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八条学園騒動記

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第二百五十七話 複雑な迷宮その五


「いいアルバイトだよ」
「そう。いいアルバイトなのね」
「ジョーもどうだい?」
 スカウトだった。彼女もどうかというのだ。
「このアルバイトするかい?」
「私はいいわよ」
 ジョーは笑顔でその誘いは断った。そのうえでこう言うのだった。
「どうも。倒れそうだから」
「そこまで暑くないぜ」
「それはあんただからよ」
「おいおい、そう言うのかよ」
「あんた特撮研究会じゃない」
 そうした部活もある。特撮を専門的に調べたりする部活である。
「そこでスーツとか着るでしょ」
「ああ、着るぜ」
「だからあんたは平気なのよ」
 そうだというのだ。
「慣れてるからよ」
「まあ慣れてることは事実だけれどな」
「普通の人は違うから」
「何だよ。折角誘ったのによ」
「もう他にアルバイトしてるし」
 ジョーは笑ってこうしたことも言った。
「別にいいから」
「ああ、それじゃあな」
「本屋でアルバイトしてるのよ」
「ああ、それが御前のバイトか」
「そうよ。楽しいわよ」
 実はジョーは読書家でもある。活発な性格からあまりそうは思われないが実は文学も好きなのだ。恋愛小説も好きだったりする。
「今度来てみてよ」
「じゃあ特撮の雑誌でも買うか」
 実に特撮マニアらしい言葉だ。
「その本屋でな」
「そう来たのね」
「特撮研究会だからな」
 それでだというのだ。
「だから。そうするさ」
「相変わらずね。けれどね」
「けれど?何だよ」
「だがそれがいい、ね」
 にこりと笑ってだ。ジョーは答えた。
「あんたはそれでいいわ」
「いいだろ?じゃあ今度店に行かせてもらうな」
「その時を楽しみにしているわ」
「それじゃあな」
 こう話をしてだ。そのうえでだった。
 四人はミイラ男達と別れた。そうして罠を避けながら先に進むのだった。その中でだ。
 不意にだ。前からだった。
 巨大な石が迫って来た。それを見てエイミーが言う。
「あの石ってね」
「本物じゃないわよね」
「本物だったら死ぬわよね」
 こうベスに答える。
「確実に」
「じゃあ何の石かしら」
「発泡スチロールだと思うわ」
 それではないかというのだ。
「だから当たってもね」
「命に別状はないのね」
「そう思うわ。ただね」
 それでもだとだ。ここでエイミーはこう言った。
「あの石に当たったらね」
「まずいことになるわね」
 ベスもこう予想するのだった。
「当たったら別のトラップが作動すると思うわ」
「それじゃあ避けないと」
 エイミーは周りを見回す。しかしだった。
 逃げ道はない。何処にもなかった。狭い通路の中を巨大な石が前から転がってきている。これでは逃げられる筈もなかった。
 その中でだ。メグが決断を下した。 
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