八条学園騒動記
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第二百六話 水の中でもその四
「広いですからかなり多くの生き物がいます」
「それあの鯨もですか」
「巨大烏賊も」
彼等は今も死闘を繰り広げていた。海の死闘に見得る。
「いるんですね」
「ああして」
「そういうことです、ここは特別ですから」
ガイドさんはまた話す。
「動物園と水族館の中でも」
「ううん、何か水底にですね」
「物凄いものも見えますし」
見ればだ。今水底に途方もない大きさの生き物がいた。それは。
ペリーヌはそれを見てだ。いぶかしむ顔でガイドさんに尋ねた。
「あの」
「はい?」
「水底に何か見えますけれど」
それを指し示しての言葉だった。
「あれは何ですか?」
「あれは鯰ですね」
ガイドさんはすぐに答えた。
「それです」
「鯰ですか」
「はい、鯰です」
またペリーヌに話してきた。
「それです」
「あれは鯰なんですか」
「巨大鯰ですね」
見ればだ。十メートルはあった。そのアマゾンにいるという人食い鯰である。
「あれは」
「そういえばそんな顔してるよな」
「確かにね」
「あれは」
皆それを見てだ。また話す。
「確かに鯰だし」
「間違いなく」
「大きいだけで」
「普段はああして底の方にいます」
ここでも説明するガイドさんだった。自分の仕事に忠実であると言える。
「ですがお腹が空くとです」
「上の方にあがって」
「それで食べるんですね」
「小舟なんか一口ですよ」
何故かにこりと笑って話すガイドさんだった。
「もう本当に」
「それってまずいんじゃ」
「あの、一口ですか」
「本当に」
「はい、一口です」
やはりにこりと笑って話す。
「鯰一口です」
「ブラジルの言葉ね」
レミがすぐに言ってきた。
「それって」
「はい、そうですね」
ガイドさんもレミのその言葉に頷いてみせる。
「これは」
「鯰一口って」
「それってどういう意味?」
「ブラジルの諺でね」
諺であるとだ。そこから話すレミだった。
「大物は小物をあっさりと退けられるってことなのよ」
「鯰が食べるみたいに」
「そういう感じなのね」
それを聞いてわかった皆だった。実にわかりやすかった。
「ううん、小物かあ」
「この場合は小舟と」
「そこに乗っている人になるのね」
「だから人食い鯰なんですよ」
やはりガイドさんの口調は楽しそうである。
「時々イルカを丸ごとってこともありますし」
「イルカもですか」
「丸ごと」
「口が大きいからあっさりと入ります」
こう皆に話す。
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