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八条学園騒動記

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第百九十六話 豚肉は駄目その四


「それは」
「刀削麺か」
「ええ、それ」
 まさにそれだというのだ。
「それでどうかしら」
「そうだね。じゃあそれでね」
「焼き豚はそのままで」
 それはそのままだという。
「青梗菜は変わるけれどね」
「じゃあ野菜は何に?」
「八宝菜にしようかしら」
 首を捻っての言葉だった。
「今お野菜余ってるし」
「そう。だったらそれでね」
「お野菜とシーフードが余ってるし」
「あと豚肉もだよね」
「それもあるし」
 豚肉も余っていたのだった。
「だからね」
「そうそう」
「お兄ちゃん豚肉好きよね」
 蝉玉はふと兄に話した。実際に彼は豚肉が好きである。
「それもかなり」
「中国人にとって豚肉はもう切っても切れないものだろう?」
「まあそれはね」
「だからだよ。それは御前だって同じじゃないか」
「そうだけれどね。ただ」
 しかしここでこうも言うのだった。
「お兄ちゃん豚肉が食べられなかったら困るよね」
「中華料理が成り立たないよ」
「そうよね。じゃあイスラム教徒には」
「今は食べられるけれどそれでもなりたくはないね」
 そうだというのだった。
「豚肉についてあれこれ決まりがあったら」
「そうよね。やっぱりそうよね」
「当たり前だろ?それは御前もだろ?」
「私も豚肉がないとちょっとね」
 それは彼女自身もだった。どうしてもである。
「駄目だから」
「豚肉はソウルフードじゃないか」
 公明はこうまで言った。
「中国人にとっては」
「それこそ何千年も前から」
「そう、何千年もね」
 妹への話は続く。
「イスラム教ができる前から」
「そうよね。じゃあ明日も白湯スープで」
 まずはそれがあった。
「刀削麺で」
「それと八宝菜だね」
「それでいいわよね」
「充分だよ。じゃあ明日は僕が作るよ」
「兄さんがなの」
「刀削麺は無理だけれどね。八宝菜はね」
 彼は刀削麺は作れない。あくまで蝉玉だけの特技である。この時代でもこの麺を作られるということはかなりの特技なのである。
「作らせてもらうよ」
「じゃあ明日は兄妹協同ってことね」
「そうだね。しかし豚肉なら」
 豚肉の話はまだ続くのだった。
「あれだね」
「あれって?」
「アメリカ人もかなり食べるね」
 彼等についての話にもなったのだ。
「そうよね。スターリングも」
「御前の彼氏か」
「ええ・・・・・・って知ってたの?」
 兄の今の言葉にすぐ返す。
「ひょっとして」
「ああ、知ってたよ」
 公明は微笑んで妹に言葉を返した。
「っていうか何かあったら電話してるだろ?」
「うっ、確かに」
「それだったらわかるよ。彼氏がいるのはさ」
「そうだったの」
「スターリングっていったら確か」
「そう、スターリング=マクレーンよ」 
 その名前は自分から話した。 
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