八条学園騒動記
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第二百二十話 また鉢合わせてその九
「ロボはね。他にも何頭もいるけれど」
「狼を番に使うって」
後輩は学生のその説明を聞いてだ。腕を組んで考える顔になった。
そうしてそのうでだ。こう言うのだった。
「危なくないですか?」
「だって犬と同じじゃない」
「犬とって」
「犬は狼からなったものなんだよ」
話すのはこのことだった。
「豚が猪からなったのと同じでね」
「それと同じなんですか」
「そうだよ。狼っていうのは実際は人を襲わないんだ」
これはよく言われていることである。だから人に懐いてそれで犬になっていったのだ。決して凶暴な生き物ではないのである。
「それにちゃんと御飯をあげていればね」
「番もするようになるんですか」
「そうだよ。だからあのロボもね」
「番をしているんですね」
「そういうこと。狼はいい生き物だよ」
学生はにこりと笑って話した。
「特にニホンオオカミはいいね」
「ニホンオオカミって」
「あの森にいる狼ですよね」
「そうだよ。この農学部にもいるよ」
その狼がいるというのである。
「やっぱり番狼でね」
「番狼で、ですか」
「ここに」
「よかったら見てみるかな」
学生は二人にこう言ってきた。
「ニホンオオカミね」
「どうしようかしら」
ナンシーはその申し出を聞いて後輩に顔を向けた。そしてそのうえで彼に問うのだった。
「見てみる?」
「折角だしそうしてみます?」
後輩はこう彼女に返した。
「ここは」
「そうするのね」
「何か面白そうですし」
だからだというのだった。
「ニホンオオカミって普通の狼とは少し違うらしいし」
「森にいるのよね、本来は」
「ええ。それって珍しいのよね」
「うん、そうだよ」
学生が二人に話してきた。どうやらニホンオオカミについて詳しいらしい。
「狼って本来は平原とかにいるよね」
「はい」
「そうですよね」
「けれどニホンオオカミは違うからね」
学生はまた話した。
「だからね」
「チャンスよね」
「はい」
二人共言う。
「その珍しい狼を見る」
「ええ、確かに」
「だったらね。ここは」
「そうしましょう」
こう二人で言ってであった。あらためてその大学生に顔を向けてだ。言うのだった。
「御願いします」
「そのニホンオオカミに会わせて下さい」
「うん、いいよ」
大学生は快く承諾してくれた。彼が誘ったにしてもだ。
そうして二人はその場所に案内されるのだった。ニホンオオカミがいるその場所に。
また鉢合わせで 完
2010・9・30
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