたものだ」
「軌跡を」
「どうやって」
「ティターンズにはビーム偏向装甲の技術がある」
「元は我がブルーコスモスの技術でした」
アズラエルが出て来た。
「しかしジブリール君があっちに行ったので」
「技術が流れたと」
「そういうことです。残念なことに」
「困ったことですな」
大文字が言ってきた。
「それは実に」
「ジブリール君ならやりそうなことです」
アズラエルはさらに言う。
「彼はアイディアマンですからね。それで何処でも攻撃するつもりなんでしょう」
「何処でもか」
リュウはそれを聞いて顔を暗くさせた。
「これは洒落にならないな」
オリファーもまた。それを言われて明るい顔になる方が無理であった。
「じゃあ放っておくと大変なことになるな」
「間違いなく」
アズラエルはトマーシュに答えた。
「すぐに何とかしないといけないでしょう」
「それじゃあすぐにも行かないとな」
オデロが言う。
「そのレクイエムを壊しにな」
「壊すと言ってもね」
ジュンコがクールに述べてきた。
「細かいこともわかっていないし。まだ動くのは」
「いえ、わかっていますよ」
しかしここでシュウが出て来た。
「そういや手前もいたか」
「はい。奇遇ですね」
「奇遇・・・・・・かな」
「シュウさんっていっつもタイミングよく出て来ますよね」
リューネとプレセアがヒソヒソと話をする。
「今回だってタイミングよくいたし」
「常に何かあるのよ、あいつは」
「そうですよね」
「それでですね」
シュウは彼女達に構わず話を続けてきた。
「レクイエムは実はコロニーを使ってその軌跡を曲げているのです」
「コロニーで」
「はい、廃棄コロニーにビーム偏向装甲をつけているのです」
彼は述べた。
「それで軌跡を曲げあらゆる場所を狙っているのです」
「そうなのか」
「それで」
「そうです。その威力はかなりのもので」
彼は言う。
「一撃でコロニーを消してしまうでしょう」
「おい、ちょっと待てよ」
それを聞いたディアッカが声をあげてきた。
「だったらプラントなんか滅茶苦茶やばいじゃねえか」
「はい」
シュウはそのデイアッカにも答えてきた。
「その通りです」
「プラントだけじゃない」
カミーユも言う。
「全てのコロニーが危険だ。そんなものを置いていたら」
「何とかしないといけないわね」
フォウがそれに応える。彼等の方針はもう決まっていた。レクイエムの破壊であった。
「問題は、だ」
大河が言う。
「そのレクイエムの発射元が何処にあるかだ」
「それももうわかっています」
シュウはその言葉にも答えてきた。
「それは何処かね?シラカワ博士」
「ここです」
そう言って地球圏のあるポイントをモニターに出してきた。地球圏の地図にそこが赤い丸で示されていた。
「ここにあります」
「そこか」
「そうです。今向かえば」
「倒せるな」
「ですが敵も私達の動きは予測しているでしょう」
シュウはこう付け加えてきた。
「ですから」
「ああ、わかってるぜ」
マサキがそれに応えて言う。
「ならそれはそれでやってやるぜ」
「戦いは承知している」
ヤンロンが続く。
「ならば剣を交えるだけのことだ」
ジノも述べる。彼等の言葉がそのままロンド=ベルの今の考えであった。
ロンド=ベルはレクイエムの発射地点に向かう。既に戦闘態勢に入っている。
「しかしドモン君のことからすぐにですね」
ユウナがクサナギの艦橋でアズラエルにそう話していた。
「一難去ってまた一難です」
「そうですね。全く以って」
アズラエルもそれに頷く。
「困ったことです」
「困った顔には見えませんが」
「まあ慣れです」
「慣れですか」
「色々ありましたからねえ。今まで」
「ですか」
「流石に慣れてきましたよ。それに僕は生来図太い性質でして」
これは誰もが認めるところである。
「適応能力も高いんですよ」
「そうなんですか」
「ええ」
ユウナの言葉に応える。
「ですから今もね」
「しかしですねえ」
平気な顔のアズラエルに対してユウナはどうにもぼやきが止まらない様子であった。
「あれだけの大規模な戦いの後でまたですから」
「整備が大変ですね」
「それだけでもお金がかかります」
やけに現実的な会話になってきた。
「連邦政府に大きな借りができましたよ」
「困ったことですか」
「やっとオーブが解放されたというのに」
ユウナの苦労は続く。
「借金と借りはまだまだ続きますね」
「まあそれも生き残る為です」
アズラエルはそうユウナに述べる。
「生き残らないとそうも言っていられませんよね」
「ええ、まあ」
その言葉に頷く。
「確かにそうです」
「ならばいいではありませんか。借金も財産のうちです」
「はあ」
「ここは気楽にということで」
「まあ何処かで取り返します」
少し前向きに考えてみることにした。
「頑張ってね」
「そうありましょう。さて」
ここでアズラエルが言ってきた。
「そろそろですよ」
「レーダーに反応です」
トダカが報告してきた。
「敵モビルスーツ及び戦艦が出現」
