八条学園騒動記
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第二百十六話 ジャパネスクその二
「この場面で軍人出て来たか?」
「しかもあの軍服は」
ダンが言う。
「あれはこの前までの日本軍の軍服じゃないのか?」
「そうだよな。あれはな」
「ああ、この時代の軍服じゃないだろ」
また話す彼等だった。
「それはいいのか?」
「違う筈だけれどな」
「それは大した問題ではありません」
指摘されても全く動じないラメダスだった。
「全くです」
「あの、この時代って滅茶苦茶前ですよ」
「千年単位でなんですけれど」
「それで大した問題じゃないんですか?」
「しかも全く」
「はい、全くです」
ラメダスだけが動じていない。
「千年なぞ。神の時間では」
「あの、それを言ったら」
「もうとんでもないんですけれど」
「人がほんの十回輪廻転生する位の時間ではありませんか」
造作もなく言った言葉である。
「それで大した問題なのでしょうか」
「ええと、人が十回ってだけでも」
「壮絶なんですけれど」
「何て言いますか」
皆流石に今の言葉には唖然となった。ここでもだ。
「ですから。人間の単位で時間を考えると」
「連合の時間ではですけれど」
「もう千年単位っていったら気が遠くなりますから」
「マウリアじゃそうじゃなくてもです」
「文化の相違ですね」
ラメダスはたった一言で片付けてしまった。
「これこそが」
「この人本気だしなあ」
「しかも天然じゃないし」
これもまた問題であった。
「マウリアの本気は連合じゃ天然という限度を超えてるっていうけれど」
「ここまで至るともう何か」
「異次元っていうか異世界っていうか」
「実際に僕達今は異次元空間にいるけれど」
「それでも」
こうした話もする。そのうえでまた映画を観る。すると今度はである。源平の争いの頃の鎧兜と来た侍達と僧兵達、そして忍者達が一度に出て来た。何処からともなくだ。
そしてである。またしても主人公、ヒロイン達と踊る。何の脈絡もなくだ。
皆流石にもう覚悟を決めていた。それでもセーラ達に対して問うた。
「これもジャパネスク?」
「日本風?」
「そうなの?」
「はい、日本です」
今度はベッキーが答える。堂々と胸を張って。
「侍と忍者だけではありません。これこそがです」
「ああ、僧兵ね」
「それもなのね」
「そういうことなんだ」
皆僧兵の存在から一応それはわかった。とはいっても納得したわけではない。
「それで三つ同時に踊ってるんだ」
「侍と僧兵と忍者が」
「絶対に日本じゃない氷山のど真ん中で」
「成程」
「奇麗な氷山ですね」
ベッキーはこれだけで済ませる。
「日本にもこうした場所はありますし」
「地球にはないぞ」
ダンが突っ込みを入れた。
「地球の日本にはないぞ」
「ですが今は氷山がある惑星も多いですよね」
「しかし地球の日本にはない」
ダンはこのことをあくまで言う。
「絶対にだ」
「そうなのですか。それはまた」
「いや、それはまたじゃなくてだ」
ダンは諦めずに突っ込みを入れる。
「豊穣の海の舞台は地球なんだが」
「撮影はマウリアですから」
「だから地球なんだが」
話は見事なまでに噛み合っていない。
「何と言うべきなんだ」
「また大した問題じゃないって言うのは目に見えてるし」
「マウリアの人だしね」
「もうお決まりのパターンよね」
皆も既にわかっていた。
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