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八条学園騒動記

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第二百二十話 また鉢合わせてその四


「先輩がそう言われるなら」
「有り難う。じゃあね」
「はい。けれどフランツ先輩って」
「知ってるわよね」
「ええ、有名な人ですから」
 野球選手としてだけでなくその行動でも有名だったりする。二年S1組の中でもだ。かなり有名人の部類に入っているのである。それがフランツだ。
「新聞部の中でも有名ですしね」
「身体と勘はいいのよ」
「その二つはですか」
「ないのは頭よ」
 こうも言うナンシーだった。
「それよ」
「それですか」
「そういう子なのよね」
 ナンシーは変装をしながらも腕を組んで困ったものを見せていた。
「実はね」
「じゃあここは」
「立ち去るわ」
 また言うナンシーだった。
「いいわね」
「それに何処に行きますか?」
「ええと」
 言われるとだった。困った声をあげるナンシーだった。
「どうしようかしら」
「どうしよう、ですか」
「何処に行こうかしら」
 実はそこまでまだ考えていないのだった。
「それじゃあ」
「とりあえずここは去るんですね」
「ええ」
 このことだけは決まっていた。その他のことは一切決まっていない。しかし本当にこのことだけはだ。ナンシーは決めているのだった。
 そのうえでだ。さらに話すのだった。
「行きましょう」
「わかりました」
「何処かにね」
 こう言って後輩を急かしてだった。何処かに行く。
 そしてである。フランツはだ。
 ピッチング練習をしながら。相手であるタムタムに話した。
「おい」
「どうした?」
「ナンシーがいたぞ」
 こう言うのだった。
「あそこにな」
「あそこ?」
「ああ、あそこにいたんだ」
 彼女がいたそこを指差しての言葉だ。
「あそこにな」
「いないぞ」
「だからいたんだよ」
 そうだったというのである。
「今さっきな」
「そうだったのか」
「見えないか?あそこが」
「見るには視力が五ないと駄目だな」
 タムタムの言うこともナンシーと同じだった。
「やっぱりな」
「そうなのか」
「ああ、無理だ」 
 そしてだ。タムタムはこうフランツに話した。
「御前かナンでなければだ」
「そこまでか」
「しかし。何でいたんだ?」
「それはわからないがな」
「誰か一緒にいたのか?」
「そこまでは見ていない」
 投げながら話すフランツだった。凄まじいノビを見せるボールがタムタムのミットに突き刺さる。快速球と言っていいものだった。
「だが。ナンシーは確かにいた」
「そうなのか」
「あいつもあいつで忙しいみたいだな」
 そしてだ。ここからがフランツであった。 
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