「帰るように言って」
「ふざけるなと言われますが」
「ああ、やっぱり」
暗鬱さがまだ残っているので冗談を言ったがトダカにあっさりとかわされた。
「じゃあ総員出撃」
「了解」
「迎撃して退けていくよ」
暗い気持ちはそのままだが現実的な指揮はする。
「いいね」
「わかりました」
こうしてロンド=ベルは出撃した。そしてすぐに陣を敷く。
既にティターンズも守りを固めている。かなりの数が展開していた。
「!?あいつ等」
アスランはその中で三機のガンダムに気付いた。
「あいつ等もいたか」
「そうだね」
それにキラが頷く。
「彼等の他にも大勢いるけれど」
「アスラン」
メイリンが声をかけてきた。
「どうした?」
「敵の主力はブルーコスモス系よ」
「そうか」
「それにアークエンジェル級も一隻いるわ」
「アークエンジェルが!?」
「そう、あれ」
コンピューターで指し示す。見ればティターンズの後方に黒いアークエンジェルがいた。
「わかった?」
「あれか」
「そう。かなりの火力があるから気をつけてね」
「まさかアークエンジェルと戦うなんて」
キラは複雑な顔を見せていた。
「思わなかったよ」
「そうか?」
だがそれにシンが応えてきた。
「よくあることじゃねえか」
「シン」
「同じ型のモビルスーツや船と戦うなんて。違うか?」
「そう言われればそうか」
キラはシンの言葉を聞いて思った。
「ティターンズは元々連邦軍だったし」
「そういうことさ。そうじゃなくてもこっちは色々なマシンがあるしな」
「そうだね」
「アークエンジェルだってヨーロッパで手に入れたやつだろ?何かは知らないけれどよ」
「ドミニオンだね」
サイが答えてきた。
「ドミニオン」
「うん、アークエンジェル級の二番艦だ。黒く塗装されている」
「ホントだ」
カズイが確かめて言った。
「映像見たら本当に」
「よく知ってるわね、サイ君」
「って艦長」
サイはマリューに褒められても素直に喜んだ顔は見せなかった。
「これこの前艦長にも渡されませんでした?資料が」
「あら、そうだったかしら」
「メールで艦長のパソコンに」
「御免なさい、最近私部屋でいつもミサトやマヤちゃんと飲んでるから」
「やっぱり」
「迷惑メールは全部処理してるんだけれどね」
「頼みますよ、それも」
「わかってるわよ。それでドミニオンね」
「はい」
サイはあらためて答えた。
「そうです。ティターンズに押収されたのが今来ています」
「性能はアークエンジェルより上だったわね」
「確か。ラミネート装甲もありますし」
「ラミネート装甲って?」
ミリアリアがそれに問う。
「対ビーム兵器用の装甲さ」
サイはこう説明してきた。
「ビームのダメージを軽減するんだ」
「ふうん」
「ビームコートみたいなものか」
「まあ近いね」
サイはトールにも答える。
「だからビーム兵器はあまり意味がないんだ、ドミニオンには」
「あの三機のいかれたガンダムだってそうだしな」
シンがそう言って顔を顰めさせてきた。
「面倒な奴ばかり出て来るな、全く」
「御前よりましだ」
またしてもカガリが口を挟んできた。
「少しは落ち着け」
「御前に言われたかねえよ」
そして売り言葉に買い言葉でシンも返す。
「ちったあお姫様らしくしやがれ。この男女」
「何ィ!」
そして例によてカガリも激昂する。
「ロリコンのシスコンに言われたくはない!」
「そりゃどういう意味だ!」
「胸の携帯でいつも妹さんの声聞いてるだろ!」
「マユは俺の大切な妹だ!」
「明らかにおかしいだろ!いつも聞いてるのは!」
「御前には関係ないだろ!」
また喧嘩がはじまった。
「おまけに最近はステラといつも一緒だな!」
「ステラは俺が守る!」
さりげなく非常に恥ずかしい言葉を宣言してきた。
「御前はアスランにでも守られてろ!」
「ちょっと待て!」
カガリは今のシンの言葉に異常反応を示してきた。
「御前何でそれ知ってる!」
「えっ!?」
「へっ!?」
ロンド=ベルの面々は今のカガリの言葉に思わず目を点にさせた。
「あの、ユウナさん」
アズラエルが目をパチクリとさせながらユウナに尋ねる。
「カガリさんが貴方の婚約者ではないことはもう知っていますが」
「はい」
ユウナも呆然としながらそれに答える。
「今の言葉は」
「僕も初耳です」
補佐役である彼も今はじめて聞いたのである。
「カガリとアスラン君が」
「ううう・・・・・・」
その横ではキサカが感激の涙を流していた。
「遂にカガリ様に貰い手が。ユウナ様がお断わりした時はどうなるかと思ったが」
「しかしこれはまた」
アズラエルは驚きを隠せないまま述べる。
「意外な顔触れですね」
「いや、肩の荷が下りた気分です」
ユウナはほっとした声で応えた。
「ようやくオーブの主の生涯の伴侶が見つかったのですから」
「貴方ではなく」
「いやあ、僕の好みはですね」
上機嫌なあまり口を滑らせてきた。自分では気付いてはいない。
「大人しくて優しくてロングヘアーで」
