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久遠の神話

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第二十七話 愚劣な駒その十五


 中田は上城に対してだ。こう問うたのだった。
「それでな」
「闘いのことですね」
「ああ、任せてくれるか?」
 こう上城に対して問うたのである。
「ここはな」
「いいんですか?」
「だからな。こいつとはもう終わらせたいんだよ」
 だからだというのだ。
「それでなんだよ」
「けれど」
「いいって。君は闘いたくないだろ」
「それは」
「それに逃げたくもないんならな」
 この二つの条件が揃っているだ。今ならばだというのだ。
「いいさ。俺にやらせてくれよ」
「ですが」
「だからさ。俺もそうしたいんだよ」
 躊躇を見せた上城にだ。笑顔で返す中田だった。
「こいつとの因縁はな」
「終わらせたいからですか」
「そういうことさ。だからな」
 是非にと。また言う中田であった。
「頼むぜ。譲ってくれるか」
「・・・・・・・・・」  
 上城は暫し沈黙した。そのうえで中田の顔を見た。見ればその顔にはだ。
 笑顔であるがそこには確かな決意があった。決めてそのうえで動いていると、顔でこう上城に告げてきていた。そしてその表情を見てであった。 
 上城は頷いた。無言で。そのうえで、だった。
「わかりました」
「俺がこいつと闘っていいんだな」
「はい、僕は引きます」
 そうするというのだ。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあな」
 こうしてだった。中田が壬本と闘うことになった。こうしてだ。
 中田は彼の顔を見てだ。そしてこう言ったのだった。
「じゃあな」
「君が僕と闘う」
「ああ、御前はもうどうにもならないからな」
 それ故にだというのだ。
「せめてな。かつてのクラスメイトとしてな」
「僕を倒す」
「ああ、最後に言うぜ」
 警告する顔でだ。中田は壬本に告げた。
「その剣捨てろ」
「この剣を」
「それは御前が持つものじゃないんだよ」
 だからこそだというのだ。
「捨てろ。それでどっかで真面目に生きろ」
「真面目に。僕は」
「真面目っていうかな。もっと自分を捨てて考えろ」
 そうしろというのだ。壬本に対してだ。
「他人のことをな。あと反省しろ」
「僕は」
「まあ。言ってもわからない奴なのはわかってるさ」
 壬本のことはだ。既にだった。
 だがそれでもだ。中田はあえて彼に告げたのである。
「それでもな。もう剣捨ててどっかでちゃんと生きろ」
「僕はちゃんと生きている。けれど」
 それでもだとだ。壬本は血走り濁った目で中田に返した。
「皆が。僕を認めないんだ、皆が」
「皆な、御前に呆れたんだよ」
 うんざりとした口調でだ。壬本は中田に言い返す。
「御前の出鱈目さと馬鹿さ加減にな」
「僕が馬鹿・・・・・・それは」
「ことの善悪がわからないし全然反省しないでそれでどうして馬鹿じゃないんだ?」
 糾弾だった。壬本の過去に対する。
「御前それ高校でも随分言われたろ。バイト先でも親父さん達からもね」
「皆わかってくれないんだ。僕のことを」
 あくまでだ。こう言う壬本だった。
「だから。ああして僕を」
「まあなあ。本当に何を言っても無駄なのはな」
 中田は己の頭の後ろをだ。右手で掻きだ。呆れ果てた顔でだ。
 こうだ。壬本に言ったのだった。
「わかってたけれどな。何の進歩もねえ奴だな」
「僕は君を倒す。そして」
「そしてなんだな」
「僕を馬鹿にして追い出した人を皆」
「見返すとか言うんだな」
「そう。皆許さない」
 いよいよだ。壬本のその目が血走った。
 そしてその目を中田に向けてだ。言うのだった。
「皆。僕を馬鹿にした皆は」
「で、俺もその中にいるんだな」
「君にも馬鹿にされたから」
 それでだというのだ。
「ここで倒す」
「じゃあはじめるか」
 ここまで言ってだ。そうしてだった。
 中田はその両手に彼の剣を出した。二本の刀をだ。
 赤いその剣を出してだ。そして言ったのである。
「容赦はしないからな」
「容赦しないのはこっちだよ」
 二刀流の構えを取った中田にだ。壬本は刃を逆さにし左手を先、右手を後にした逆手でその闇の剣を持ってだ。そのうえで対峙しながら言った。
「僕は。君も嫌いだから」
「ああ、それわかってたよ」
 壬本が自分をどう思っていたのか、それをだというのだ。
「よくな」
「わかっていたんだ」
「俺随分御前に注意したからな」
 彼のその出鱈目さ、まさにそれにだ。
「それもかなりだ」
「いつもいつも悪口を言ってくれたね。じゃあ」
「ああ、はじめるか」
「今までの恨み、晴らすからね」
 まさにその感情も見せてだった。壬本は言った。
「今日ここで」
 こう中田に告げてだ。彼は構えていた。そしてそのうえでだ。闘いに入るのだった。


第二十七話   完


                          2012・3・19 
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