八条学園騒動記
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第二百三話 ヨーグルトの食べ方その五
「今は違うからな」
「そういうことだよね」
「それでだ」
ルシエンはここで話を変えてきた。
「ナンもヨーグルト食べるんだよな」
「ああ、それは当然よね」
アンネットが彼の言葉に頷く。
「っていうかさっき話してたことじゃない」
「それもそうか」
「そうよ。ヨーグルトね」
そのヨーグルトの話をまたはじめる。
「それね」
「あいつはどうやって食べるかだな」
「モンゴル人にとっては主食だったっけ」
セドリックはこのことを指摘した。
「羊肉と並んでね」
「結構凄い食事ではあるわよね」
アンネットは乳製品と羊肉が主食というモンゴル人の食文化について述べた。
「それも」
「そうだよね。かなりね」
セドリックもアンネットの言葉に頷く。
「それに精悍な感じだしね」
「そうなのよね。そのモンゴル式のヨーグルトの食べ方だけれど」
「どんな感じだろうな」
今のはルシエンの言葉だ。
「それで」
「見てみる?」
セドリックはこう提案した。
「ナンのその食べ方」
「そうね。そういえば」
「そういえば?」
「モンゴル人ってお肉焼かないし」
それはないと言うアンネットだった。
「煮るだけだし」
「ああ、そういえばそうだな」
「そうだったね」
ルシエンとセドリックはアンネットのその指摘に頷いた。
「あいつに御馳走してもらった時いつも肉は煮ていたな」
「絶対に焼かなかったよね」
「モンゴルでは昔からそうらしいのよ」
こう二人に話す。
「お肉は焼かないで煮るのよ。それにナンはね」
「ずっと遊牧で生きてきたからな」
「昔ながらの生活でね」
「代々昔ながらの遊牧生活だからか」
「お肉は焼かないんだ」
「そういうことになるわ」
また話すアンネットだった。
「チンギス=ハーンの時代に決められたことらしいけれど」
「二千年以上の決まりをまだ守っているのか」
「それも凄いね」
「昔は何もない生活だったらしいわ」
その二千年以上前のモンゴル人の生活である。
「流石に今はノートパソコンや携帯テレビや折り畳み式のお風呂とか洗濯機はあるけれど」
「それでもか」
「基本はお肉は焼かないんだね」
「煮る方が燃料使わないしそれに煮た後のお汁も飲めるかららしいわ」
「ああ、それもあったのか」
「そうだったんだ」
二人は言われてこのことに気付いた。
「燃料と後の汁か」
「その関係だったんだ」
「モンゴルの自然って過酷だったらしいからね」
この辺りにまさにモンゴル人の事情が出ていた。
「それで羊はそうして食べて後は乳製品ね」
「何か随分と過酷な生活だな」
「そうだね」
二人はアンネットの説明からあらためてこのことを認識した。
「今でこそ色々な文明の利器があるにしても」
「昔は本当に凄かったんだね」
「その彼女だけれど。ヨーグルトには五月蝿いでしょうね」
「主食の一つだからだな」
「余計に」
「そうなるわね。さて」
アンネットはここで顔をあげた。そうしてだった。
「そのナンだけれど」
「ああ」
「何処かな」
「いないわね」
探してみればそうなのだった。
「何処に行ったのかしら」
「昼まではいたけれどな」
「さっきまではね」
「それでも今はいないわね」
「何処に行ったんだ?」
ルシエンは怪訝な顔で彼女を探す。
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