「つまりカガリさんとは全く正反対の」
「ははは、その通りです」
完全に失言だった。気付いていないだけで。
「まあカガリは子供の時から知っていますが昔からあんなので」
「ほう」
「困ったものです。まあこれでアスラン君が引き取ってくれるというのなら僕としては大助かりですよ」
「私は売れ残りの猫か!」
カガリが抗議してきた。
「御前は私をサポートするのが仕事じゃないのか!」
「だから旦那様をと」
「アスランとは何もない!」
白々しい嘘に聞こえた。
「ただ、ちょっとだな」
少し顔を赤らめさせて言う。
「二人でマクロスの中やホーチミンを歩いただけだ」
「何時の間にだよ」
ディアッカがそれを聞いて呟く。
「ディアッカが料理の食材を買いに行ってもらっていたあの時なんじゃ?」
ニコルがそう言ってきた。
「あの時何でアスランとカガリさんが行ったのか不思議に思っていたんですが」
「ああ、あの時か」
ディアッカはそれを言われてようやく納得した。
「成程な。そういうことなら」
「アスラン、本当なのかい?」
「いや、あれは」
アスランはアスランでジャックに問われてバツの悪そうな顔をしていた。
「その。カガリがいつもシンと喧嘩していたから、それで慰めに」
「殴られるのは俺だぞ」
シンが言う。
「最初にパンチ飛ばしてくるのはいつもあいつだからな」
「カガリ様手が早いから」
「全く」
「子供の時からだからねえ」
アサギ、マユラ、ジュリもカガリをフォローしない。
「困ったものだ」
これが三人の本音であった。今それをはっきりと出していた。
「御前等私を本当に何だと思っているんだ」
「男女」
「だから御前は黙ってろ!」
またシンに言い返す。
「そもそも御前が!いらんことを言うから!」
「言われる方が悪いだろ!」
「何!この単細胞!」
「猿女!」
「誰が猿だ!誰が!」
「御前のことだ!たまには色気のある下着でも履いてみろ!」
「御前だって赤とかオレンジの派手なトランクスばかりだろうが!」
何も知らずに聞くとかなり危ない台詞であった。二人はわかっていないが。
「その前赤のトランクスなくしていたよな!」
「悪いか!」
「ああ、悪い!下着の管理位きちんとしろ!」
「御前もたまには可愛い下着でも着けてみろ!」
「何を!」
相変わらず仲の悪い二人であった。喧嘩をしながら配備についていた。
配備が終わるともう戦闘開始直前であった。既にあの三機のガンダムが殴り込みをかけてきていた。
「ひゃっあっはっはっはっはっはっは!」
まずはオルガのカラミティが派手に攻撃を放つ。それでロンド=ベルに風穴を開けようとする。
「どいつもこいつも消し飛ばしてやるぜ!」
破天荒な攻撃がロンド=ベルに浴びせられる。それは並の戦艦の砲撃をも凌駕していた。
「おいおい、バスターより上じゃねえか!」
ディアッカはそれを交わしながら言う。
「相変わらず滅茶苦茶な攻撃だな」
「いや、まだそう言うのは早い」
ミゲルが言ってきた。
「っていうと?」
「来たぞ」
「・・・・・・うざい」
今度は曲がるビームであった。二人はそれを何とかかわした。
「来たな」
「言うのが遅えよ」
ディアッカは冷や汗をかきながらミゲルに返した。
「そういやこいつ等三人だったんだ」
「はい」
「そしてまた一機」
フィリスとエルフィが言うと今度は鉄球であった。
「必殺!」
またしても異常な動きで襲い掛かってくる。シャニもクロトも相変わらずの動きであった。
「僕の前にいるのは纏めて叩き潰してやるよ!」
「チッ!何でもかんでも潰す気かよ!」
「ほらほら!ぼやぼやしてたら死ぬよ!」
無茶苦茶にミョッルニルを振り回しながら叫んでいる。
「死ね!抹殺!」
「おい、ニコル!」
ディアッカはニコルを呼んだ。
「こいつの相手できるか!」
「すいません」
しかしニコルの返事は彼の期待したものではなかった。
「今こっちも手が離せなくて」
「そうか」
彼は劾と闘っていた。とても手の回せる状況ではなかった。
「むしろニコルの方がまずい」
レイが言う。
「ディアッカ、ニコルの援護に向かえ」
「いいのかよ」
「あの派手に砲撃を繰り返すガンダムの相手は俺がする」
まずは彼がカラミティの攻撃を止めることにした。
「そしてあの暴れ回っているガンダムは」
「俺達が行くさ」
「まあ任せておいてくれよ」
スティングとアウルが名乗り出てきた。
「ステラもいるしな」
「止める」
「では頼めるか」
レイが彼等に対して問う。
「その黒いガンダムは」
「ああ」
「じゃあな」
「よし。最後の一機はアスランが頼む」
「わかった」
アスランはフォピドゥンに向かうことになった。彼はそれに頷く。
「これでいい。他の皆はそのまま他の敵部隊に向かってくれ」
「了解」
「じゃあレイ、頼んだわよ」
「わかった」
そうルナマリアに返す。この時キラとシンは二人でドミニオンに向かうアークエンジェルの護衛にいた。アークエンジェルは徐々にドミニオンに接近していた。
