八条学園騒動記
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第二百九話 凶悪な猿その三
「このバスはね」
「ジャンプもできるんですか、このバス」
「それもかなり高いですけれど」
「何と」
「アマゾンは何があるかわからないからね」
こうも言うガイドさんだった。
「だから余計にね」
「それでなんですか」
「こうしてジャンプもする」
「そうだったんですね」
「如何にも」
心なしか言葉が誇らしげだった。
「いざという時の切り札だよ」
「そして切り札を今切った」
「そうだったんですか」
「さて、これで」
バスは恐竜の頭上を飛び越えていた。そして着地する。
後ろにいる恐竜はまだ後ろを振り向いていなかった。レミがそれを見て言う。
「ああ、恐竜って反応は鈍かったわね」
「脳味噌小さいんだっけ」
「そうだったわよね」
「はい、恐竜は確かに身体は大きいです」
ここでまた話すガイドさんだった。
「けれど脳味噌はそれ程大きくはありません」
「だから反応は遅い」
「そうなんですね」
「その通りです。爬虫類ですから」
恐竜もまた爬虫類である。このことがここでは大きかった。
「頭はあまりよくありませんので」
「じゃあそれを利用すれば」
「そんなに怖くないんですね」
「利用しなければ怖いですよ」
ガイドさんはこのことは釘を刺した。
「大きくてとても凶暴ですから」
「はい、それはよくわかります」
「とても」
このことは言うまでもなかった。
「あの爪とか牙を見ても」
「尻尾までありますし」
「このバスも何度も噛まれてるしね」
今度は運転手さんの話である。
「いや、大変だったよ」
「やっぱり怖いんですね」
「頭が悪くても」
「ですからいざという時のジャンプなんですよ」
ガイドさんの説明である。
「本当に」
「水陸両用だけじゃなくてジャンプもできる」
「凄いバスだよなあ」
「確かに」
皆このことに唸る。
「そんなバスを用意するっていうのも」
「アマゾン自体もかなりよね」
「確かに」
そしてであった。その恐竜は今度はだ。
密林の中に入って来た。そうしてだった。
「あれっ、あの方向って」
「そうよね」
「さっき銃撃があった場所だけれど」
「そっちに行くの」
「そうだよな」
そしてであった。そちらでも騒ぎが起こるのだった。
「今度は恐竜か」
「ティラノサウルスですね」
「それが来ましたか」
軍人達がまた言う。自分達の前に出て来た恐竜を見上げてだ。
「それでどうします?この連中は」
「やっつけるしかないですよね、やっぱり」
「そうですよね」
「当然だ」
大佐もそれに頷く。
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