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八条学園騒動記

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第百六十九話 騒ぎにしてしまう二人前編その五


「頭の悪さはそれこそ超絶的なもので」
「恐れを知らないんだよね、確か」
「それわかる頭ないから」
 少なくともその頭の構造はかなりのものであるのは間違いなかった。
「だからね」
「じゃあ止めておくか」
 塗り壁は輪入道のその言葉を受けたのだった。
「それじゃあ」
「そうしよう。だからここはね」
「ええ、それで」
「どうするの?」
「消えよう」
 これが輪入道の提案だった。
「ここはね」
「消えるの」
「ぱっと」
「そう、ぱっとね」
 まさにそれだというのである。
「消えよう、それでいいじゃない」
「消えるんだ」
「それでいくんじゃな」
「鬱陶しいし」
 最大の理由がこれであった。テンボとジャッキーは彼等から見ても充分そう言われるに値するだけに鬱陶しく騒がしい存在であったのである。
「だからね」
「そうだね。じゃあ」
「消えよう」
 これで話は決まった。消えることになった。
 しかしであった。それはそれで問題があった。それは何かというと。
「ただ。何時消えようか」
「ああ、そうだね」
「それだよね」
 そうなのだった。何時消えるかが問題なのだ。実はそこまで考えていなかったのである・
「下手に消えてもおかしいしね」
「僕達の正体がわかるし」
「だからね」
 何につけてもそれであった。どうするかというのである。
「とりあえず今は駄目だね」
「そうだね」
「少なくともね」
 それは間違いなかった。今は廊下を歩いている最中である。それでいきなり消えてはおかしいというレベルのことではない。異常事態と言ってもいい。
「それじゃあ頃合いだけれど」
「何時がいいかな」
「曲がったところでいいんじゃないかな」
 豆腐を持った小僧が言ってきた。
「そこでぱっと消えてね」
「ああ、それいいね」
「そうだね」
 それに頷く他の面々だった。
「よし、じゃあ」
「そうしよう」
 こうして消えるタイミングも決定した。そして今まさにその曲がり角が見えた。そこに入ってすぐに、であった。このチャンスを逃さなかった。
「よしっ」
「これでっ」
 まさにぱっと消えたのであった。丁度その二人が曲がり角に入った時にはだ。もうそこには誰も残ってはいないのであった。
「何っ!?」
「いないの!?」
 そのことに気付き周囲を見回す二人だった。
「消えたなんて」
「どういうことなのかしら」
「そうか、そういうことか」
 ここでまたおかしなことを言い出すテンボだった。
「やはりそういうことか」
「そういうことかって?」
「俺達の存在に気付いていたんだ」
 この予想は珍しく当たった。


第百六十九話 騒ぎにしてしまう二人前編   完


                  2009・11・23


 
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