ドミニオンもアークエンジェルに向かっている。見れば一機のモビルスーツが護衛にいる。
「あれは」
「金色!?」
キラとシンはすぐにそのモビルスーツに気付いた。そして言う。
「あれ知ってるか?」
「ううん」
キラはシンに返す。
「そうか、俺もだ。あんなのは見たことがない」
「百式に似ているけれどね」
「ああ」
「あれはアカツキなんじゃないかな」
しかしここでクサナギにいるユウナが言ってきた。
「アカツキ!?」
「うん、オーブで開発していた高性能モビルスーツだよ。あの戦争で行方不明になっていたんだけれど」
「あのティターンズのオーブ侵攻でですか」
「うん。バルマーに破壊されたかなって思ったんだけれどまさかこうして今出て来るなんて」
「破壊していいですか?」
シンがユウナに問う。
「今は敵だし」
「そうだね。設計図とかはもうこっちにあるし」
ユウナはシンに返した。
「頼むよ。ただしそいつはかなり手強いから注意してね」
「了解。キラ」
シンはキラに声をかけてきた。
「援護を頼む。いいか」
「わかったよ。じゃあ」
キラも頷き二人で向かおうとする。だがその時だった。
「!?」
「またレーダーに反応!?」
そこにティターンズの援軍が来た。戦艦が一隻であった。
「チッ、追いついてきたか」
シンはそれを見てすぐに動いた。
「俺が向かう。いいか」
「うん」
キラはそれに頷く。彼が一人でアカツキの相手をすることになった。
「それじゃあそっち頼むね」
「わかった」
シンはそちらへ流れていく。残ったのはキラとアークエンジェルだけであった。
「一騎打ちね」
マリューはアークエンジェルの艦橋で言った。
「ドミニオンと」
「ですね」
それにミリアリアが頷く。
「何か自分と戦ってるみたいで」
「そうね。けれど」
ここでモニターが開いてきた。
「!?誰!?」
「そちらがアークエンジェルですね」
「ドミニオンからです」
カズイが言った。
「通信です」
「って・・・・・・何!?」
マリューはモニターに現われた者を見て驚きの声をあげた。
「まさか・・・・・・そんな」
「嘘っ、どうしてこの人が」
ミリアリアも思わず叫ぶ。
「こちらティターンズ第七艦隊所属ドミニオン」
言っているのは女であった。それもマリュー達がよく知っている。
「ドミニオン艦長ナタル=バジルール。階級は少佐です」
「嘘、どうして貴女が」
マリューはナタルに叫ぶ。何とティターンズの軍服を着たナタルがそこにいたのである。
「貴女がアークエンジェル艦長マリュー=ラミアスですね」
ナタルは落ち着いた顔でマリューに問うてきた。
「そうでしょうか」
「え、ええ」
マリューはその質問に答えた。
「そうだけれど」
「わかりました。では勝負をお願いします」
「何を言ってるのよ、貴女」
マリューはナタルに言う。
「どうしてティターンズにいるのよ」
「私は最初からティターンズに所属していますが」
ナタルはそう答える。
「それが何か」
「そうなの」
嘘をついているようには見えなかった。
「それが今の貴女なのね」
「今も何も」
ナタルはそれに答えて言う。
「私は最初から」
「わかったわ。貴女がそう言うのなら」
「では」
「いえ、それでも」
マリューは苦い顔で言う。
「私は貴女とは・・・・・・」
「艦長!」
サイがマリューに対して言う。
「けれど今は」
「それでも」
それでもマリューは戦えなかった。相手は長い間共にいた戦友である。それでどうして戦えるというのであろうか。マリューはそんな女ではなかったのだ。
「私は・・・・・・」
「ここは戦場です」
今度はノイマンが言った。
「今ここで躊躇していては皆が」
「皆が」
「はい、命の危険に曝されます。ですから」
「そうね」
苦渋に満ちた顔で俯いていた。だが今それに頷いた。
「だから今は」
「はい」
「艦長、どうしますか」
トールがマリューに問うてきた。
「御指示を」
「ええ。面舵!」
マリューはそれに応えて指示を出した。
「そして敵の左舷に回ります」
「了解!」
それを受けてアークエンジェルは大きく右に動いた。見ればドミニオンも同じく右に動いていた。
「向こうも動きがいいですね」
「ええ」
マリューはノイマンの言葉に頷く。
「そうね。それもかなり」
「流石はナタル副長です」
「そうね」
あらためてナタルの力量を思い知らされた。
「けれどこちらも」
「そうですね」
負けるわけにはいかなかった。だがそれはナタルも同じであった。
「艦長」
ドミニオンの艦橋にはジブリールもいた。
「ここは任せるぞ」
「お任せ下さい」
ナタルは前を見据えたまま彼に応えた。
「あのアークエンジェルを必ず」
「私は軍人ではない」
ジブリールは言った。
「だから。戦場のことは君達に任せる」
「有り難うございます」
「その力見せてくれよ」
彼はこれといって言おうとはしなかった。見守るだけであった。しかしレクイエムに関しては別であった。
「あれさえ撃つことができるようになればコーディネイターなぞ」
