八条学園騒動記
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第二百四十九話 ナンシーの不覚その七
「それにナンシーが彼と付き合ってるのがわかってもね」
「それがわかっても?」
「皆最初は驚くだろうけれど」
「笑ったりしない?」
「しないよ、そんなこと」
それはだ。ないというのである。
「絶対にね」
「本当に?」
「うちのクラスにそんな奴いる?」
ジョルジュはこのことを話すのだった。彼等のクラスでした。そうした人間が一人でもいるかどうか。そうナンシーに対して問うのである。
「いたら言ってくれるかな」
「いないけれど」
ナンシーはそれは確かにいえた。
「一人も」
「そうだよね。いないよね」
「ええ、誰と付き合っても。笑うなんてことは」
「そうだよ。いないしね」
ジョルジュはさらに話す。
「それに誰かと誰かのカップルなんて」
「カップルなんて?」
「学校のあちこちにいるじゃない」
今度はそれだった。そうした話になった。
「ありきたりだし」
「私もそうなの?」
「別に二股とかさ。禁断の愛とかじゃないよね」
「そんなの絶対にないわよっ」
声を荒くさせて反論するナンシーだった。そのことにはだ。
「私とあの子にはね。やましいところなんて一つもないから」
「ないよね」
「ないわよ。キスだって」
自分からだ。言ってしまうのだった。
「してないし」
「ああ、そういうことさえ言わなかったら」
「うっ、しまったわ」
「全然大丈夫だから」
ぎくりとした感じの顔になってしまったナンシーにだ。また話すジョルジュだった。
「大事なのは言わなくていいことを言わなかったらいいんだよ」
「それだけなの」
「そう、それだけ」
ジョルジュは笑顔で話す。
「本当にそれだけだから」
「ううん、じゃあ公にしても?」
「悪いことは何もないよ」
「そうなのね」
「まあ僕はアドバイスできるだけはしたから」
話はだ。ここまでだというのである。
「後はナンシー次第だよ」
「私と。あの子のね」
「そう。よく話し合って考えて決めてね」
「そうさせてもらうわ。それじゃあ今は」
「今は?」
「食べることにするわ」
それだった。今言うことはだ。
「パンと。ジュースね」
「おっと、そうだね」
ナンシーに言われてだ。ジョルジュも思い出した。今度は彼がそうなった。これまでとは逆になっていた。食べものについてはそうなった。
「それじゃあね」
「ええ。それにしてもパンもね」
「パンも?」
「何か最近あまり食べてなかったのよ」
「そうだったんだ」
「あの子、御飯派だから」
それでだというのだ。
「私もね」
「御昼はそうなんだね」
「ええ、そうなの」
こうジョルジュに話す。
「パン食べたの久し振りなのよ」
「ああ、つまりはあれだね」
「あれって?」
「御昼いつも一緒なんだ」
そのことだ。ジョルジュはすぐに見抜いた。ナンシーのその話からだ。
「いつも一緒に食べてるんだ」
「えっ、何でそれがわかるの!?」
「いや、わかるよ」
戸惑った顔になるナンシーにはだ。ジョルジュの薄い苦笑いが向けられた。彼は今はその苦笑いでナンシーに話をするのだった。
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