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万華鏡

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第十五話 雨は駄目その六


 そしてその上でギターを手にして言うのである。
「ギターが重いっていうかね」
「重いの?」
「そんな感じなの」
「いつも手にしている。部活のギターと違うのよね」
 こう四人に言う。
「何かね」
「それだけいつもギターを持ってるってことよね」
 景子がその琴乃に言う。
「つまりは」
「部活のギターを?」
「琴乃ちゃん家に帰ってもギター演奏してるでしょ」
「ちょっとね」
 ダンスもしていてば勉強もしている。だからギターを持って演奏をしている時間はあまりない、だが確かに家でも持ってはいる。
 それでもその時間はあまりないので琴乃はこう景子に返したのだ。
「あまりお家じゃ演奏してないけれど」
「けれど毎日学校でも家でも持ってるから」
「その重さに慣れてるのかしら」
「そうじゃないかしら。私もね」
 景子もベース、店のそれを手にして言う。
「このベースいつもと違う感じなのよ」
「重いの?」
「軽いの」
 景子の場合はそうだった。
「ちょっとね」
「軽いのね」
「少しだけれど」
 重さは然程変わらないがそれでもだというのだ。
「違和感あるわね」
「ドラムとそこが違うんだな」
 美優は流石にドラムは持ち込んでいない。簡単な小さい太鼓を持っている。そして里香も今は何故かパーカッションである。
「ギターとかベースはそれぞれなんだな」
「うん、今それがわかったわ」
「私もね」
 二人はそれぞれこう美優に答える。
「楽器なんて最初はどれも同じかなって思ってたけれど」
「それって違うのね」
「それぞれ重さが違ってて」
「音色も何かね」
 景子は少し手にしているそのベースを鳴らしてみて聴いてから言った。
「違うわ」
「そうよね。私もそう思うわ」
「確かにね」
 彩夏も自分のギターを鳴らしてから言った。
「音色も違うわね」
「ううん、あたしもドラム持って来たらよかったか?」
 美優は手にしている太鼓をぽんぽんと叩きながら言った。一応バチは使っている。
「そうしたらわかったか」
「ドラムってあれよね」
 里香もパーカッションを演奏しながらだ。
「凄く場所取るしね」
「ギターとかは持ち運べるからな」
「けれどドラムはそうはいかなくて」
「カラオケボックスで借りるにしてもな」
「少し躊躇するわね」
「部屋に持って来るのだけで大変だからな」
 美優は首を捻りながら言った。
「どうしてもな」
「そうよね。けれどここのドラムって」
「何かあるのかよ」
「台になっててしかも台車もあるから」
 それでだというのだ。
「台車に乗せて持ち運べるわよ」
「ああ、じゃあ今度台車使ってな」
「部屋まで運んで使ってみる?」
「そうしてみようか」
 こう言うのだった。
「今度はな」
「それもいいんじゃないかしら」
「だよな。今度な」
 今はしないというのだ。
「ちょっと太鼓に専念するか」
「原理は同じだからなのね」
「ああ、こうしてな」
 言いながらまた両手に持っているバチで太鼓を叩く。音は和風だ。
「やってみるな」
「そうするのね。私もね」
「里香ちゃんも今はパーカッションか」
「これでいいわ。ううん、何か」
 右手でピアノのところを動かして左手で支え伸縮させながら言うのだった。 
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