八条学園騒動記
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第二百七話 サハラ義勇軍特殊部隊その四
「そして腫れ上がってそこからですね」
「寄生虫の瘤とかですか」
「そういうのですか」
「はい、幼虫がそこで孵化してです」
身体の中でだというのだ。
「手を食い破ってして出て来ますから」
「うわあ・・・・・・」
「リアルで危険なんですね」
「そういう世界なんですね」
「ですから虫にも注意して下さい」
注意ばかりであった。
「冗談抜きに死にますから」
「世紀末救世主もびっくりですね」
「恐ろしい場所で訓練してますね」
「義勇軍ですから」
だからだというのである。
「こうした場所でもです」
「義勇軍って何か」
「凄いんですね」
「こんな場所で訓練なんて」
「連合軍そんなことしないのに」
ここで言う連合軍とは正規軍のことである。連合市民によって構成される軍でありその規律はかなり厳しいが訓練は甘くあくまで規律とみだしなみだけの軍であるとされている。
「義勇軍は違うんですね」
「無茶しますね」
「命は惜しくないんですか」
「義勇軍ですから」
ガイドさんの義勇軍への説明はこれに尽きた。
「私達は止めてますよ」
「それでもなんですね」
「あえて中に入って」
「それで訓練を」
「命の保障はありません」
ガイドさんの言葉は何時になく怖い。
「けれど義勇軍の人達は中に入ってです」
「訓練ですか」
「そうしてですね」
「今のところ死んだ人はいません
今はだというのだ。
「しかしこれからはわかりません」
「つまり何時死んでもおかしくない」
「そういうことですね」
「ここは地獄ですから」
緑の地獄だというのである。
「何があってもおかしくはありませんから」
「人口でぺろりとか」
「それも有り得ますよね」
「あと踏み潰されたりとか」
「あらゆるケースが考えられます」
あまりよくない意味で、ということである。不幸にしてだ。
「ですから私達は止めます」
「しかしそれでもですか」
「義勇軍は訓練するんですね」
「人外魔境での訓練を」
「義勇軍って二十四時間常に戦闘態勢って聞いたけれど」
ネロがふと考えながら述べた。
「そのせいかな」
「常に戦闘態勢っていったら」
「海兵隊?」
「アメリカ海兵隊?昔の」
「それっぽいよね」
皆かつてアメリカに存在したその軍隊の話もする。
「義勇軍って」
「そういえば」
「ただ、軍律それ以上みたいだけれど」
「連合軍よりずっと厳しいとか?」
「それ有り得なくない?」
連合軍の軍規軍律はかなり厳しい。これだけは徹底せよと八条が言っているからだ。彼は国防長官として軍規軍律は強く意識しているのだ。
「日本軍並だって」
「うわ、それはまた」
「えぐい」
「あんまりよね」
「そこまでいったら」
日本軍の軍規軍律の厳格さは二十世紀から銀河の時代になってもだ。健在であった。尚これはこの時代の日本軍ではない。第二次世界大戦中の頃の日本軍だ。
「鬼の如き軍律なんだ」
「命令には絶対服従」
「軍律違反は死刑」
その域まで達していたのはある意味において事実である。
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