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リリカルってなんですか?

作者:SSA
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空白期(無印~A's)
  第二十六話 裏 (翔子、カロ、なのは、テロリスト)

*なのは視点で少しグロい描写がありますのでご注意ください。





 蔵元翔子は、魔法世界に来た初日、息子の翔太と息子の友人である高町なのはを見送った後、リンディとアリシア、アルフと共に病院へと来ていた。むろん、秋人も一緒である。

 病院に来た理由は、アリシアが関係していた。アリシア―――いや、この場では、フェイトといったほうが適切だろうか。翔子の記憶にまだ新しい四月の事件。息子が直接巻き込まれたのだから知らないわけがない。ましてや、巻き込まれただけならまだしも、ボロボロになっているのだから、嫌でも忘れられない。

 それに、車で移動している最中に今日の検査の目的を聞いておくことにした。健康診断であれば、地球でもできる。いや、確かに精度で言えば、こちらのほうが上かもしれないが。それでも、わざわざこちらでやる必要があるのか? ということが疑問に思ったからだ。

 結果からいえば、聞いて正解だったのか、どうか分からない。

「アリシアさん―――旧名、フェイトさんは、四月の事件の容疑者の一人です。現状、彼女はその記憶がありません。そして、翔子さんから聞いた限りでは、記憶が戻る様子もありません。しかし、それを医学的に、客観的に証明する必要があるのです。アリシアさん―――いえ、フェイトさんが、逃げるための演技ではないことを」

 まさか、とは思った。少なくとも今まで家族として接してきて、彼女がそのような様子を見せたことはない。彼女は、本当にどこにでもいる少し傷つきやすい少女だ。それを演技といわれるとは、気分がいいものではない。

「申し訳ありません。ですが、主観ではダメなのです。専門知識を持った第三者の意見を持って、ようやく認められるのです。彼女を不起訴にするためにはどうしても必要なのです」

 お願いします、と頭を下げられては、翔子はこちらが悪いことをしているような気分になる。いや、彼らも悪意があるわけではないのだ。むしろ、彼女のことを心配しているといっても過言ではないだろう。ならば、拒否はできない。なにより、アリシアの嫌疑を晴らすためなのだ。検査の内容も、少しだけ質問をするだけらしい。ならば、危険性はないだろう、と思って翔子は、アリシアへの承諾する。

 何より、これまでの行為で翔子は、リンディたちを信頼していた。

 アリシアが検査を受ける病院への道のりは意外と短かった。どうやら、リンディが勤める時空管理局直属の病院だったらしく、規模は相当大きい。翔子が考えるに地球で言うところの大学病院に相当するのだろう。

 車を降りた翔子は、リンディに支払いを任せて―――払うつもりがないのではなく、お金を持っていないのが問題だった―――翔子は、アリシアを呼ぶと右手を差し出す。アリシアは、それを見ると喜んで、翔子の右手に自分の左手を絡めてきた。

 病院は広大で、それに比例するかのように人の出入りも多い。彼女のような人見知りが、ここで迷子になっては大変だろうと思った翔子が、いつものように手を繋いだのだ。アリシアは、手を繋ぐのが好きなのか、地球でも買い物の際に手を繋ぐために手を差し出すと嬉しそうにその手を取るのだ。

 そんな情景をリンディに微笑ましそうに見られながら、一向は病院の中を進んでいく。

 病院は、人の多さに比例するように繁盛しているようで、病院で順番待ちしている人たちで一杯だった。しかし、その中をリンディは、どんどん進んでいく。リンディの話が本当ならば、今、歩いている所は、内科なので全然違うのだろう。

 リンディの先導にしたがって、進んでいくと今度は人が全然いない棟へとやってきた。アリシアは誰もいない空間が怖いのか、ひしっ、と翔子にくっついてくる。アルフも主人であるアリシアの恐怖心を感じているのか周りをしきりに警戒していた。

 やがて、到着したのは病院の診察室の一つ。ただし、待っている人は誰もなくどこか閑散としている怪しい場所だった。心療内科とはこのような場所なのだろうか、と翔子は思った。

 リンディが失礼します、と入った部屋に続いて恐る恐る入っていくと、そこは翔子が知っている診察室に近かった。ただし、どこか本などが多く、大学の研究室を髣髴させる。

 部屋にいたのは、白衣を羽織った中年の男性だ。いかにも医者という感じがする。

 今日の患者は、アリシアだ。リンディもアリシアを呼んでいる。アリシアは、翔子にくっついたまま離れる様子がないが、それでも自分が呼ばれていることには気づいたのだろう。翔子と呼ばれている場所を見比べていた。どうしたら良いのか分からない、といった様子だ。

