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八条学園騒動記

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第二話 妹と兄その六


「二人だってそうなんだろ?」
 スターリングは今度はベンとエイミーに声をかけてきた。
「蝉玉をからかって遊んでるだけなんだろ?」
「やっぱりわかった?」
「スターリングは流石に手強いわね」
 二人はそう言って顔を二人に向けてきた。
「そうだよ、蝉玉からかって遊んでたんだよ」
「だってこの娘すぐに顔に出るんだから」
「もう、そんなこと止めてよ」
 事情を理解した蝉玉はむくれた顔で言う。
「おかげで恥かいちゃったじゃない」
「いや、それは君が」
「何よ、スターリング」
 ムッとした顔をスターリングにも向ける。
「あんたまで言うの?」
「僕は言わないけどさ」
「ホンットに。折角ここにはじめて来たのに」
「まあまあ」
「それもいい思い出ってことで」
 何時の間にかベンとエイミーまで宥め役になっていた。そっとクッキーを差し出す。
「ほら、クッキーでも」
「ありがと」
 蝉玉も蝉玉でそのクッキーを受け取る。そして一つ口の中に入れてガジガジと噛む。
「美味しいわね」
「うん、この前スーパーで買ったら凄くよくて。それで買いだめしてるんだ」
 スターリングはにこりと笑って答える。
「二人もどうかな。コーヒーでも飲みながら」
「あっ、いいね」
「それなら蝉玉とスターリングのお惚気でも聞きながら」
「何にもないわよ」
「だからからかわれてるんだって」
「うう・・・・・・」
「ほら、コーヒー」
 またスターリングに言われてだんまりになっているところでベンがコーヒーを差し出してくれた。
「とりあえず今日は色んなことを話しようよ」
「気を取り直してさ」
「そうね」
 ベンの言葉で気が楽になった。それで蝉玉は落ち着いてコーヒーを口に含んだ。
「あっ、このコーヒー」
「美味しい?」
「うん、とても」
 スターリングの言葉にこくりと頷く。
「私コーヒーにはちょっと五月蝿いつもりだけれどこれは中々」6
「うちの実家から送ってもらったものなんだ」
「へえ」
「けれど気に入ってもらってよかったよ」
 スターリングの顔が綻ぶ。
「やっぱりね。美味しいって言ってもらうとね」
「スターリングの淹れてくれたのなら何でも美味しいけれど」
「いや、淹れたの俺だから」
 ベンが突っ込みを入れる。
「あっ、そうか」
「まったく、のろけちゃって」
「うう・・・・・・」
 エイミーにまで言われてまたへこまされる。それでもスターリングが意識せずに助け舟を出す。
「じゃあ今度は僕が淹れるよ。それでいいかな」
「えっ、ええ」
 スターリングはこの言葉の意味がよくわかっていない。
「じゃあお願いできるかしら」
「うん」
 そして蝉玉も。結構二人も鈍感である。
「これはまた」
「先が流そうね」
 それを見て苦笑いを浮かべる二人。何だかんだ言っても暖かい目で二人を見ていた。


妹と兄   完


                     2006・9・6
  
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