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八条学園騒動記

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第二十八話 素直じゃないのかそれともその二


「じゃあ話してみたらいいよ」
「そうだね。思い立ったが吉日だし」
「そうだな。しかし」
「どうしたの?」
 セドリックがまた彼に問う。すると彼はそれに答えてきた。
「いや、ビアンカの他にも話してみようかなと思ったクラスメイトがいないわけじゃなかったが」
「それでもさ」
 ここでマルコは言ってきた。
「間違ってもテンボやジャッキーに相談したら駄目だよ」
「同感」
 セドリックも同じ考えであった。この二人は何でも推理に結び付ける頭脳を持っている。そのうえ導き出す推理は完全に的外れなのである。そうした意味で天才探偵二人であった。天災と書くべきかも知れないが。
「あとカムイとか洪童にも」
「その二人は駄目なのか」
 ギルバートはセドリックの言葉に顔を上げる。
「どうしてまた」
「どうしてって」
 マルコはその言葉にかえって顔を顰めさせた。
「ギルバート、わからない?」
「わからない。どういうことなんだ」
 本当にわからないようであった。マルコもセドリックもそんな彼を見て心から驚くしかなかった。驚きをそのままに言うのであった。
「だからさ、もてないからだよ」
 セドリックは言う。
「あの二人は」
「そうなのか」
「そうなのかって、ギルバート」
 マルコはまた述べる。
「見てわからない?」
「あの二人は」
「いや、全然」
 これは彼の観察不足かそれともそうしたことに興味がないのか。とにかく彼は洪童やカムイのことに全然気付いていなかったのである。どうやら他のことには気付くがそうした男女関係等にはかなり鈍感な人間であるようである。
「そう。じゃあ言うね」
 マルコが言うことになった。
「もてないからだよ、あの二人は」
「そうだったのか」
「そういうこと。カムイなんかそれで怪しげなことばかりしてるし」
 彼は述べる。
「だからだよ。そういう話はあの二人には絶対駄目なんだよ」
「わかった?」
「ああ、何となくだが」
 セドリックにも述べる。
「そういうことならな」
「とにかく気をつけて」
 セドリックはそうギルバートに忠告する。
「あの二人はそのことになるとやけにナイーブになるから」
「わかった。じゃあそうする」
「うん。それでさ」
 セドリックは話を戻してきた。
「ビアンカに相談してみるんだね」
「そうしようと思う」
 ギルバートはまた答えた。その考えにぶれはなかった。
「どう思う?」
「いいと思うよ」
「結論から言えばね」
 セドリックもマルコも一応は太鼓判を押してきた。何かマルコの言い方は引っ掛かるものがあったが。
「じゃあそういうことだね」
「うん、まずはな」
 ギルバートは頷く。
「それで行く。じゃあ今日は有り難う」
「うん。けれどさ」
「何だ?」
 また二人に顔を向ける。
「アンのこと、本当にわからないの?」
「一応聞くけれど」
「こちらが知りたい位だ」
 また二人に答えた。
「どうしてなのか」
「そう。だったらいいけれど」
 実は二人はわかっているようである。しかし言わなかった。
「じゃあビアンカと話してみて」
「わかった」
「けれどさ」
 しかしまた二人は言う。やはり思わせぶりな様子であった。
「僕達と同じこと言うかも知れないけれど」
「そうなのか」
「まあね。ひょっとしたら」
「ひょっとしたらだけれど」
 二人はまたしても思わせぶりに言う。その様子が引っ掛からないわけではないがギルバートにはどうしてもわからないことだった。やはり彼は鈍感なところがあった。
 そんなこんなでギルバートはビアンカのところに向かう。そんな彼を見送ってマルコとセドリックは今度は二人で話をしていた。
 
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