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八条学園騒動記

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第二百五話 緑の地獄その二


「表の三倍はあったかと」
「表の三倍って」
「どういう国なのよ、マウリアって」
「本当に」
「二十世紀では納税者は全人口の一パーセントでした」
 これは恐ろしいことに事実であったらしい。
「また一説では今の全人口は三千億とも」
「プラスマイナス一千億!?」
「何それ」
「ですから連合に来て驚きました」
 セーラ自身の言葉である。
「ちゃんとした人口統計やGNPがありますから」
「普通に人類社会一の大国なのに」
「まだそんな力があるって」
「マウリアって」
 皆マウリアのその底知れぬものを知り唖然となっていた。
「恐ろしい、マウリア」
「っていうか国自体がジャングル!?」
「そんな国?」
「マウリアはいい国ですよ」
 しかしセーラは言うのであった。
「本当に」
「いい国かも知れないけれど」
「カオスっていうか」
「牛多いし」
「あれもね」
「牛は神の使いですから」
 セーラはこのこともにこりと笑って述べた。
「大切にしないといけません」
「水牛はいいの?」
 レミは水牛について尋ねた。
「そっちは」
「水牛が何か?」
「いや、セーラって水牛は普通に食べてるから」
 それで言うのであった。
「ですから。それは食べていいのです」
「えっ、いいの」
「水牛はいいの」
「はい、いいのです」
 平然と答えさえしていた。
「一行に」
「どういうことかな、それって」
「さあ」
 誰にもわからない論理だった。
「何が何だか」
「牛と水牛って同じものじゃ」
「そうよね、どう考えても」
「これは」
 皆こう考える。しかしであった。 
 セーラは普通にだ。こう言うのである。
「牛と水牛は別の生き物です。何故なら」
「何故なら?」
「名前が違います」
 こう来た。
「それに角の大きさが違います。ですから水牛は牛とは違います」
「え、ええと!?」
「どういう論理!?それって」
「意味わからないけれど」
 誰もが呆然となってしまっていた。
「牛と水牛ってね」
「水牛のチーズだってあるし」
「そうそう」
 所謂モツァレラチーズである。この時代でも独特の歯ざわりと食感が人気である。
「あれだってあるし」
「牛なんじゃ」
「牛は神の使いです」
 これはマウリアでは非常によく言われていることである。若し牛を交通事故でも死なせてしまったならば。この時代ではエアカーや動物や虫が避ける様な匂いを放つ塗料を含んでいるアスファルトが使われていてそうしたことは殆どないとしてもだ。
 何と人間に対するのと同じ刑罰が科せられる。それがマウリアなのだ。
「ですから食べることは絶対に許されません」
「しかし水牛はいい」
「ううん、謎だ」
「そうよね」
「まあその水牛だけれど」
 ここでレミがまた言ってきた。 
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