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八条学園騒動記

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第百六十四話 ロシア風にその一


                   ロシア風に
 文化祭の演劇と店の話がはじまった。その会議はクラスで行われることになった。
「それでだが」
 クラス委員のギルバートが壇上から皆に問うた。
「まずは演劇はロシアものだったな」
「そうよ」
 ビアンカは自分の席から彼に言葉を返した。
「それはね。前に話した通りよ」
「そうか。ロシアものか」
「ロシアものっていっても」
 ここでそのロシア人のアンネットが言ってきた。
「色々あるけれど」
「ロシアっていったらバレエじゃないの?」
 ここで言ったのはナンシーだった。
「確か。あとオペラよね」
「まあバレエの方が有名ね」
 こうナンシーに返すアンネットだった。
「やっぱり。特にチャイコフスキーね」
「ああ、あの人なんだ」
「出て来るのは」
「そうよ、チャイコフスキー」
 やはり彼だというのである。アンネット自身もだ。
「あの人が一番有名なのは間違いないわね」
「それじゃあバレエにする?」
「いや、それは無理じゃないかな」
 ジミーがそれに反論した。
「バレエだってオペラだって特別な技術がいるからそのままだとやっぱり無理があるよ」
「そう言われればそうね」
 ビアンカは彼の今の言葉に頷いた。
「ましてやこうした作品ってまず音楽と踊りがあってのものだから」
「それをそのままするのはやっぱり無理があるよ」
 また述べるジミーだった。
「どうしてもね」
「そうよね。じゃあバレエとオペラはなしにする?」
 アロアが言った。
「できないから」
「じゃあ文学?」
「ロシア文学から?」
 皆次に思い浮かべたのはこれであった。ロシア文学である。
「トルストイとかドストエフスキーとか」
「あとプーシキン?」
 皆思い浮かべるのはこうした作家であった。ロシアといえばこうした作家である。とりわけ有名なのはトルストイなのはこの時代でも同じである。
「あと現代ものとか」
「幾らでもあるけれど」
 こうした十九世紀の作家だけでなく千年もの連合の時代にも無数の文豪を生み出しているのがロシアという国である。やはり偉大なことは偉大な国だ。
「けれど何か暗いもの多いわよね」
「確かに」
「ロシア文学って」
 この暗さは不変であった。千年以上もの間。
「何か万人受けしそうもないわよね」
「というか問題あるんじゃ?戦争と平和とかどう?」
「あれ舞台じゃ完全再現無理よ」
 ここでまたアンネットが言ってきたのであった。
「言っておくけれど」
「そうよね、あれは」
「まずね」
 皆その言葉には頷くしかなかった。トルストイのこの超大作は戦争の場面もある。それを再現できてしかも迫力があるのは舞台ではとても無理な話であるのだ。
 しかもであった。彼等は無意識のうちに完全再現を目指していた。完璧主義なのである。
「じゃあやっぱり」
「戦争と平和は無理ね」
「残念だけれどね」
 皆止むを得なくこれは取り下げた。そうしてであった。
「じゃあ何にする?」
「どれがいいかしら」
「ドストエフスキーは」 
 今度出したのはこの作家であった。そのトルストイと並ぶロシアの文豪である。彼の作品もこれまた実に暗いものがあることで有名だ。
「どうかな」
「罪と罰とか?」
「そう、それ」
 こう言ったのはベッカであった。 
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