彼はその時を待っていたのだ。今はその時を守る為の戦いであった。彼にとっては。
アークエンジェルは砲撃を開始した。ドミニオンも。
「ゴッドフリート、てーーーーーーーーっ!」
ナタルが艦橋で叫ぶ。するとドミニオンがゴッドフリートを放った。
「急速旋回!」
「はい!」
マリューの指示を受けてトールが舵を切る。それで砲撃を何とかかわした。
「ふう、間一髪」
「トール、チャックさんみたいなこと言うわね」
「あっ、そういえば」
ミリアリアに突っ込まれて気付く。
「何かそんな感じだな」
「よくやってくれたわ、トール君」
マリューが彼を褒めてきた。
「貴方のおかげで助かったわ」
「どうもです」
「今度はこちらの番ね。こっちもゴッドフリート用意」
「了解」
サイがそれに答える。
「ゴッドフリート発射準備完了!」
「了解、ゴッドフリート発射!」
マリューが指示を出す。そして今度はアークエンジェルがゴッドフリートを放った。
光がドミニオンを襲う。だがそれはドミニオンの見事な旋回によりかわされた。
「全弾かわされました」
サイが報告する。
「そう。ナタルも腕をあげたわね。けれど」
「ええ、それでもですよね」
「そうよ。再攻撃の準備」
ミリアリアに応えて言う。
「了解!」
アークエンジェルはいつもの雰囲気に戻っていた。和気藹々としているがチームワークは取れている、そうした雰囲気がある限り大丈夫であった。
その横ではキラがアカツキと闘っていた。キラは照準をアカツキに集中させる。
「これなら・・・・・・」
ロックオンが完了した。そして攻撃を放つ。
「いっけえええええーーーーーーーっ!」
全ての攻撃をアカツキに集中させる。これで終わる筈だった。
しかしアカツキはそれを恐ろしいまでの機動力でかわすのであった。その動きはとてもナチュラルのものではなかった。有り得ない動きであった。
「コーディネイター!?いや、違う」
キラはその動きを見て言った。
「あれは・・・・・・ニュータイプ」
それを感じた時にはアカツキはもうこちらに突撃してきていた。キラは咄嗟にビームサーベルを抜きその攻撃を受け止める。
「くっ!」
かなりの衝撃が彼を襲う。だがそれは何とか受け止めた。
「この動き、間違いない」
キラは今の攻撃で確信した。
「このアカツキのパイロットは・・・・・・ニュータイプだ!」
「よく今のを受けたわね」
アカツキから声がした。
「けれど次で!」
「!?今の声は」
キラはその声に聞き覚えがあった。
「君は、まさか君は」
「天国に送ってあげるわ!」
「間違いない。フレイ!」
「!?」
キラの言葉を聞いたアカツキは動きを止めた。
「フレイなんだね!フレイ=アルスター!」
「あんた、どうして私の名前を?」
「生きていたんだね!」
「生きてるも何も私は最初からティターンズよ」
アカツキに乗っていたフレイはこう返す。
「えっ!?」
「ティターンズのフレイ=アルスター少尉。それは私よ」
「馬鹿な、君は」
「フリーダムってことは貴方がキラ=ヤマトね」
「う、うん」
その問いには答える。
「そしてさっきのデスティニーがシン=アスカ。ロンド=ベルのエースのうちでも有名な二人」
今のフレイにとってはキラはそうした存在でしかなかった。
「そうね。ならここで!」
フレイの殺気が急に上がった。
「叩き落してやるわ!」
「なっ、フレイ!」
「死になさい!」
また斬りつけてきた。
「これで!」
「くっ!」
その剣撃を受け止める。やはりナチュラルのものではない攻撃であった。
「一撃で死なせてあげるわよ!」
「何故だ、何故君が!」
キラはその中で叫ぶ。
「どうしてここに!」
「だから言ってるじゃないの!」
フレイはそれに反論する。
「ティターンズだからよ!そしてパパを殺したコーディネイターをやっつけるのよ!」
彼女はさらに言う。
「パパを殺したシン=アスカを!」
「えっ!?」
キラは今の言葉を聞いて目を点にさせた。
「フレイ、今何て」
「パパを殺したシン=アスカを!何度でも言うわ!」
「あの時のことか」
キラはすぐに何かわかった。
「そのことを君は」
「シン=アスカは今はロンド=ベルにいるそうね」
フレイは問う。
「さあ、出しなさい」
「シンをか」
「そうよ。そしてこの手で倒してあげるわ!」
憎悪に燃える目であった。その目で言う。
「シン=アスカだけは!」
「俺がどうしたっていうんだ!」
「まずい」
キラはシンの声を聞いて呟いた。
「来たの、シン」
「ああ、連中はあらかたやっつけたからな」
シンはキラにこう返した。
「で、その金ピカの相手だよな」
「いや、これは」
キラはここで口ごもってきた。
「僕だけでするから君は」
「そうはいくか」
しかしシンはそれを聞き入れなかった。
「御前一人でやらせるか。そいつ手強いんだろ?」
「けれど」
「けれどもどうしたこともない。おい、そこの金ピカ」
アカツキに対して言う。
「俺も相手になるぞ、いいな」
「デスティニーガンダム」
フレイはデスティニーを見て暗い声で呟いた。