 しかし、アリシアが診察を受けなければ、いつまでたっても終わらない。だから、翔子は、アリシアの肩を押して、医者の前に椅子に座るように促してやった。自分は、邪魔にならないが、彼女が見える位置で、と思い、待合用の椅子に腰掛けさせてもらった。リンディも医者と二、三言話すと、翔子の隣に座る。

「どのくらいで終わりますか?」

「一時間もかからないとは思いますが……」

 アリシアが不安がっているのは分かる。だからこそ、短時間で終わって欲しいと思っていた。

 一時間。それが長いか、短いかは人によるだろうが、少なくとも翔子からしてみれば、短いうちだと思う。それ以上、かかることも心配していたのだから。

 そうこうしているうちに、アリシアの検査が始まった。最初は、穏やかな感じで始まっていた。医者の様子も笑みを浮かべており、剣呑とした雰囲気はない。心療内科というだけあって、子どもの心を掴むコツのようなものでも知っているのだろうか、最初は警戒していたアリシアも次第に、笑顔を見せ始め、饒舌に話し始めた。

 質問は翔子が知っているだけでも、多岐にわたっている。私生活のことや過去のことなどだ。私生活のことや最近の出来事はアリシアは笑顔で話している。しかし、過去については、忘れた、と言って答えようとしない。いや、答えられないのかもしれないが。

 医者は、アリシアがそう答えるたびに手元の用紙に何かを書き込んでいた。

 まるで、面接のようだ、と傍から見ていれば思う。しかし、それは間違いではないのだろう。検査なのだから。アリシアの無罪を証明するための面接。アリシアはそんなことはまったく知らない様子だったが。

 医者が質問して、アリシアが答える。そんなやり取りが四十分ほど続いた。

「う~ん、大体、分かったよ。それでね、アリシアちゃん。最後に一つだけ聞いていいかい?」

「うんっ! いいよ」

 そのまま、医者は、ずっと浮かべていたまるで、能面のような笑みのまま、問う。


「―――君は、フェイト・テスタロッサかい?」


「………あ、え?」

 そのときのアリシアの表情は、すべてが抜け落ちたよな表情をしていた。何を問われているか理解できていないといったような感じの表情だった。それに追い討ちをかけるように医者は問いを続ける。

「プレシア・テスタロッサが、研究していたプロジェクトFの残滓として作られた少女。それが君じゃないのかい?」

「……ち、ちがう」

 その否定の声は、か細く小さい。アリシアの腕は、自然と自分を守るように肩へと回っていた。翔子は、フェイトのこの症状を知っていた。最初に家に来たときに起こした症状とほぼ同じだった。だから、翔子は気がつけば、駆け出していた。

「本当に? 君は、アリシア・テスタロッサの記憶が刷り込まれた―――贋物じゃないのかい?」

「ちがう、ちがう、ちがう、ちがうちがうちがうちがうちがうっ!!」

 首を振りかぶりながら、アリシアはそれが幻聴でも言いたげに否定に否定を重ねる。それを決して受け入れられないという風に。

 一歩、遅かったか、と思いながらも駆け出した翔子は、まっすぐアリシアの下へと駆け寄ると、すぐにアリシアを抱きしめた。こういう症状に陥ったフェイトを落ち着かせるには抱きしめるのが一番だと経験から知っていたからだ。

「か、母さん? 私は……私は、蔵元アリシアだよね? 贋物なんかじゃないよね?」

 涙声で問いかけてくるアリシア。よほど不安だったのだろう。だから、翔子は安心させるようにアリシアの頭を撫でながら、耳元で安心させるように囁く。

「そうね。あなたは、アリシアちゃんで、私の可愛い娘よ。だから、安心しなさい」

「うん……」

 翔子の言葉に安心したようにアリシアは、目を瞑ると、そのまま寝息を立て始めてしまった。疲れているわけではないだろうが、先ほどのショックだったとは容易に想像できる。

「ふむ、これは、珍しい」

 先ほど、無神経な質問をしてきた医者が珍しいものを見るような目でアリシアを見ていた。だが、アリシアをあんな症状に陥らせた医者にいい感情等浮かぶはずもなく、思わず翔子は、医者を睨みつけるような形になってしまった。しかし、翔子の形相を見たのか、能面のような微笑を浮かべていた医者が、その表情を崩して申し訳なさそうな表情をしていた。

