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とある完全模写の物語

作者:廃音
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上条 当麻

 場所は戻り、神堂が住んでいるマンションの自室になる。

 部屋の中にいるのは神堂と火織、そして先程目を覚ましたステイルの三人だ。

 部屋の中に漂う空気は重く、最早室内の暑さなど関係ないといった所だ。実際そうなる程に今回の自体は深刻であり、楽観視出来ない自体なのだ。

 そんな空気の中、神堂が口を開いた。

「それで?お前は誰にやられたんだ?」

 恐らく神堂動揺、火織も気になっている所だろう。

 この手の仕事のプロであるステイルを打ち負かす程の存在なのだ。放って置くわけにはいかない。どころかそいつはインデックスを連れ去った人物でもあるのだ。

 火織がその人物を見に行ったとの事だが、一見変わった様子もない只の男子高校生とのこと。

 しかし、ステイルを打ち負かした以上、只の男子高校生で住むわけがない。

「それが僕にも分からない。今だに信じられないよ」

「…どういうことですか?貴方があの少年に真正面から挑んで負けたとは考えにくいのですが」

「僕もそう思っていたさ。たかが一人の少年。何ら変哲もない少年に負けるなんてね。だけど実際に僕は負けてしまった」

 ステイルがこうして負けを認めた以上、本当に真正面から挑み、負けたのだろう。

 だか、ステイルが負けた以上、そこには何らかの原因が伴ってくる。実力で負けたにしろ、何かしろの運の類で負けたにしろ、その原因が分かれば今回の問題は解決に近づくだろう。

「何が原因で負けた?」

 神堂がそうステイルに聞くが、神堂に問われたステイルの顔が少しばかり歪む。

 その事に多少の疑問を覚える神堂と火織だが、今は余計な事を言わず、ステイルの返事を待った方がいいだろう。そう判断した二人は口を挟むことなく、無言でステイルの返事を待った。

「僕の魔術が打ち消されたんだ。それも魔術を魔術で打ち消したんじゃなく、何かしろの別の力でね」

「なっ!?」

 ステイルの言葉に驚きを隠せない神堂と火織。

 当たり前だ。魔術とはこの学園都市に存在する超能力とは全く別の力であり、その二つは全く異なる力だ。系統も異なれば、発動する基準も違う。つまり、学園都市で生活する人間は魔術を打ち消す方法など知るはずもないのだ。

 寧ろ、魔術師にも魔術を打ち消す、などと言った動作は非常に難しい。プロと呼ばれる人間でも打ち消せる魔術は少ないだろう。

 それが魔術を知らない人間に打ち消されたと言うのだ。魔術に関する知識を持たない筈の人間が。

 ステイルは最後に別の力、と言ったが、最早それは問題ではない。魔術を打ち消せる程の力を持った人間がインデックスの隣にいるならば、これは俺も動かないといけないだろう。最悪、その少年を殺してでもインデックスを回収しなければならない。

