万華鏡
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第十六話 プールと海その四
「藤村は四番でないと駄目だってさ」
「決まってるのね」
「阪神ファンの間じゃ。古い人の中じゃそうみたいだな」
「そうなのね」
「あっ、それはね」
ここで里香が二人の間に入って言ってきた。
「私も聞いたわ」
「里香ちゃんもなの」
「聞いたことあるんだな」
「お父さんに教えてもらったの」
知った元は彼からだというのだ。
「ちょっとね」
「それで知ってるの」
「最初のダイナマイト打線はその藤村さんが不動の四番で」
まだ終戦直後だ。碌に食べ物もない時代にダイナマイト打線は大暴れして野球人気を牽引してきたのである。
「それで次のダイナマイト打線はね」
「その日本一の時代よね」
「そう、フィーバーだった頃」
その頃日本は元気だった。日本は阪神が元気な時には元気になるが憎むべき巨人が強いと意気消沈してしまう傾向がある様だ。
「その頃の三番がバースだったのよ」
「そうだったの」
「けれどバースってな」
ここでまた美優が言う。
「足遅いんだよな」
「だからファーストなのね」
「外野も守れるけれど足遅いしサブポジ扱いでな」
しかもだった。
「そのサブポジの守備も下手なんだよ」
「ファーストの守備はそこそこなのね」
「足遅くても大丈夫だよ」
ファーストのポジション的な性格でもだというのだ。
「けれどそれでもな」
「足の遅い三番なのね」
「やっぱり三番って打つだけじゃなくてな」
「足速い方がいいわよね」
「うちの兄貴ソフトバンクファンだけれどな」
美優は自分の兄の話もした。
「今そっちの監督の秋山さんってな」
「あの痩せてすらってした人よね」
「あの人名球界でな」
二千本安打を達成している。即ち名選手だったというのだ。
「現役時代打つわ守るわ走るわの」
「足もあったのね」
「ああ、ホームラン三十本に五十盗塁な」
「それ一シーズンの間にやったのよね」
「それ達成したり三割三十本三十盗塁達成したりな」
「凄い選手だったのね」
「まあ守備範囲も凄くて肩はレーザービームでな」
イチローに匹敵する選手だった、だから西武からダイエーに引き抜かれ今はダイエーが身売りしたソフトバンクの監督なのだ。
「チートだったらしいんだよ」
「そんな滅茶苦茶な選手だったの」
「三振は多かったけれどな」
だがそれでもだというのだ。
「足も凄かったんだよ」
「で、三番だったのね」
「ホークスでもその前にいたライオンズでもな」
言うまでもなく西武ライオンズのことだ。
「スーパープレイヤーだったんだよ」
「成程ね」
「うちの兄貴大好きでゲームにその秋山さんと王さん入れてるんだよ」
「王さんもなの」
「ああ、監督だったからって言ってな」
「それって反則でしょ」
琴乃は美優の話を聞いてこういぶかしむ顔で述べた。
「その秋山さんと王さんって」
「凄いぜ、三番がその人で四番王さんだからな」
「無茶苦茶よね」
「しかもうちの兄貴強引にな」
そう解釈できる話だというのだ。
「キャッチャーは一番凄かった頃の城島にしてるんだよ」
「無茶苦茶やってるわね」
「勿論サードも一番凄かった頃の小久保でな」
さらに酷かった。
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