「すいません。どうしても、聞かなくちゃいけないことでしてね。でも、そのおかげで色々分かりました」

 翔子からしてみれば、彼がアリシアについて分かることよりも、アリシアがこんな状況になった事が問題だった。

「ああ、そうだ。彼女を寝かせるなら、隣の寝室を使ってください。私は、ハラオウン提督とお話があるので……」

 おそらく、アリシアに関することだろう。しかし、寝かせてもらえるなら、それは有り難いことである。原因が元々目の前にいる医者のせいでもあるのだが。まだ体重の軽いアリシアを抱えて隣の部屋へと行くことにする。途中、すれ違ったリンディが、申し訳なさそうに頭を下げてきた。

 彼女も知らなかっただろうに律儀なことだ、と思いながら、翔子はアリシアを隣の部屋に運ぶのだった。



  ◇  ◇  ◇



 蔵元翔子は、目の前のガラスの向こう側に見える女性を見ていた。

 真っ白な部屋。白いベットと小さな引き出しが存在するだけで後は何もない空間だった。だが、それだけで、彼女は十分だったのだろう。

 ―――プレシア・テスタロッサにとっては。

 プレシアは、病院服のままベットの上で少し頭の部分を傾け、背を預けるような状態で座っていた。座りながら、人形の髪を梳いていた。その表情は慈愛に満ちており、持っているのが人形でなければ、娘を慈しむ母親の姿に何の違和感も抱かなかっただろう。

 しかし、彼女の手に握られているのは、小さな人形。それを本当の子どものように、丁寧な手つきで毛糸の髪の毛を梳いていく。プレシアの口が時折動く。口の動きは、「今日はどんな髪型にしようか?」と言っているようにも見える。

 そんな光景を蔵元翔子は、ガラス一枚を隔てた向こう側から見ていた。隣には、ここに案内してくれたリンディの姿もある。

 アリシアを隣の部屋のベットに寝かせた後、翔子は、アルフに秋人とアリシアの面倒を頼んで、リンディにアリシアの母親―――プレシアの元へと連れて行ってもらうように頼んだのだ。

 理由は簡単なものだ。彼女なりのけじめのようなものだ。

「プレシアは、事件に関しては不起訴になるでしょう。そして、ここで一生を終える」

 ―――人形を娘と勘違いしたまま。

 それを明確に言うことはなかったが、言外には確かに語っていた。病院で検査した結果によると、プレシアは病を患っており、余命はあまり残っていない。さらに、事件のときに無理矢理魔法を使ったせいで悪化し、今では魔法使いとしてのリンカーコアでさえ縮小してしまうような有様なのだ。

 翔子は、母親としては、プレシアに少しだけ同情する。娘を亡くしてしまった悲しみは理解できるとはいわない。翔子は子どもを亡くしたことがないのだから。だが、母親にとって子どもとは、自分で痛みを感じて生んだもう一人の自分と言っても過言ではないのだ。愛情を注いでいたのであれば、子どもを亡くしたときの悲しみは計り知れないだろう。

 だからこそ、飛びつくしかなかった。彼女は、求めるしかなかったのだ。手を伸ばす位置に、つかめる位置に希望があるとすれば、伸ばさずにはいられなかった。それがたとえ、道徳に、法に反するとしても。

 彼女の行動原理は理解できる。理解できるが、彼女がフェイト―――アリシアに行ったことは許せない。許せるはずもなかった。

 もしも、プレシアが健常者であれば、恨み言の一つでも言ってやっただろう。だが、今の彼女は翔子が何を言っても理解できないだろう。言っても無駄なことは分かっている。だが、それでも、これは、けじめだった。彼女がどのような経緯でアリシアを生み出したとしても、彼女は確かにここにいるのだから。

 ―――プレシアさん、あなたがしたことは私は許せません。でも、アリシアちゃんを生み出してくれたことには感謝します。アリシアちゃんは、きちんと育てますから。

 それだけを心の中で告げ、一度、彼女に届くように、と目を瞑ってしばらく考え込んだあと、翔子は目を開いて、リンディに目配せした。

「いいのですか?」

「ええ、行きましょう」

 もしかしたら、アリシアが起きているかもしれない。彼女は、寂しがり屋だから、もしかしたら、自分がいないことで不安がっているかもしれない。そう考えると翔子も、あまり長居をしようとは思わなかった。

 翔子が、背中を向けたとき、不意に声が聞こえたような気がした。

 ―――フェイトのことよろしくお願いします。

「どうかしましたか?」

 声に気を取られて足を止めた翔子を心配したのだろう。リンディが、何か不安そうな顔で尋ねてくる。しかし、翔子は、なんでもない、ということで微笑むと足を進めた。

 振り返ったときに見たが、プレシアが、正気に戻ったような様子は見えなかった。今の言葉は、翔子が望んだ幻聴だったのだろうか。だが、それでも、それでも構わないと思った。自分達のほかにもアリシアを心配してくれる誰かがいるのだから。

