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八条学園騒動記

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第二百六十話 野球での矛盾その九


「それが普通だからな」
「ロシア人はあるだけで満足するから」
「日本人みたいだな」
「そうそう、日本人もね」
 彼等が今いるだ。この国の国民性もなのだった。
「無欲よね」
「欲しがらないよな、あれやこれやと」
「あるものだけでいいっていう風で」
「本当に無欲だよな」
「ロシア人と日本人は連合の中ではね」
 とにかく無欲なのが目立っていた。しかしだ。
 アンネットはだ。こんなことも言った。
「けれど無欲っていいことかしら」
「いいことだろ。どんな宗教でも言ってるしな」
「けれど。あまり無欲だと」
 どうかというのだ。それならばだ。
「満足ばかりして何かを積極的にしたいとかね」
「ああ、文明の進歩とか」
「そういうことがなくなるわよね」
 その時点で満足すればだ。そうしたことはなくなるというのだ。
 その話はだ。ルシエンもだった。
 頷きそうしてだ。こう言うのだった。
「だよな。ゲームだって」
「私達がしているその野球ゲームにしてもよ」
「今の時点で満足すればな」
「それでそれ以上システムとか発展しないから」
「欲も大事なんだな」
「ロシア人の欲って」
 そのだ。ロシア人の欲はどうかというとだ。
「食べ物と飲み物は」
「ウォッカにパンにピロシキにボルシチだけあればだよな」
「それとジャガイモね」
 こうしたものでだった。
「これだけでいいから」
「それってアメリカ人とか中国人とかだとな」
 そのだ。彼等の場合はというと。
「思いつく限りの食べ物と飲み物言うからな」
「それが連合じゃ標準よね」
「そこからさらにだからな」
 満足してもさらに求める、連合はそうなのだ。
 大衆消費社会とはそうした一面がある。満足してそれで終わってはそのまま文明が停滞してしまう。これもまた事実だ。
 それでなのだった。彼等は消費しさらに消費するのだ。
 しかしロシアはだ。そこで大きく違うのだった。
「国家としてはどれだけでも欲しがるけれど」
「肝心の国民はだよな」
「たっぷり飲み食いできれば安心するのよ」
「それはかえってよくないかも知れないっていうんだな」
「うん。そうかも」
 アンネットもこう考えだしていた。しかしだ。
 ここでだ。ふとだった。
 アンネットはだ。また話した。
「多分。国があそこまで強欲じゃないと」
「ロシアは強くならなかったか」
「そう思うわ。大きいだけの国で止まっていたわ」
 確かに大きい。所有している星系の多さでは連合随一だ。ただし人口では一位ではない。
「連合の田舎になっていたわね」
「田舎か」
「そう、田舎にね」
 なっていたというのだ。
「なってたわ」
「日本人は凝り性で興味があるものはとことんまで研究し倒すからな」
 ここが違っていた。ロシアとだ。
「それが物凄い技術とか生み出すからな」
「ううん、ロシア人はそれもないから」
「やっぱり今あるだけで満足するんだな」
「そうなるのよ」
「ゲームもやっぱりなんだな」
 そのだ。彼等が今攻略本を見ている野球ゲームの話にもなる。 
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