八条学園騒動記
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第二百四十九話 ナンシーの不覚その二
「あの世紀末救世主の漫画ね」
「ああ、あの胸に七つの傷がある」
この時代では新たなシリーズが展開しているだ。伝説的な古典漫画だ。
「あの漫画に出る。馬鹿でかい黒い馬ね」
「あの馬人踏み潰すじゃない」
「まあね。何百人も踏み殺してるけれど」
象位の大きさがある馬だ。時によっては怪獣位の大きさになる。その巨大さでだ。人を平気で踏み殺す恐ろしい馬なのである。
「あれと同じなのよ」
「モンゴルの馬って怖いわね」
「だから。草原は半端じゃないのよ」
それがモンゴルだというのだ。
「過酷な生活だからね」
「ううん、何か連合でもかなり危険な場所なのはわかるわ」
「だから女の子も自分の身は自分で守るの」
「変な奴は踏み潰してなのね」
「それで恐竜とか猛獣からは馬で走って逃げて」
そうした意味もあることだった。
「生きないといけないから」
「そういうのからもなの」
「だからモンゴルにはナイトはいないの」
女の子を守る男の子はだ。そもそもいる余地がないというのだ。
「だから。そういうのって見てるとね」
「どうなの?見てると」
「微笑ましいのよね」
ここでまたにこりとなるナンだった。
「いやいや、本当にね」
「そうなの。本当にいい子なのよ」
「ただ。何か」
その草原に生きる故の勘がだ。ナンに言わせた。
「今のナンシーとその子ってね」
「私達がどうしたの?」
「妙に仲がいい感じね」
その二人を見ての言葉である。
「まるで」
「まるでって。何よ」
「カップルみたいね」
こう言うのだった。悪気なくだ。
「そんな感じだけれど」
「そ、そんな筈ないじゃない」
それはだ。ナンシーは必死に否定するのだった。
顔を真っ赤にさせ狼狽する調子でだ。それで言うのだった。
「何でそうなるのよ」
「違うの?」
「違うわよ」
こう答えるナンシーだった。
「だから違うから」
「違うのね」
「ひょっとしてそう見えるとか?」
「見えるから言うんだけれど」
ナンはこう言うのだった。
「けれど違うのね」
「そうよ。ただの後輩だから」
それをまた言うナンシーだった。しかしだ。
ここでだ。彼女はこう言ってしまったのだった。
「ちょっとね」
「ちょっと?」
「一緒にいたい気持ちはあるけれど」
「あるのね」
「まあね。あるわ」
無意識のうちにだ。言ってしまった彼女だった。
「それはね。何ていうか」
「ッてことはやっぱりあれじゃないの?」
そこまで聞いてだ。ナンは言うのだった。
目をしばたかせながらだ。ナンシーに話す。
「彼氏になるんじゃないの?」
「だから何でそうなるのよ」
「だって今自分で言ったじゃない」
ナンの返答は冷静である。少なくとも意地悪な感じはない。ナンは意地悪な性格ではない。ただし野生児のせいか勘が鋭いのである。
その彼女がだ。ナンシーに言うのである。
「ほら、一緒にいたいって」
「しまった」
また言ってしまった彼女だった。
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