「やっぱり来たわね」
「何だ?」
シンはその声を聞いて目を顰めさせた。
「どうしたんだ、一体」
「あんたがシン=アスカね」
フレイは彼に問うてきた。
「だったらどうだっていうんだ?」
シンもそれに返す。彼は何も事情を知らない。
「一体何が」
「・・・・・・許せない」
フレイは暗い声のまま言った。
「許せない!パパの仇!」
「!?まさかこいつ」
「危ない、シン!」
キラが叫ぶ。
「来るよ、よけて!」
「あっ、ああ!」
そこにフレイのビームライフルが放たれる。その乱射にシンは分身で対処した。
「チィッ、これは!」
それはシンですらかわすのが精一杯の攻撃であった。最早ナチュラルのそれではなかった。
「コーディネイター!?いや、違う」
シンも本能でそれを悟った。
「これは・・・・・・ニュータイプか」
「うん、多分」
キラがそれに答える。
「注意して、今の彼女は」
「ああ、わかった」
シンもそれに頷く。
「というよりかはもうわかってる」
「この動きはね」
「キラ」
シンはキラに声をかけてきた。
「何?」
「やっぱり二人でやるか」
「そうだね」
キラもそれに頷く。
「じゃあ後ろは任せて」
「よし、突っ込むぞ」
「接近戦もかなりのものだから」
キラはそう忠告する。
「ニコルに匹敵するよ」
「あいつクラスか?」
「うん」
それに答える。ニコルはザフト組の中では最も接近戦に強い。ブリッツの性能を最もよく引き出しているのである。
「だから」
「洒落にならないな、それは」
「そうだよ」
シンは話の間も攻撃を必死にかわす。射撃もかなりのものだった。
「とりあえずわかった」
彼は言った。
「このままじゃ持たん、援護頼む」
「了解」
それを受けてシンの後ろにつく。それで連携攻撃に入る。
「くっ、二人がかりってわけね」
「ああ、その通りさ」
シンがそれに返す。
「やってやる!見てろ!」
「じゃあこっちも相手してやるわよ!」
フレイも引き下がらない。
「思う存分ね!何があってもあんんただけは!」
「俺だってやられるわけにはいかないんだ!」
シンも叫ぶ。
「父さんと母さん、そしてマユの為にもな!」
「あんたは私のパパを殺した!」
フレイはそう抗議する。
「だから私はあんたを!」
「やらせるわけないだろ!」
シンは言い返す。
「それが戦争だ!こっちがやらないとやられるんだ!」
「勝手ね!」
「勝手も何もそれがルールだ!わかったら来い!」
「言われなくても!」
フレイはビームサーベルを抜いてきた。それで斬りかかる。
「はあああっ!」
それは確かに恐ろしいまでのスピードだった。シンといえどようやく受けたといった感じであった。
「何っ、こんなに速いのか」
「言った通りでしょ」
「あっ、ああ」
キラにも答える。
「しかしこれ程だなんて」
「気をつけて。また来るよ」
「!?」
「うおおおおおおおおっ!」
狂気じみた声と共にまた来た。今度は突いてきた。
「なっ!」
かすった。シンはそれを見て目を見張った。
「俺にかする!?」
「シン、また!」
「しまった!」
「今度こそは!」
ビームサーベルを振り下ろす。油断したシンは間に合わない。その間に死の光が振り下ろされる。しかしここでキラが咄嗟に動いた。
「くっ!」
フリーダムからビームを放つ。それでアカツキの右腕を弾き飛ばした。
「なっ、折角これで!」
「間に合ったみたいだね」
キラはアカツキの右腕を弾き飛ばしてほっと安堵の息を漏らした。
「シン、大丈夫!?」
「ああ、何とかな」
シンも冷や汗をかきながらそれに答えた。
「今のは本当に死ぬかと思ったぜ」
「本当だね」
「覚えてらっしゃい!」
フレイは右腕を抑え二人を見据えながら言ってきた。
「今度会った時が!」
そう言ってドミニオンへ引き揚げる。ドミニオンもダメージを受けているのか徐々に下がりはじめた。
「下がるのか」
「はい」
ナタルがジブリールに答えた。
「これ以上の戦闘は無用なダメージを受けます。ですから」
「わかった」
ジブリールはその言葉に頷いてきた。
「そうしたことは君に任せている。ではそうしてくれ」
「わかりました」
「それにだ」
ジブリールは前線を見てみた。モニターにコンピューターで映し出されている。
「そろそろ潮時か」
「そうですね」
周りにいるティターンズのスタッフがそれに頷いた。彼等もまたブルーコスモスからティターンズに入った者達である。
「それでそろそろ」
「よし、全軍撤退」
彼は指示を出した。
「あの三機のガンダムも呼び戻せ。いいな」
「了解」
こうしてティターンズはまずは退いた。ロンド=ベルは前哨戦にまずは勝利を収めたのであった。
「さて、と」
マリューは集結する中で呟いた。
「まずは第一ラウンド終了ってところね」
「そうだな」
それにムウが頷く。
「まだこれからだけれどな」
「ただ艦長さんよ」
アルフレッドが言ってきた。
「何ですか?」
「こっから先に行くとティターンズの守りはさらに固くなるみたいだぜ」