 少しだけ心強くなりながら、翔子は、プレシアがいた病室を後にした。今度は、翔子が振り返ることはなかった。



  ◇  ◇  ◇



 カロ・フォッスードは、一言で言うとむしゃくしゃしていた。

 理由は、語るまでもない。目の前で、近所に住んでいる知り合いの女の子達に楽しそうに教えている男子―――名前を蔵元翔太といっただろうか―――と連れの女子―――高町なのは―――のせいだ。

 カロの両親は、時空管理局の本局に勤めている。魔力というのは遺伝性がある程度確認されている。もちろん、両親が膨大な魔力の持ち主でもまったく魔力を持たない子どもが生まれることもあるし、その逆も然りだ。


 幸いにしてカロは、両親の才能を受け継いだようであり、若干、時期が遅かったものの魔力に覚醒した。地域で行われる簡易の魔力検査でリンカーコアが発見されたのは、つい最近。しかも、この年の魔力ランクとしては破格のAランクである。両親共々に喜んだ。

 カロも、自らの才能に自信を持ち、魔力に覚醒した者達が全員受ける初心者講習でも、おそらく一番に、ヒーローになれる、と、そう思っていた。

 しかしながら、彼の願いは、希望は思わぬ形で覆ることとなる。

 管理外世界から来た蔵元翔太と高町なのはだ。蔵元翔太は、カロと同じく魔力ランクA。彼だけならば、まだカロの面目も保たれただろう。しかしながら、もう一人の女子は、魔力ランクS+という規格外の魔力を持っていた。初心者講習の主役は彼女がすべて掻っ攫っていた。

 しかも、話を聞くに彼女は初心者講習に参加しているにも関わらず魔法が使えるらしい。知り合いの女の子達が帰りのバスの中で言っていたのをこっそりと聞いた結果だ。それは、どうやら蔵元翔太も同じらしく、彼も魔法を彼女達に教えていた。彼女達の噂では、「翔太くんがいてラッキーだったね」「どこかの男子とは大違いね」などと言っていたのをこっそりと耳にしたのだ。

 気に食わなかった。本来の立場を取られ、魔法も使える彼らが。しかも、聞けば出身は管理外世界という田舎らしい。そんな田舎者が、お膝元というべきミッドチルダ出身の自分を差し置いているのが、もっと気に入らなかった。

 だから、ちょっと、調子に乗っている彼に対して、ちょっかいをかけようと思ったのだ。

 別に怪我をさせるつもりはなかった。何か危害を加えるつもりもなかったのだ。魔力の発現だけができるようになり、精々ボールが軽く当たった程度の衝撃しか出せないことも分かっての行動だった。ちょっとした嫌がらせ、それ以上でも、それ以下の意味も持たない他愛ない悪戯のつもりだった。

 ―――少なくとも彼にとっては。

 他の仲間ともいえる二人とタイミングを合わせて、彼が後ろを向いているときに、ようやく出せるようになった魔力の塊を球状にして、翔太に向かって飛ばす。軌道は、間違いなく翔太の頭を狙っており、何も邪魔が入らなければ間違いないなく、彼の頭頂部に当たっていただろう。

 そう、何もなければ。

 その魔力球が、突然割れた。いや、割られた。まるで意思を持ったように飛んできた球体によって。彼は、それを知っていた。その魔法を知っていた。父に魔法をせがんで見せてもらった魔法の一つだから。しかし、その魔法は明らかに父から見せてもらったものとは異なった。

 まず、その魔法に込めれらた魔力量が異なる。リンカーコアが覚醒した今となっては、カロも少しは魔力を感じ取れるようになっているのだ。だからこそ、分かる。分かってしまった。その魔法に込められた魔力が。

 そして、次に、元来、多数をもってして成るはずの魔法であるにも関わらず単一できびきびした動きする。それこそ、意思を持ったように。彼が尊敬する父ですら、曖昧に大体の操作しかできなかったのに。

 その魔法は―――アクセルシュータという魔法は、カロが知っているものとはまったく違うものだった。

「お、おい……あ、あれ」

「なんだよ……」

 今、見た魔法に戦慄していたカロだったが、彼の仲間によって袖を引っ張られ、現実に引き戻された彼は、またしても、そこに非現実的な何かを見る。

「あ、あ、あぁ……」

 恐怖に戦く。いや、戦かざるを得ないほどに分かってしまう。彼女―――高町なのはの真後ろに展開された無数のアクセルシュータ。そして、彼女の視線から、明らかに自分達を狙っている事が容易に理解できた。

