八条学園騒動記
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第二百六十二話 居酒屋その二
「ですから」
「いいんですか、それで」
「和風の中でも」
「ギャップがあって面白いですよね」
このことも狙ってだった。
「そうですよね」
「ううん、何ていうか」
「日本人って時々思わぬ意表を衝くけれど」
「これはかなり」
「凄いね」
二人でこう言い合ってだ。それからだった。
店員さんにだ。こうしたものを注文した。
「じゃあ僕は」
「はい、何にされますか?」
「シシケバブに」
羊料理だった。それだった。
「それとトルコワイン」
「その二つですね」
「まずはその二つ御願いします」
ルシエンはその二つを店員さんに頼んだ。
そしてだ。アンネットもだった。
「私はテキーラに」
「お酒はそれですね」
「サボテンのステーキを」
「味付けはメキシコ風ですね」
「それで御願いします」
彼女はこの二つだった。
「それで」
「わかりました。それでは」
こうしてだった。注文が為されたのだった。それからだ。
暫くしてだ。その注文されたメニューが来た。それはまさにだった。
誰がどう見てもトルコ、そしてメキシコの料理だった。和室にそれがありだ。ルシエンもアンネットもまずはこう言った。
「何ていうかな」
「凄く場違いな感じはするわね」
「トルコ料理が日本のお店に出るって」
「メキシコ料理もね」
「ロシアにもメキシコ料理のレストランあるよね」
「お店の中は滅茶苦茶暖かくしているけれどね」
それでもだ。あるにはあると答えるアンネットだった。
「ただ。サボテンのステーキはね」
「それはないんだ」
「まあ。あるにしてもロシアのサボテンよ」
メキシコ産のサボテンではないというのだ。そうした意味でロシアにはサボテンのステーキ、本場のものはないというのである。
「テキーラも実はあるけれど」
「ロシアなんだね」
「外見だけでわかるけれど」
テーブルの上のだ。そのテキーラとサボテンのステーキを見ながら話す。
「ロシア産は全然違うのよ」
「具体的にはどんな感じだよ」
「ロシアのサボテンはもっと大きくてね」
一切れにしてもそうだというのだ。
「色も薄くて中身も詰まってない感じなのよ」
「そんな感じか」
「そう。だから香辛料やソースをたっぷりかけて」
そうしたステーキだというのだ。
「食べるのよ。あまりサボテンの味は楽しまない感じかしら」
「じゃあテキーラは」
「テキーラも色が薄いわ」
目の前のメキシコのテキーラを実際に見ての言葉だ。
「ロシアのはね」
「ロシアのとはそこまで違うんだ」
「そう。ロシア人はお酒命だから」
これは変わらなかった。ロシアだからだ。
「テキーラも頑張って作ったけれど」
「それでも」
「そう、それでもよ」
違うというのだ。本場のものとはだ。
「味もどうかしら」
「じゃあ今から」
「食べて飲んでみるわね」
「僕もね」
ルシエンもだ。トルコ料理を食べてみる。その味は。
アンネットはだ。まずはだった。
メキシコ直輸入のテキーラとそのサボテンのステーキを食べてだった。こう言ったのだった。
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