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万華鏡

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第八話 それぞれの家でその十


「アラビア風のお料理にするから」
「アラビアっていうとあれだよな」
 美優はアラビア風と聞いてすぐにこう言った。
「香辛料を使った」
「そう、羊のお肉をね」 
 それを使ったものだというのだ。
「そのお料理なのよ」
「羊なあ」
「アラビアじゃお肉っていえば羊よ」
 これも文化の違いだ。アラビアでは羊の肉が一番食べられるのだ。イスラムにおいては羊が一番よい肉とされている。
「だからなの」
「豚は食わないんだよな」
 美優は自分の知識から話した。
「そうだよな」
「あっ、一応は禁じられてるけれど」
「食うのか?」
「アッラーに謝ったりしてからね」
 それから食べるというのだ。
「やっぱり基本は食べないけれど」
「それでもかよ」
「そう、食べるのよ」
「柔軟っていうのか?」
「イスラムってそんなに厳しい宗教じゃないから」
 人の弱さをわかっている宗教なのだ。だからその戒律も厳格な決まりではなく目標となっているものも多いのだ。
「流石に犯罪は悪いことだけれど」
「それは絶対なんだな」
「けれど。基本は寛容なのよ」
 それがイスラムだというのだ。
「ただし問題はね」
「問題は?」
「ムハンマド関連冗談効かないからね」
 この点は真顔で言う彩夏だった。
「間違ってもイスラムの起源は日本にあるとかムハンマドは日本人とか言うと」
「そんな馬鹿言う奴いるのかよ」
「日本人は言わないと思うけれどね」
 流石に彩夏も日本人では言う人間はいないと思っている。
「それでもそんなこと言ったらね」
「大変なことになるんだな」
「殺されても文句言えないから」
 冗談が通じないというのは伊達ではなかった。
「それでだからね」
「成程、それでなんだな」
「そう。そうしたことは禁句だから」
 彩夏は真顔で美優達に話していく。
「注意してね。お酒はまだ飲んでいいらしいけれど」
「それも駄目じゃないのか?」
「それも目標らしいから」
 だからいいというのだ。
「トルコのお酒だってあるし」
「あるんだな、イスラムでも」
「今のトルコ作ったケマル=アタチュルクも酒好きだったらしいし」
 トルコの国父と呼ばれている人物だ。その卓越した指導力と政治力、果断な決断により一次大戦後で窮地に陥っていたトルコを新生させた人物だ。
「結構強いお酒飲んでたらしいわよ」
「ビールとかじゃないのかよ」
「ビールなんかよりずっとね」
 強い酒だというのだ。
「ワインよりもね」
「ワインよりもかよ」
「そういうお酒もあるから」
「イスラムでもお酒はなんだな」
「そう、いいのよ」
 基本的には駄目にしてもその辺りは色々と事情があるというのだ。
「おおっぴらでないとね」
「成程な。それでだよな」
「そう、今からアラビア風のお料理作るから」
 そうするというのだ。
「味付けは薄くするから」
「彩夏ちゃんお好み焼きでもラーメンでも凄いからね」
 景子は彩夏の味付けについてこれまでのことから言った。 
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