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八条学園騒動記

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第二百四十七話 大成功その二


 その二人にだ。また声をかける彰子であった。
「今日の舞台だけれどね」
「舞台よね」
「絶対に行くからね」
「来てね」
 彰子は満面の笑みで二人だけでなくクラス全員に話した。
「それで観てね」
「ええ、それはね」
「絶対に観させてもらうわ」
 コゼットとパレアナが皆を代表して答える。
「頑張ってね」
「いや、本当に」
「楽しみにしてね」
 彰子の調子は変わらない。相変わらず彼女だけはだ。
 明るい。にこやかな笑顔である。しかし皆はなのだった。
「折角あそこまで意気込んでるのになあ」
「残念だよな」
「ミスキャストでしかないから」
「それが残念」
 こう言い合ってだ。舞台が失敗することに暗澹としていた。しかし時間はそのまま進んでだ。遂に放課後、即ち上演時間となった。
 皆観客席に入る。そこでだった。
「はじまるけれど」
「何か新聞部も頭抱えてない?」
「抱えてるよな」
 見ればだ。ナンシーもいる。彼女も言うのであった。
「もう原稿決まってるから」
「失敗だよな」
「それなのね」
「そう、そうなるから」
 こう話すのだった。
「うちの新聞は明るい記事を書くようにしてるから」
「それが書けないからか」
「困るのね」
「書き方はあるわ」
 ただしだ。ナンシーはここでこんなことを言った。
「他のことを書くとかね」
「つまり彰子のことは書かないの?」
「そうするの」
「予想通りになればね」
 その予想がだ。的中すると確信しての言葉ではある。
「そうするわ」
「つまり要は書き方」
「そういうことなの」
「好意的な記事とか明るい記事、それも公平だったらいいじゃない」
 少なくともそうした記事を書くナンシーではある。これは二十世紀から二十一世紀の日本のマスコミを反面教師にしての行動でもある。
「少なくとも悪い記事は書かないから」
「さて、どうなるか」
「それよね」
 ナンシーの言葉にだ。パレアナとコゼットは言う。そうしてだった。
 開幕を待つ。その間だ。
 彰子と明香は二人の楽屋にいた。そこにおいてだ。
 二人でだ。それぞれの服を着て最後の打ち合わせをしていた。まずは彰子がだ。当時、十九世紀後半のオーストリアの少年の服でドレスの明香に尋ねる。
「外見はこれでもなのね」
「そう、心は女の子だから」
「そこを意識して演じるのね」
「そうするといいわ」
 こう姉に話すのである。
「ズデンカはそうなの」
「わかったわ。それじゃあ」
「あとはね」
 そしてだ。今度はだ。
 明香がだ。姉に言うのであった。
「アラベラだけれど」
「前にも言ったままよ」
「優しくて気品のある大人の女性ね」
「それを意識して」
 こう妹に答える彰子だった。
「それがアラベラなの」
「そうね。大人の女性ね」
「このことはしっかりとして」
 また話す彰子だった。 
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