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八条学園騒動記

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第二百二十話 また鉢合わせてその六


「大体な」
「わかるか」
「ああ、わかる」
 また言ったのだった。
「バッテリーだからな」
「そうか。そうだな」
「だからノーサインでもいける。やるぞ」
「わかった。それじゃあな」
 こうして二人で実際にノーサインで練習をするのだった。フランツはどの変化球も見事に投げる。そしてタムタムはそのボールを全て受けた。
 ナンシーはだ。相変わらずだった。
 逃げ回りそしてだ。安全と見た場所で変装を外した。
 元の姿に戻ってだ。そして言うのだった。
「やれやれね」
「大変でしたね」
「そうよ、大変だったわ」
 ほっとした息と共の言葉だった。
「全く。デートも大変ね」
「学校の中では、ですよね」
「ううん、考えてみれば外もね」
「外もですか」
「そうよ、外もね」
 学校の外もだというのだ。その話をするのだった。
「クラスの皆が何かといるから」
「だからですか」
「本当にデートも大変だわ」
 ナンシーはまた言った。やれやれ、といった口調である。
「楽しいけれどそれでもね」
「止めはしないですよね」
「まさか」
 このことへの返答はすぐだった。
「そんな訳ないじゃない」
「やっぱりそうですよね」
「止める位ならね」
「はい」
「最初からしないわ」
 そうだというのだった。
「絶対にね。そういうものよ」
「それじゃあまだ続けますよね」
「勿論よ。けれど」
「けれど?」
「ここは何処かしら」  
 ふと気付いて周りを見回す。そこは校舎の中だった。白いコンクリートの壁にワックスで奇麗にされた床、天井も白い、まさに学校の校舎だった。
 その中にいる事に気付いてだ。後輩に尋ねたのである。
「高等部?そこかしら」
「いえ、確かですね」
「違うの」
「ここ、大学ですよ」
 こうナンシーに話すのだった。
「確か」
「えっ、八条大学なの」
「農学部ですね」
 このことも話してきた彼だった。
「そこですね」
「また何で農学部なんかに来たのかしら」
「だって先輩が」
「私が?」
「とにかく無闇やたらに何処かに行くから」
「それでここに来たのね」
 ナンシーも後輩の説明で事情を理解した。
「そういうことなのね」
「そうです。それでなんですけれど」
「ええ」
「これからどうします?」
 至って冷静にナンシーに問うた。
「それで」
「ええと」
 こう問われてだ。まずは考えるナンシーだった。
 そのうえでだ。こう言ったのであった。
「農学部よね」
「はい」
「じゃあ動物いるわよね」
 こう言うのだった。 
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