「それもそうか」
ムウがそれを聞いて応える。
「何かどかっと派手にやらねえとこっちのダメージがな」
「ですね」
マリューもその言葉に頷く。
「ローエングリンで吹き飛ばすか」
「サイバスターを突っ込ませるか」
「やるんだったらやるぜ」
マサキはボーマンに答えた。
「お望みならばよ」
「そうですね。ただ」
ここでシュウが言う。
「もっと面白いことになるかも知れませんよ」
「面白いこと」
「はい」
彼は言う。
「もっともそれで悲劇がまた起こるでしょうが」
「一体どういうことなんだい、それは」
万丈が彼に問うてきた。
「随分思わせぶりな言葉だけれど」
「ヒントを言うならプラントです」
「プラント」
「はい、そろそろ大きく動く筈です、彼等が」
「彼等というとパトリック=ザラか」
万丈はそう考えた。
「決着を着ける為に」
「さて、それはどうでしょうか」
しかしシュウはそれには懐疑的であった。
「違うのかい?」
「プラントにも様々な勢力が存在します」
彼は言う。
「パトリック=ザラの強硬派やシーゲル=クラインの穏健派、その他に」
「その他に」
「全く別の勢力も」
「あの連中が一枚板じゃないのはわかってるよ、もう」
シモーヌがそれに言う。
「そして彼女もまた」
「彼女!?」
ベッキーがそれを聞いて声をあげる。
「誰だい、それは」
「プラントで彼女と言えば」
ヤンロンが己の知識をたぐる。リューネはふと呟いた。
「確か・・・・・・ラクス=クラインだったっけ」
「はい、彼女です」
シュウはそれに答える。
「彼女が我々のところに来ます。新しい力と共に」
「新しい力」
キラがその言葉を聞いて呟く。
「それは一体何ですか、シュウさん」
「おっと、キラ」
そこにケーンが突っ込みを入れる。
「楽しみは後に取っておこうぜ」
「そうそう。ヒーロー番組の定番だろ」
予定調和のようにチャックも言う。18
「切り札が出るのは」
「だからここは落ち着いていこうじゃないか」
「はあ」
ライトの言葉に頷く。
「それじゃあ」
「俺とキラにだな」
シンがふと言った。
「ヒーローだからな」
「いや、あんたはないだろ」
それにミンが突っ込みを入れる。
「何でだ?」
「いや、何となくそう思っただけだけれどな」
「そうか。じゃああるな。何たって俺はザフトのトップガンだったからな」
「俺も同じだけ撃墜しているんだがな」
アスランが横で言ってきた。
「最近御前等俺のこと忘れていないか?」
「それ言うな、おい」
トッドがそんなアスランに突っ込みを入れる。
「言ったら洒落ならねえぞ」
「おっと、そうですか」
「そうだよ、気をつけろ」
「気をつけないと髪の毛が抜けちゃうよ」
「うっ・・・・・・」
チャムの心がグサリと心に突き刺さる。
「それはちょっと」
「おい、チャム。その言葉はなしだ」
「あっ、御免なさい」
「いや、いいけれど」
「まあ俺だな、もう一人は」
シンは相変わらず自分だと思っていた。
「切り札を貰えるのはな」
「いや、それはどうかな」
それにショウが突っ込みを入れる。
「違うっていうのか?」
「フリーダムとデスティニーじゃ全然タイプが違うじゃないか」
ショウはそこを言ってきた。
「そうだろ?それで同じものは」
「ないか」
「俺はそう思う。むしろフリーダムとジャスティスの方が」
「可能性があるか」
「そうじゃないかな」
「まあそうなってもいいさ」
シンは意外と素直に述べてきた。
「どっちにしろ俺がトップガンだからな」
「トップガンって人間性は考慮に入れないのよね」
「おい、そう来るのかよ」
アスカに抗議する。
「折角話が纏まったってのによ」
「あんたみたいなガキがトップガンってだけでも恐ろしいじゃない」
売り言葉に買い言葉でいつものように返す。
「何?この単細胞」
「五月蝿い、ペチャパイ」
「あんたそれだけは言ったらいけないのよ!」
「御前の言ったらいけないことって幾つあるんだよ!」
「女はナイーブなのよ!男とは違うの!」
「何処がだ!このガサツ女!」
「何ですってぇ!」
「やれやれ、またか」
ニーがまたしてもはじまった二人の喧嘩を見て溜息をつく。
「どうしてシンはこう」
「同じレベルなのよ」
マーベルがここで言う。
「シンもアスカもね」
「確かにそうよね」
それにキーンが頷く。
「二人共賢いって自分では思ってるけれど」
「子供よね、やっぱり」
リムルも言う。
「どうしたものかな」
ニーは少し溜息をつく。
「この二人とカガリは」
「精一杯喧嘩をさせることだ」
ガラリアは放任主義を出してきた。
「それでいいのか?」
「いい。動物と同じだ」
「動物って」
「飽きるまで喧嘩させれば何時かは仲良くなるものだ」
「そうなのか?」
バーンはその言葉に今一つ懐疑的であった。
「あれはむしろ猿か何かにしか見えないが」
確かにそうであった。二人は猿のように言い争っている。
「まあ今は放っておこう」
「いいのか、チャム」
「喧嘩する程仲がいいっていうし」