「ステイル、悪いがインデックスの回収には俺が向かう」

「君がわざわざ動くと言うのかい?…あの少年に負けた僕が言うのもなんだけど、君が動く程の相手じゃないと思うよ?」

「…実際に戦ったお前が言うならそうかもしれないが、どうにも嫌な予感がする。何より魔術を打ち消した、というその力が気になる」

 魔術を打ち消す力。それが魔術による方法ではないのならば、それは魔術にとって大きな驚異になる。

 神堂が使う力は魔術ではないが、神堂の周りにいる人間は皆魔術師。そいつらに被害が及ぶ可能性があると言うならば、その禍根は早めに摘むべきだ。

「光輝、私も一緒に行ってもいいですか?」

「何故だ?」

「簡単です。私も光輝動揺、その少年の力が気になりますので」

 一緒に行く人員が増えるのには問題がない、と判断した神堂は火織の言葉に首を縦に振った。

 神堂の了承が得れた火織はそのまま腰を上げ、ドアの方へと向かう。

 恐らくその少年のいる場所を特定しにいくのだろう。それが分かっている神堂とステイルの二人は火織を止める事はせず、そのままこれからの事に付いて話し合う。

「インデックスに残された時間も少ない。目を覚ましたばかりで悪いが早速動いてもらうぞ」

「分かってる。彼女のためなら動けるさ」

 おちゃらけた様子でそう答えるステイルを見て神堂は少しの笑みを零す。恐らくこの三人のなかでインデックスの事を一番思っているのは彼だろう。

 それを表にはあまり出すことはないが、その事は神堂も火織も認識している。

 だからこそ、今回もインデックスの回収にはステイルを向かわせた。…最もその結果、こうなるとは誰も予測していなかったが。

「ならステイルには人払いのルーンを刻んでもらう。その少年とやらがインデックスと離れた時にな。その少年が孤立した所で俺と火織がその少年の所に行き、お前はインデックスの方に向かう。いいな?」

「全く問題ないね。寧ろ君と神裂の二人を相手にしないといけないあの少年に同情してしまうよ」

 ステイルの言葉に、それもそうだな、と苦笑いを浮かべる神堂。

 自分自身で言うのもなんだが、神堂と火織の戦闘力は途轍もなく高い。それこそ一騎当千と呼ばれるレベルに到達している。

 特に神堂に限っては火織でさえも敵わないだろう。聖人と呼ばれる火織でも。彼の力はそこまで強力だ。

「それじゃあ行くぞ」

「分かった」

 神堂の言葉を合図に二人は立ち上がり、外へと出た。

――――――――――

「あいつがそうか?」

「はい。あの少年がステイルを倒した人物で間違いありません」

 そう話し合う二人の視線の先を歩く二人にペア。片側を歩く白い修道服を来た少女。それが神堂達の今回の目的であるインデックスだ。そしてその隣を歩く少年がステイルを倒したと言う少年。

 確かに一見して可笑しな所はない。この学園都市内ならばどこにでもいそうな少年だ。

 とは言え二人はあの少年に対する警戒心を緩める事は決してない。自分達の仲間が一人負けているのだから。この二人の力が普通の人間よりはるかに高かろうが、その慢心は敗北につながる。二人はそう言った人間を何人も見てきているからこそ、決して慢心はしない。

「火織…どう思う?」

 だが、神堂は湧き出る疑問を口に出さずにはいられなかった。

 どう見てもあの少年は素人だ。俺達に追われていると知っていながらも周りを警戒しておらず、どころかインデックスを連れて外を歩いている。普通に考えるならば、追われている人間を匿う場合外に出る、なんて事はまずしないだろう。

「何度見ても一般人にしか見えません。歩き方からその振る舞い。ステイルが負ける要素がどこにあるのか…」

 火織も火織で神堂と同じく困惑している様子。

「だよな…だが実際にステイルが負けている。油断せずに行こう」

「はい」

 火織が頷いたのを確認してから神堂は後ろで控えていたステイルに合図を送った。行動開始の合図だ。

 神堂の合図を見たステイルは直ぐ様予め設置してあった人払いのルーンを発動させる。

 すると人払いのルーンを発動したステイルの姿も消え、神堂と火織の視界に写っていた大勢の人々も瞬時に消え去る。インデックスと共に歩いていた少年を除いて。

「行くぞ」

 火織の返事を待たず、二人は歩き出す。

 少年は突然の事態に困惑し、突然消えたインデックスを探しているようだが、気付いた時には時遅し、少年の前に神堂と火織は現れた。

 当然突如として目の前に現れた二人に少年は警戒する。

「初めまして…だな少年。早速で悪いがインデックスは返してもらうぞ」

「ッ!?…お前ら…あの赤髪の仲間か!」

 赤髪とはステイルの事だろう。

 改めて目の前にいる少年がステイルを倒した少年だと認識してから、神堂はなにもない虚空に手を突き出す。

「火織は後ろに下がってろ。俺から行かせてもらう」

「…分かりました」

 少しばかり不服そうな表情をする火織だが、大人しく後ろに下がった。

 それを確認してから神堂は虚空に突き出した手をおもむろに横に振るった。

 ビュン!と言う鋭い風切り音と共に、先程までなにもなかった筈の神堂の右手にはひと振りの西洋剣が握られていた。特に目につくような装飾はされていない、至ってシンプルな剣。敢えて言うなら、本来人が西洋剣、と言われてイメージするような西洋剣とは色が違うぐらいだろう。

