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久遠の神話

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第十五話 選択その五


「では私もこれで」
「消えるんだな」
「ええ、そうするわ」
 こう話すのだった。
「また会いましょう」
「あの、少しいいですか?」
 その消えようとするスフィンクスにだ。上城が問うた。
「御聞きしたいことがあるんですけれど」
「何かしら」
 消えかけていた姿を元に戻してだ。スフィンクスは上城の言葉に応えた。
「貴方は闘わない剣士ね」
「はい、剣士とは」
「そうね。その貴方が私に何の用かしら」
「あの、スフィンクスさんはどうして僕達と闘わないんですか?」
「そのことなの」
「はい、それはどうしてでしょうか」
 怪訝な顔になってだ。広瀬は問うのだった。
「前もお話してくれただけでしたし」
「私も闘うわよ」
 だが、だ。スフィンクスはここでこう上城に答えた。
「ちゃんとね」
「えっ、ですが」
「私が闘うべきと思った相手にはね」
「闘われるんですか」
「私から見てね」
 そうした相手ならというのだ。
「そういう考えなのよ」
「あの、どういう意味でしょうか」
「そのうちにわかるわ。今でなくてもね」
「そうなんですか」
「今の貴方達はそうした相手ではないわ」
 また言うスフィンクスだった。
「だから教えてあげるけれど闘わないのよ」
「そういうことなんですか」
「そうよ。それでね」
「それで?」
「貴方達はこれから色々なことを見るわ」
 戦いを通してだ。そうなるというのだ。
「けれどその中で生き残ればね」
「最後の一人まで、ですか」
「死ぬか戦いを放棄するか」
 それがこの戦いでの戦線離脱だった。
「そうすればね」
「戦いを進めていけますね」
「そうなるわ。貴方のそのやり方もね」
「できないっていうんじゃないですね」
「できることはできるわ。ただね」
 しかしだと。スフィンクスのその言葉が少し変わった。 
 そうしてだ。彼女はこう言うのだった。
「それはとても難しいわよ」
「やはりそうですか」
「まず。怪物は多く倒していく」
 強くなる前提、それが必須だというのだ。
「そして他の剣士達との戦いは避けるのね」
「はい、そのつもりです」
「それがとても難しいわ。怪物に勝っていくことも難しいけれど」
 戦いを避ける、それが最もだというのだ。
「不可能に近いわ」
「そこまで難しいのですか」
「そうよ。他の剣士達には戦いを求める人も多いから」
 だから余計にだというのだ。
「しかも貴方は逃げることにはどうしてもよね」
「逃げないといないですね。やっぱり」
「戦いたくなければね」
 本当にそれしかないというのだ。 
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