「あいつら、ショウくんに魔法を当てようとした」

 どうやら、カロは、触れてはいけない逆鱗に触れてしまったようだった。しかし、だからといって、狙ったことを認めて、あの魔法の餌食になってはたまらない。

 それだけの魔力があの魔法にはあった。いや、カロには理解できた。彼女が背負っている無数のアクセルシュータ。それはただ、存在するだけで濁流のような魔力量を感じさせる。カロ程度では全体を把握することはできず、漠然とたくさん、と感じる程度であるが。例えば、コップ一杯では、一リットルと量で換算できるが、海を何リットルと見ただけでは分からない感じに似ている。

 つまり、カロが感じるのは、計り知れないほどの量の魔力に対するこれ以上ないほどの恐怖である。

「ち、違うんだっ! あれは、偶然で、失敗した魔法がそいつに飛んでいっただけなんだ!」

 醜いいいわけだとは分かっている。彼女は、それすら見抜くであろうということも。いや、そんな理由など彼女には関係ないのではないだろうか、と思わせる。なぜなら、高町なのはの目は、明らかに静かな怒りで染まっているからだ。

 彼の予想通り、カロの言い訳を聞いたなのはは笑った。ふっ、と口の端を吊り上げて。愚かなものを見るような目で。

「嘘だよね」

 そういいながら、彼女は一歩ずつ歩みを進めてくる。アクセルシュータを背負ったまま。それは津波が彼らにゆっくりと襲ってくるのとなんら変わりない。暴力という名の力が焦らすように一歩ずつ近づいてくるのだ。その恐怖に耐え切れるほど幼い心は強くなかった。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 そして、幼い彼が罪を許してもらうための手段として知っているのは、ただ謝ることのみ。しかし、彼女は彼の謝罪を意に介さなかった。ただただ、近づくのみ。

 ああ、彼は神に見捨てられたのだ、と思った。

 しかし、捨てる神あれば拾う神ありというところだろうか。思わぬ相手から、助けが入った。

「なのはちゃんっ! ダメだよ。彼らだって、偶然だって言ってるし、謝ってるじゃないか」

 この時、彼は間違いなく翔太に感謝した。気に食わないやつだと思ってごめんなさい、と心の底から謝った。間違いなく、今のカロにとって翔太は神に近かった。

 しかも、幸いなことになのはにとって、翔太という存在は彼らよりも重要度が高いのだろう。さすがに翔太から制止の声が入れば、無視する事ができないらしい。彼らと翔太をしばらく見比べていたが、やがて、諦めたようにふぅ、とため息を吐くとアクセルシュータをすべて消した。消してくれた。

「あ、あぁ」

 カロの身体中から力が抜けた。あれほどまでに敵意を向けられ、津波の目前に突き飛ばされたような恐怖感は、そこには存在していなかった。死地からの生還だった。少なくとも、彼はそう思っていた。

 だが、安心するにはまだ早かったようだ。意識を戻してみれば、高町なのはが近づいてくるではないか。一歩一歩確実に。

 先ほどの魔力を見たカロは彼女が近づいてくることに恐れ、戦いていた。当たり前だ。彼女が見せたのは、魔力ランクSの欠片だ。ほんの少し彼女が力を見せただけ。それだけでぷちっ、と踏み潰されそうなほどの力を感じるのだ。もしも、彼女が本気になったら―――そのときのことは考えたくなかった。

 それよりも、今は現実が先だ。だが、彼に打てる手段は何もなかった。

 ただ、彼女が近づいてくるたびにカチカチカチと歯がなる。恐怖により、自然と動いてしまうのだ。いつ? いつ彼女は制裁を……、と彼らは思っていたが、彼女は、彼らに近づくだけで何もしてこなかった。そう、何も。

 代わりに魔女は、呪いを残した。彼らの奥底にこびりつくような呪いを。



「―――次はないよ」



 その声は、深く、静かに、しかし、確固たる意思を持っていた。彼女は間違いなく本気だった。万が一にでも、翔太に手を出せば、彼らは、象が蟻を潰すように簡単に潰されてしまうだろう。

 ひぃっ! と悲鳴を上げるカロたちだったが、幸いにして彼女はそれ以上、何もする気配はなく、踵を返すと翔太の下へと戻っていった。それを確認した瞬間、彼らは腰が抜けたようにへろへろと地面に倒れこんでしまう。