 西洋剣と言われれば、誰しも銀色の両刃の剣を思い浮かべるだろうが、神堂の手に握られている剣は漆黒の色を宿していた。

 突如として現れた剣に少年は目を丸くするが、声を上げるような事はせず、神堂の手に握られた剣を見て完全に敵対心を持ったようだ。

「一瞬たりとも気を抜くなよ。…死にたくなければな」

 神堂がそう呟いた瞬間、少年の視界に写っていた筈の神堂の姿が消えた。

(…は?」

 そう思い、神堂の姿を見つけるために周辺を見渡そうと先程まで捉えていた視界をずらそうとするが、視界をずらす前に、少年の耳に不吉な音が入る。

 それは先程神堂が空を斬った瞬間に聞こえた音であり、つまりは風切り音。その音が少年の後ろから聞こえたのだ。

 少年は後ろを振り返る事さえせず、ほぼ反射で前方に身を投げ出す。

 そして次の瞬間、いつの間にか少年の後ろに移動していた神堂が手に握られた剣を横に一閃していた。あのまま少年が反応することなく、その場で硬直していたのならば、今頃少年の首は動体と切り離されていただろう。

 少年も神堂の迷いのない攻撃に寒気と恐怖を覚え、一瞬だけだが体を震わせる。

「く…くそお!」

 普通の人間ならば先程の神堂の攻撃を見て恐怖心を覚え、逃げるのだろうが、この少年は違った。少し前まで震えていた体の震えを根気で吹き飛ばし、更には神堂に殴りかかってきたのだ。

 丸腰の少年が剣を持った少年に殴りかかる。それがどれ程異常な事か…これだけでも神堂に殴りかかっている少年の異常性が理解出来る。

 神堂も神堂でその事に感心を覚えていた。

「俺に向かってきた所まではいいが…動きが遅い」

 少年が神堂の頬めがけて放った拳は神堂の頬を掠めただけで終わり、一直線に向かってきた少年の体はそのまま流れていく。

 その事に対し、少年はまずい、と咄嗟に思うが、そう思った瞬間には神堂の膝が少年の鳩尾を捉えており、少年の体を衝撃が襲う。

「がぁっ!」

 短い声と共に少年は後ろに吹き飛び、地面を転がった。

(身体能力は高くない。…やはりステイルが負けた要素は別の力にありそうだ)

 そう考えた神堂は西洋剣を天に掲げるように上に突き出し、神堂自身の力を行使する。

 今から使う力は彼の本来の力の一部分に過ぎない風の力。

 天に掲げた西洋剣の周りに見えない風が纒わり、低い呻き声を上げる。そのまま剣の周りに充分な風が集まったと判断した神堂はそのまま少年目掛け剣を上から振り下ろす。

 すると剣に纒わりついていた風はまるで意思を持ったかのように地に倒れている少年目掛け突進してゆく。地を削り、轟音を上げ、風が秘めた威力を警告しながら。

(見せてみろ。お前の力とやらを…)

 遂に地を削りながら進んでいた風は少年とぶつかった。

 ぶつかった瞬間、風とは思えない程の衝撃が当たりを包み込み、一瞬だがその場にいた人間の視界を閉ざした。

 普通の人間であろうが、普通に人間でなかろうが、死んでも可笑しくない一撃。寧ろ死ななければ可笑しい程の威力を込めた一撃。

 だが、神堂と火織の視界に写ったのは、右手を空に突き出した、傷一つ負っていない少年の姿だった。



 
  
 

 
後書き
原作に少しでも早く追いつこうと急いで書いていますので、かなりの誤字や可笑しな所が出てくると思います。
そういった場所を見つけたら指摘してください。直ぐに修正しますので。宜しくお願いします。 
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