久遠の神話
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第三十三話 八人目の剣士その七
「そのそれぞれの力はどういったものだ」
「まずは闇です」
権藤のその力、最初に述べたのはそれだった。
「貴方の力ですね」
「そうだな。最初はそれか」
「そして火に水に土、雷」
「光に木か」
彼自身が戦った高代と広瀬の力は自分から言った。
「これで七つ。後六つだな」
「風に重力、熱に幻にです」
「後は二つか」
「金と魔です」
「それで十三だな」
「古代より。このそれぞれの力が剣士に備えられたと文献にありました」
今度はだ。聡美もボロを出さなかった。権藤にも気付かれなかった。
そのうえでだ。この文献の話もしたのだった。
「古代ギリシアの文献には」
「君の祖国のか」
「私はこの文献を偶然見つけたのです」
「それで剣士同士の戦いを知ったのだな」
「そうです。だからです」
「その君が何故この国に来た。戦いが行われるこの国で」
「それは偶然です」
何とかだ。今度も権藤に気付かせなかった。
「私は日本人の血を引いてもいますので」
「その縁でこの国に来たのか」
「そうです。剣士の戦いは古代ギリシアからはじまり」
戦いのことをだ。文献を根拠ということにしてだ。聡美は話していく。
「その戦いの都度国を変えて行われてきました」
「そうだったのか」
「この日本で行われているのは今回だけではないですが今回は日本で行われています」
「今回だけではない」
「過去に何度か日本で行われたことがあります」
こう話す里美だった。
「そして他の国でも」
「ギリシアだけでなく」
「ローマ、イタリアですね」
「イタリアでもか」
「行われたことがあります。イギリスやフランス、ドイツでも」
「他の国でもだな」
「アメリカや中国でもありました」
欧州や日本だけには限らなかったというのだ。
「ベトナムでもタイでも」
「行われている国は変わるか」
「何千年の間。気が遠くなるまでの数の戦いが行われていました」
「何千年か」
「神話の時代から続いています」
聡美は悲しい顔になって述べた。
「本当に長く。多くの戦いが行われ」
「多くの剣士が倒れたか」
「そうです。ただ」
「ただ。何だ」
「まず剣はそれぞれの剣士がイメージするものになります」
剣の形についてはそうだとだ。聡美は権藤に話した。
「例えば権藤さんの剣ですか」
「日本刀だ」
「はい、この国のものですね」
「それだがな。他の剣士は」
「それぞれ形が違いますね」
「本当にそれぞれだな。日本刀とは限らないな」
「剣はそれぞれの剣士の象徴でもあります」
権藤に対して言っていく。
「その剣士に相応しい剣になります」
「では私はまさにか」
「日本刀。権藤さんはそれなのです」
「成程な。そうなのか」
「そうです。そして剣士はそれぞれ戦い」
聡美はあることを隠して権藤に気付かせないまま、苦労しながら話していった。
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