 彼らは、齢一桁にして、決して触れてはいけないもの、そして、決して逆らってはいけないものが存在することを悟ったのだった。



  ◇  ◇  ◇



 高町なのはは、確かに幸せの絶頂だったのかもしれない。

 毎日、目を覚ませば、隣に翔太がいて、毎日、一緒に行動して、毎日、一緒にお風呂に入って、同じベットで眠る。これが、夢ではないか、と思ったことは何度あるだろうか。それが現実だと示すように翔太の手をゆっくりと握ってしまうこともあった。そして、彼の温もりを感じるたびに、『今』が現実であることをかみ締めるのだ。

 いつかの約束どおり、翔太とずっと一緒にいられる日々を幸せに思うのだ。

 そう、高町なのは幸せだった。幸せすぎて、上機嫌だった。おまけ程度にいる黒い敵がまったく気にならないほどに。だから、だからなのだろう。気が抜けていた、というべきかも知れない。すべてが上手くいっていて、ずっと上手くいくと思っていて。だから、今日と同じ明日が来ると信じて疑わなくて。

 ―――だから、今の『今』が高町なのはには理解できなかった。

「え?」

 ゆっくりと倒れていく身体。流れ出す血、血、血。床一面に広がる紅い液体の絨毯。見開かれた瞳孔は何も映しておらず、ただ虚空を見つめていた。

 その様子を見ていた周囲から悲鳴が聞こえる。叫び声から、倒れた彼を心配する声まで様々だ。しかし、なのはの耳にはそれら声は入ってこなかった。脳が処理能力を超えているのだ。大量の魔法を一瞬で処理してしまうほどのなのはの脳が、今の『現実』を一切、理解できていなかった。いや、正確には理解したくない、というべきだろうか。

 そう、高町なのはにとっては受け入れがたい現実だった。

 ―――蔵元翔太が、血を噴出しながら倒れる現実など。

 だが、受け入れざるを得ない。確かに現実だった。蔵元翔太が、銃で撃たれて倒れている。それが現実。

「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 それを理解した、受け入れたとき、なのはは叫んでいた。当たり前だ。それはなにはにとっては受け入れてはいけない現実。あってはいけない現実なのだから。

 油断。そう、油断といえば油断なのだろう。テロリストも、銃を持っていたとしても、なのはがバリアジャケットを展開し、翔太の一声があれば、一瞬で無効化できる相手なのだ。だからこそ、翔太が「様子を見よう」と言っても、反対もしなかった。元々、翔太が言うことに反論などするはずもないが。

 だが、油断したからこそ、翔太は撃たれてしまった。人質の中に紛れ込んでいたテロリストによって。今、そのテロリストは銃を構えて、こちらを威嚇している。「う、動くなっ!」と叫んでいるような気もするが、そんなことは耳に入らない。当たり前だ。そんなことは気にしていられないのだから。今は、翔太の事が最優先だった。

 急いで翔太に駆け寄る。だが、その途中で、テロリストがなのはに向けて銃を撃ってきた。むろん、バリアジャケットに阻まれてなのはには一切のダメージを与えない。だが、五月蝿かった。今は、翔太以外のことは考えたくないのに。だから、なのはは、蝿を追い払うように手を振るう。

「うるさい」

 その一動作だけで、銃を構えていたテロリストは、立っていたその場から、一瞬だけ浮遊し、次の瞬間にはすごい勢いで壁に叩きつけられていた。勢いはよほど凄まじかったのだろう。テロリストは、壁に叩きつけられた瞬間、かはっ、という肺から空気を搾り出すような声を残して気を失い、翔太と同じように床に倒れこんだ。

 なのはが使ったのは単なる浮遊魔法だ。通常であれば、軽いものを動かす魔法。しかし、これは日常的には使われない。なぜなら、この魔法は、動かす物の重さに比例して魔力を消費するからだ。さらに、それを動かす早さにも比例する。よって、大の大人一人を高速で動かすなど魔力の無駄遣いでしかないのだが、そんなことはなのはには関係なかった。今は兎にも角にも翔太が一番だった。

「ショウくんっ!」

 なのはが翔太に近づいたときには、そこは血の海だった。一体、何リットルが、流れ出たのだろう? というほどにおびただしいほどの血が床を染め上げていた。客たちは、悲痛な顔をしながら、翔太を見ているだけだった。その流れ出た血の量を見れば、致命傷だということは、誰の目にも明らかだったからだ。

 だが、それでも、なのはは自分の白い靴が汚れることも構わず翔太に近づく。

「ショウ……くん……」

 あまりの悲惨さに言葉を失った。

 おそらく、撃たれた弾は三発。胸の辺りに一発と腹部に二発の穴が見えた。そこから血が噴水のように流れ出ている。横を向いている翔太の顔は青白く、目は見開かれ、瞳孔は開いているように見える。

