八条学園騒動記
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第二百五十二話 河童その七
「これからね」
「それは忘れないんだね」
「忘れないわよ」
絶対にといった口調であった。
「忘れたらもう生きている意味がないわよ」
「言うね。何かそれってね」
「それって?」
「そのまま恋する女の子だね」
ジョルジュは笑ってナンシーに話した。
「そうなってるね」
「何かそう言われると」
ジョルジュの今の言葉を聞いてだ。ナンシーは。
困った顔になってだ。こう返したのだった。
「恥かしいけれど」
「恥ずかしい?」
「ええ、恥ずかしいわ」
実際にそうだというのである。
「恋するって」
「実際にしてるじゃない」
「だから。そういう言い方はね」
「わかったよ」
そんな恥ずかしそうなナンシーを見てだった。
ジョルジュも折れた。それでだった。こう言うのだった。
「じゃあ。言わないよ」
「そうしてくれたら助かるわ」
「そういうことでね。それじゃあね」
「うん、じゃあね」
「帰ろうか」
「ええ。それにしても」
ここでナンシーの話が変わった。
「何かね」
「何かって?」
「河童がいるって記事に載せても皆信じないわよね」
「まあ普通は信じないね」
それはジョルジュも頷くことだった。
「しかも八条スポーツの記事だし」
「スポーツ新聞の記事ってネタだしね」
「そう、如何に笑いを取るか」
そうした新聞もあるのだ。
「そして注目されるかだからね」
「まあ誰も信じないわ」
彼等が書いて撮っただ。その河童の記事をだというのだ。
「信じる方がおかしいわよね」
「僕達前科があるしね」
「八条スポーツではね」
二人でだ。そうした前科も持っているのだ。
「宇宙人の化石ね」
「実際はあれハリボテだったし」
それを化石だと言ってだ。新聞の一面に持って来たのである。勿論その記事を信じた教師も生徒もいない。それこそ一人もだ。
「それやったしね」
「だから今回も信じないわね」
ナンシーは断言さえする。
「誰もね」
「そうだね。誰もね」
「けれどそれでいいのよ」
それでもだというのだった。
「むしろその方がいいから」
「誰も信じない方が」
「結果としてね。河童なんているとわかったらね」
「しかもこの学校に」
「大騒ぎになるわ」60
「だよね、やっぱり」
「それを狙ってもいたけれど」
こんなことも言うナンシーだった。
「実はね」
「スクープで?」
「そう、それでね」
そうした場合もだ。ナンシーは考えていたのだ。
「けれど考えてみたら結局はね」
「誰も信じないね」
「UMAだったこの星にもいたんだってことで話は済むけれど」
その星にいないと思われている生物が目撃された場合に認定されるのがこの時代のUMAなのだ。だからこれはさして驚くことではないのだ。
「けれど。妖怪は」
「いないって思う人が多いし」
「そうなのよね。だからね」
「こうして大々的なら余計に」
「信じないわね。まあそれならそれでいいわ」
ナンシーは実に大胆に割り切っていた。
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