八条学園騒動記
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第二百二十六話 アイヌ料理その九
「だからだよ。日本への見方はな」
「歪か」
「じゃあ聞くがまともに見えるか?」
「いいや」
カムイも彼の言葉に首を横に振って述べる。
「全くな」
「そうだろ。そういうことだよ」
「それでか」
「ああ、それでだよ」
また話す洪童だった。
「俺だってな。日本に来るまではな」
「歪だったんだな」
「とにかく日本、日本、日本だった」
口を開けば日本だった。それがかつての彼だったのである。
「日本に負けてたまるか、勝ってみせるってな」
「そればかり考えてか」
「ああ、何もかもやって来たんだよ」
「で、何で八条高校に来たんだ?」
「その日本に来たくなってな」
それでだというのだ。この時代の連合では他の国の学校に通うことも普通である。連合のどの学校を卒業しても共通の卒業証明や学士、それに職業資格が手に入るのである。
「それでだったんだよ」
「で、日本に来てどうだった?」
「まあよかったな」
こう答える洪童だった。
「いい国だな」
「そうだろ。日本はいい国なんだよ」
カムイも笑顔で日本について話す。
「それは知ってたさ」
「交流が深いからだよな」
「何につけてもそれだな」
「だから料理もか」
「本当に味噌とか普通に使ってるんだよ」
その日本の調味料をというのである。
「だからそれがアイヌのじゃないって聞いてな」
「驚いたか」
「ああ、信じられなかった」
そこまでなのだった。
「いや、本当にな」
「まあ韓国でも味噌とか醤油はな」
「普通に使うか」
「昔はそれは韓国起源って言ってたさ」
「そんなこともあったんだな」
「何でもかんでもだったんだよ」
洪童はこう話す。
「剣道も柔道も相撲もな」
「どれも日本のものじゃないのか?」
カムイも突っ込みを入れる。
「それってよ」
「ああ、そうさ」
「そうだよな。それが全部か」
「そうだよ。全部起源って言ってたんだよ」
「韓国に起源があるってか」
「結構おかしな話だろ」
洪童は自分から話した。
「これってな」
「そうだな。確かにおかしな話だな」
「昔の御先祖様のこの考えがな」
「わからないか」
「ああ、理解できないな」
実際にそうだというのであった。
「あれだろ。何でも自分達で創り出せばいいじゃないか」
「クリエイトだな」
「連合ってそうだろ。クリエイトだろ」
「それが一番いいってな」
「子供の頃からずっと言われてたさ」
連合では創造性が尊ばれるのだ。確かに過去は重要であるがそれ以上になのだ。創造性がとにかく重視されているのである。
それでなのだった。今彼も言うのであった。
「だからな。起源なんてな」
「自分達でそれを創り出せばな」
「できるだろ。例えばな」
「ああ。例えば?」
「ほら、韓国料理のあの激辛鍋」
仇名だが殆どそう呼ばれているのである。
「あれだってそうだろ」
「あれな。辛いけれど確かにな」
「美味いだろ。羊に野菜もたっぷりと入れてな」
「おまけに内臓も入れるしな」
「内臓がいいんだよ」
洪童は話の波に乗ってきた。それでにこにこと笑って話すのだった。
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