「れ、レイジングハートっ!」

 そんな翔太の現状が信じられなくて、なのはは愛機の名を呼ぶ。なのはは、回復魔法が使える。あの四月の事件のとき以来だが、それでも使えるのは間違いないのだ。

 ―――はやく、はやくしないと、ショウくんが●●じゃう。

 焦りながら、愛機が応えてくれるのを待つ。しかし、レイジングハートは応えない。

「レイジングハートっ!!」

 その愛機を呼ぶ声は、叫び声のような、泣き声のような声だった。いや、実際は涙声も入っていたかもしれない。応えてくれない愛機になのはは嫌な予感がして、それでも、レイジングハートなら、レイジングハートなら何とかしてくれると思って、愛機の名を呼ぶ。

 何度も、何度も、何度も。

 やがて、ようやくというタイミングでレイジングハートが応えた。

『―――Too late』

 ―――遅すぎた。

 その言葉の意味をなのはは理解できない。理解したくない。なのははその現実を受け入れられない。なぜなら、翔太がいる現実こそがなのはの現実であり、翔太が●●だ現実は、なのはにとって現実でないからだ。

「ねえ、ショウくん、起きてよ。ショウくん、ショウくん、ショウくんショウくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくんしょうくん、しょうくんっ!!」

 何度も、何度も、何度も彼の名前を呼び、彼の血まみれになった肩を揺する。血の海に沈んだ手を取るが、いつかのような温もりはなかった。彼は応えない。彼の目はなのはを見ない。彼の口からはなのはちゃん、と名前を呼んでくれることもない。何もかもが虚無だった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 いくら叫ぼうとも、いくら泣き叫ぼうとも、いくら現実を否定しても、目の前にある状況は変わらない。

 ―――そう、通常の手段では。

「ねぇっ! ショウくんっ! なんでもいいっ! どうでもいいっ! こんな世界も、何もかもどうなってもいいっ! ショウくん、笑ってよっ! 私を見てよっ! お話してよっ! 私を褒めてよっ! ずっと一緒にいてよっ! 名前を呼んでよぉ……」

 なのはの目から涙が流れる。その雫は、頬を伝い、顎から葉の雫のようになり、やがて水滴となって彼女が握る愛機―――レイジングハートの宝石の部分へと落ちる。なのはの涙が、レイジングハートの宝石部分に落ちた瞬間、レイジングハートの宝石が急に光りだした。

『OK! Master's desire is my desire!』

 突然、レイジングハートの全体が蒼く輝く。その蒼い輝きはなのはは覚えている。レイジングハートに内包された21個のジュエルシードが放つ光だ。翔太の状態にすっかり忘れていた。

 そう、そうだ、自分にはまだこれがあったのだ。

 ―――願いの叶う宝石『ジュエルシード』

 今のなのはが願うことはたった一つだけだった。

「ショウくんを助けてっ!!」

 少女の願いに応えるようにレイジングハートが蒼く蒼く輝く。その光がショッピングモール全体を照らしたかと思うと次の瞬間には光は収まり、光が収まった後には、ほぼ無傷となった翔太の姿があった。顔色も先ほどまでとは異なり、血が通っているように紅く、呼吸も確認できる。

 ほっ、と息を吐いたなのはは、すぐに翔太を外で待っているであろうクロノの下へと転送した。ついでに、人質となっていた客たちも。本当ならずっと翔太についておきたい。しかし、それはできなかった。なのはにはやらなければならないことがあるからだ。

「ゴミを掃除しないとね」

 そう、ゴミ掃除だ。翔太に危害を加えるなど、畜生にも劣る。なのはは一分の疑いもなくそう思っていた。だからこそ、掃除が必要だ。もう二度とゴミが翔太に手出しをしないようにしっかりと掃除しなければならないとなのはは思った。

『All right! My master. JS system set up serial I to X.』

 レイジングハートがジュエルシードによって作られたシステムを起動し、なのはが光に包まれた次の瞬間には、なのはの体躯は少女から女性へと変わっており、バリアジャケットも純白から漆黒と真紅のものへと変わっていた。

「いくよ、レイジングハート」

 容赦というものを微塵も持っていない魔法少女が、天誅を下すために動き出した。



  ◇  ◇  ◇



 俺は一体、いつ地獄に来たのだろう? とテロリストと呼ばれていた男は自問した。

 確かに、胸を張ってあの世に逝けるようなことはしていない。そういう自覚はあった。しかし、この地獄はありえない。

「ぎゃぁぁぁぁっ!」

 また一人、仲間だった男が悲鳴を上げる。銃を持っていたはずの右手は、ありえない方向に曲がっており、さらに曲がった腕を地面に叩きつけると手の甲を踏み砕く。ゴリッという何かが砕けるような音がして、また男はこの世ならざる悲鳴を上げた。

