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八条学園騒動記

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第二百十四話 カレーと酒その九


「それだけです」
「それだけで四百億年も過ごす」
「他の国の神話にはないけれど」
「いや、仏教にはあるぞ」
 フックが話す。タイはこの時代でも仏教国である。国王も仏教徒でなければならないとされている。それと同時に全ての宗教を守らなければならないともされている。
「それだけのスケールがな」
「けれど仏教だってあれじゃない」
 七海がそのフックに突っ込みを入れた。
「マウリアが起源じゃない」
「そうなんだよな」
 フックもこのことはよく知っていた。
「マウリアだからな」
「そうよね、やっぱり」
「だから必然的に時間のスケールがとてつもない」
「そういうことか」
 皆ここで納得したのだった。
「マウリアだからか」
「それでスケールが巨大になる」
「つまりは」
「それでなのです」
 セーラがここでまた急に話に入ってきた。
「二千年はです。些細なことです」
「確かに四百億年と比べたら二千年なんてね」
「ほんの一時」
「瞬きするようなものだけれど」
 皆この時間の概念は納得できたのだった。
「けれど。それでも人間だとね」
「二千年はとんでもない時間だし」
「それだけの時間の間で作る時代劇って」
「どんなのかしら」
「しかもだよね」
 ネロがまた突っ込みを入れた、
「その時代劇も踊るんだよね」
「はい、絶対に踊ります」
 その通りだと答えるセーラだった。
「一話に一回は必ずです」
「銃撃やちゃんばらの間に踊る?」
「無茶苦茶凄いけれど」
「それか話し合いの時に?」
「踊るとか」
 実際にマウリア映画やドラマではだ。ここぞというクライマックスの時に踊るのである。それが見所の一つでもあるのである。
「カオスな」
「何ていうか」
 皆また首を捻る。
「それがドラマなのかな」
「いや、これこそがマウリアドラマ?」
「そうなる?」
 こんなことも話すのだった。
「むしろそれこそが」
「踊りあってこそ」
「そうであってこそのマウリア映画」
「そういうことなのね」
「それでなのですが」
 ここでセーラの言葉がいつも通り出て来た。
「映画もあります」
「何か流れるような展開」
「本当に」
 皆このあまりにもセーラの意のままではないかと思える展開に次第に気付いてきた。そうしてふと思いながらそのうえで話をするのだった。
「けれどマウリア映画も面白いし」
「観ようか」
「そうね」
 観ることは観るのだった。
「それでどんな映画なのかな」
「恋愛?コメディー?アクション?」
「それとも戦争?」
「ホラーとか?それかファンタジー?」
「全部あります」
 セーラの返答はこうしたものだった。
「そうしたものは全部です」
「えっ!?」
「全部って!?」
「どういうこと?」
 皆その言葉にはいつも通り面食らってしまった。やはりセーラの話は一回聞いただけではすぐにはわからないものであった。まさに異次元だからだ。
「全部っていったら」
「全部のジャンルが入ってる?」
「そういうこと?」
「学園を舞台にした王子様とお姫様の叶わぬ愛を叶えようとするロマンスものです」
 一応はそうなのだというのだ。
「そこに二人を邪魔する冥界からの使者がいまして」
「それがホラーにファンタジーの要素」
「そういうこと?」
 皆セーラの説明を聞きながらまずはこう考えた。
「つまりは」
「そうなのかしら」
「そしてです。冥界の邪神が大軍を率いて学園に攻めてきまして」
 今度はこうなるというのである。
「そこで王子と王女は手に手を取って戦います」
「ああ、それが戦争」
「そうなのね、つまりは」
「そうよね」
 皆とりあえずまた納得はした。
「何か凄いカオスだけれど」
「マウリア映画らしくて」
「本当に」
 マウリア映画の連合での認識はまさにカオスであった。とにかく何でも入っていて訳がわからないというイメージが強いのである。
「まあとにかく観ようか」
「そうだよね。観ないとわからないし」
「それじゃあね」
「はじまりです」 
 映像が出て来た。立体映像である。
 皆それを観る。今度は映画なのであった。


カレーと酒   完


              2010・8・14 
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