「そうか。それにしても」
ショウは難しい顔を見せていた。
「シンのあの気性はどうにかならないものかな」
「どうにもなりません」
ルナマリアがそれに突っ込みを入れてきた。
「あいつずっとあんなのでしたから」
「やっぱりそうか」
ショウはそれを聞いても驚きはしなかった。
「そうだろうな」
「わかります?やっぱり」
「わかるさ。あれを見ていたらな」
シンはなおもアスカと言い争っている。
「どう見たって。ザフトの頃もキラと何度も戦っていたし」
「何か随分懐かしい話に思えるな」
ディアッカはそれを聞いて言う。
「ほんのちょっと前のことなのによ」
「そうだな。何故かな」
レイも言う。
「不思議なことだ」
「俺かなり馴染んでるしな」
「っていうかディアッカは馴染み過ぎだろ」
甲児が言ってきた。
「元からいたみてえじゃねえか」
「何か過ごし易いんだよな」
自分でもそれを認める。
「この雰囲気がな。いいんだよ」
「デイアッカは確かにここに合ってますね」
ニコルがそれに応えて言う。
「本当に」
「そうだな。少なくとも悪い場所じゃねえぜ」
「そうだな。俺もここはいい」
ミゲルもそれに頷く。
「歌も唄えるしな」
「僕はピアノも。シンジ君」
「あっ、うん」
シンジはアスカを抑えながら彼に応えてきた。
「また一緒に演奏をしましょう」
「そうだね。また」
「ただなあ」
ここでジャックが言う。
「何かまだ誰か足りないんだよな」
「誰か?」
「うん。イザークだけれど」
ハイネに述べる。
「あいつとシホはまだ向こうだからね」
「イザークさんはこっちに入るのは難しいと思います」
「シホさんも」
フィリスとエルフィが述べる。
「やっぱり」
「そうかあ。やっぱりそうだよな」
ジャックはそれを聞いて少し残念そうな顔を見せた。
「あの二人も入ると心強いんだけれど」
「そうね」
それにタリアが同意してきた。
「ラクス様はあの二人も同志にって考えておられたけれど」
「どうせならあの馬鹿を外して二人をいれたらよかったんじゃないのか?」
カガリはシンを指差して言う。まだアスカと喧嘩をしていた。
「私はそう思うぞ」
「色々難しい事情があるんだよ」
ディ悪化がこう言う。
「あいつはああ見えても強いことは強いからな」
「頭は悪いな」
「御前に言われたくはない!」
シンはカガリにも反応してきた。
「この山猿!」
「何を!」
カガリも参戦することになった。
「御前!言っていいことと悪いことがあるぞ!」
「御前には何を言ってもいいんだよ!このチビ!」
「今度はそれかチビで悪いか!」
「悔しかったらステラみたいに可愛くなってみろ!」
「五月蝿い!私だってなあ!」
シンはアスカと言い争いながらもカガリともやり合う。
「花も恥らう乙女なんだぞ!それを御前は!」
「下着姿で酔う女の何処が乙女だ!」
「五月蝿い!」
「御前みたいな奴が主でオーブは大丈夫なのか!」
「ユウナがいる!」
「そう来たのかい」
ユウナはそれを聞いて困った顔をしてきた。
「私の補佐役としてな!」
「まあ重荷背負うのが僕の仕事だけれど」
自分でそれを言う。
「しかし堂々と言うのはねえ。どうにも」
ユウナの言葉は肝心のカガリの耳には入らない。彼女は相変わらずであった。
「いい加減死ね!」
「やかましい!」
かなり低レベルな争いになっている。そんなこんなで戦いの後の喧嘩が行われていた。
ロンド=ベルがティターンズを一旦退けた頃プラントでは一つの事件が起こっていた。
「ではクライン様」
「うむ」
シーゲル=クラインは密かに何処かに向かおうとしていた。僅かな周りの者を連れ闇夜に紛れて軟禁されていた屋敷を出ようとする。
「ラクスはどうなった?」
彼はその中で周りの者に問うた。
「既にエターナルでプラントを出られました」
「そうか」
それを聞いてまずは安心した。
「いいことだ。これでな」
「しかしシーゲル様」
周りの者は彼に声をかけてきた。
「どうした?」
「ザラ閣下とはもうお話がついているのですね」
「うむ。今が頃合いだ」
彼は言う。
「連邦との講和はな。すぐに地球に向かうぞ」
「はい」
「わかりました」
周りの者はそれに頷く。
「ここで何とかしなくてはならんのだ」
「確かに」
それはシーゲルの側近達にとってもパトリックにとっても同じであった。
「これ以上の戦いはプラントにとって破滅になる。それだけは」
「だからこそ。ですから閣下」
「うむ」
周りの者の言葉に頷く。
「行くぞ」
「はい」
しかしそれは成らなかった。突如としてそこに銃声が無数に鳴り響いた。
「うっ」
「ぐわっ」
「ば、馬鹿な」
シーゲルは周りの者が倒れ自らも傷を負ったのを見て声をあげた。
「どうしてここが・・・・・・」
彼はそう呻いて倒れた。後には暗闇があるだけであった。何も存在してはいなかった。

第百三十九話完

2007・1・29
 
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