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久遠の神話

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第三十三話 八人目の剣士その五


「私にとっては有り難い人物だ」
「剣士、そして戦いのことを知っているからこそ」
「その通りだ。それでだ」
「お話をですね」
「聞かせて欲しい。いいだろうか」
「私は剣士同士の戦いを終わらせたいと思っています」
 権藤のその目を自分のエメラルドの目で見つつだ。聡美はまずはこう答えた。
「この無益な。古代より続いている戦いを」
「それは君の考えだな」
「貴方がそうしたお考えでないことはわかっていますが」
「ならいいだろう。それではだ」
「お話させてもらいます」
 このこと自体にはだ。聡美は頷いた。それからだ。 
 彼女は権藤にだ。こう述べた。
「では今からです」
「ここで話すか。それとも」
「場所を変えますか」
「何かを飲みながらがいいな」
 権藤は自分から聡美にこう言った。
「喫茶店はあるか。この学校に」
「幾つか」
 何店かあるとだ。聡美は権藤に答えた。
「ロビーの様になっているお店もありますが」
「ロビーか」
「はい、大学の校舎の一つの階がそのままそうなっています」
「面白い場所だな。それではだ」
「そこにされますか?」
「そこでコーヒーでも飲みながら話をしよう」
 威圧感を漂わせているがそれでも理知的にだ。権藤は提案した。
「そうするとしよう」
「わかりました。それでは」
 聡美も頷きこうしてだ。二人はだ。
 その校舎。実際に一階が全てロビーになっており学生や講師達の憩いの場となっているそそこに入った。そこは一階が全てそうなっているだけあって広い。 
 しかもそこは席も多かった。黒いソファーがセットになって置かれテーブルもありだ。
 その席の一つ一つが観賞用の植物で区分けされていた。そのロビーに入りだ。
 二人でカウンターに向かいそれぞれの飲み物を注文する。それを受け取ってからだ。
 二人で空いている場所に座った。そして向かい合って話をはじめた。
 まずはだ。権藤は自分のコーヒーを片手にこう言った。
「こうして自分で頼んで飲むのはだ」
「なかったのですか」
「久し振りだ」
 こう聡美に言ったのである。
「今の地位になってからはな。言えばだ」
「コーヒーやそうした者はですか」
「周りが持って来た。だからだ」
「こうしてご自身で買われて席まで持たれてということはなかったですか」
「セルフサービスだな。なかった」
 聡美にだ。コーヒーを飲みながら話す。
「本当に久し振りだ。だがだ」
「ご気分は」
「悪くはない、むしろこの程度で気分を害するのはだ」
 そうした者はだ。どうかというのだ。
「器が小さい」
「そうだというのですね」
「この程度のことを自分でしなくてどうするのだ」
 意外とだ。権藤は傲慢ではなかった。
「少なくとも私はこれで気分を害することはない」
「わかりました。では」
「そしてだ」
 さらに言う権藤だった。
「このコーヒーだが」
「どうでしょうか」
「美味いな。中々見事な味だ」
「お口に合いましたか」
「私は確かに色々な質のいいものを口にしてきている」
 それだけの資産がある、だからだというのだ。 
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