八条学園騒動記
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第二百五十話 謎のシルエットその一
謎のシルエット
ジョルジュがナンシーと二人で屋上で話した次の日のことだ。彼は新聞部の部室に駆け込んできた。そうしてそのうえでナンシーに言うのだった。
「大変だ!大変だ!」
「大変だって何がよ」
ナンシーはパソコンで記事を書きながら古典的なやり取りで返すのだった。
「大変の大安売りでもしてるの?」
「自分古いネタ使うね」
「そうかしら。とにかくどうしたのよ」
「いや、昨日屋上から写真撮ったじゃない」
彼が言うのはこのことだった。
「それでね」
「スカイフィッシュならペットが逃げ出したんじゃないの?」
ナンシーはとりあえずこの動物を言ってみせた。星によっては普通に飛んでいる生き物である。UMAもこの時代では星によっては普通の存在なのだ。
「驚くことないじゃない」
「スカイフィッシュ?そんなありきたりな生き物じゃないよ」
「ドラゴンが逃げ出したとか?」
「いやいや、もっと凄いのだよ」
「じゃあ何よ」
ナンシーは記事を書きながらジョルジュに尋ねる。
「何があったのよ」
「写真にだよ」
「写真を撮ってたのはわかるわ」
「僕はカメラマンだからね」
「それでその撮った写真に何が写ってたの?」
かなり具体的にだ。ジョルジュに尋ねるのだった。
「それで」
「妖怪なんだよ」
それだと話すジョルジュだった。
「それが写っていたんだよ」
「妖怪って!?」
「そう。ほらこれ」
ここでようやく写真を見せるジョルジュだった。そこに写っていたのは。
普通の学校の上からの写真だ。生徒達が遊び木々や池もある。本当にありきたりの場所である。しかしその中にであった。
ナンシーはすぐに見つけた。その池の中にだ。それがいたのだ。
「これ、何かしら」
「何だと思う?」
「甲羅があって?」
ナンシーがまず言うのはこのことだった。
「それで肌が緑色よね」
「そうだよね、しかもね」
「頭にお皿があるわよね」
「うん、手には水掻きまであるし」
「つまりこれって」
そういうものを見ていくとだ。その写真に写っているのが何かをだ。ナンシーはすぐに名前を出した。その名前は。
「河童よね」
「そうだよね、間違いなく」
「前から噂があったけれど」
また言うナンシーだった。
「本当にいたのね」
「うん、うちの学校の池に河童がいるってね」76
「その話は知ってたけれど」
「まさかね。偶然撮ったのよね」
「最初は腕鳴らしに風景撮ったんだよ」
「ジョルジュが?風景を?」
「僕だって風景も撮るよ」
そのことについてはだ。ジョルジュは口を少し尖らせて返した。
「確かに少ないけれどさ」
「そうだったの」
「それで。その風景写真に写ってたんだよ」
そうだったというのだ。ジョルジュは真剣に話す。
「それがね」
「河童が」
「何だったら検証もしていいよ」
写真の検証もしていいというのだ。合成やトリックをしているかどうかだ。
「そうしてね」
「その必要はないわ」
静かに答えるナンシーだった。
「ジョルジュは合成とかしないから」
「それを信じてくれるんだ」
「そうよ。確かにジョルジュは問題の多いカメラマンよ」
それはナンシーもよくわかっていた。
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