 魔法が支配する世界から解放を、そのスローガンを胸にテロ活動をしていた男は、今日の作戦に参加していた。目的を果たせば、人質を解放して、いくつも設定された逃走ルートから逃走。いつものやり方だった。

 だが、今日は時空管理局の奴らに突入を許し、あまつさえ戦闘になっている。その戦闘の最中に突然、転送がかけられ、しかも、気が付けば、ショッピングモールの屋上で、さらに、バインドで拘束された。それは誰も彼もが同じことだ。

 唯一、拘束されていないのは、一人、ぽつんと立つ女性だけ。おそらくデバイスと思われる杖を持った気味の悪いバリアジャケットに身を包まれた女性。この仕掛けが彼女の仕業だということは、容易に想像できた。

 彼女を認識した瞬間、怒声と罵声をはく仲間たち。自分もその一人だった。しかし、彼女は顔色一つ変えることなく、逆に罵声を浴びせていた一人に近づくと、躊躇なく、その手を取り―――折った。ばきっ、という鈍い音共に、顔色、眉一つ動かすことなく、仲間の腕を折った。

 それからは、阿鼻叫喚の地獄だ。冷や水を浴びせたように静まり返る周囲。その分、折られた男の悲鳴だけが、やけに響く。脂汗と痛みと恐怖からの涙と鼻水にまみれた男の表情。大の男が、テロリストが、と思うが、それを躊躇なく、顔色一つ変えることなくやる女性に戦慄した。

 人を傷つけるという行為は、少なからずストレスを与えるはずだ。だが、彼女は作業のように次々と悲鳴と腕の骨を折られた仲間を量産していく。

 ―――まさか、拷問部隊?

 管理局の裏組織とも噂される。自分達のようなテロリストから情報を聞き出すための組織があるという。そこでは、非人道的な手段すら使われるという。まさしく、彼女の所業が拷問といわずしてなんという。目の前に同じ釜の飯を食った仲間が苦悶の表情で倒れているのだ。次にああなるのは自分か、と思わせるのが狙いか。しかし、彼女は何も聞かない。ただ、作業のように続ける。

 量産される苦悶の表情と悲痛の声。特に銃を持っていた連中は酷い有様だ。顔を殴られ、銃を持っていた指は折られ、手の甲は粉砕され、二の腕は折られる。もはや使い物にならないだろう。いや、たとえ、戻ったとしても、正常に動くか疑問である。

「ああああ、あんたっ! な、なにが目的だっ! 何でも応えるっ! 喋るから、もうやめてくれっ!」

 勇敢な誰かが、制止の言葉を口にする。その声に一時だけ、停まる。そして、その言葉を発した男のほうを見ると、一言だけ口を開いた。

「何もない」

 その返答に驚く男。ならば、なぜこんなことをやっているのか? 意味が分からなかった。それは、勇敢な男も同じだったのだろう。

「だったら、どうしてこんなことをするんだっ!? あんた、管理局の人間じゃないのかっ!?」

 その応えも実に簡潔だった。すべてを見下すような、人としてみていないような瞳でこちらを見ながら一言だけ応えた。

「ゴミ掃除」

 そう、彼女は確かに言った。ゴミ掃除だと。ゴミとはつまり、自分達のような人間だろう、と。そして、掃除というのは、おそらくこのような活動が二度とできないようにすること。確かに、それが彼女がやっていることとすれば、それは間違いなく果たされているだろう。この場にいる誰もがこんな目に二度と会いたくないと恐怖を刻み込まれているのだから。

 やがて、女性は作業が終わったように動きを止めた。男は、幸いにして通信係だったので、銃を持っていなかったため、被害からは間逃れた。

 これで終わってくれたのか、とほっ、と息を吐いたのもつかの間、女性は空へと浮かぶ。

 ―――今度は何をするつもりだ?

 その答えはすぐに出た。なぜなら、彼女が掲げた杖の先に彼女の身長をはるかに越えた球体ができたからだ。

 ―――集束魔法。

 彼のような魔力を持っていない人間さえも、その魔力の密度が人知を超えている事が分かり、肌でビリビリと感じる。テロリストの中にもいる魔導師を見てみれば、ありえないものを見るような目で、ぽかんとしていた。現実を否定すらしていそうだ。

 やがて、準備が整ったのだろう。その間、男の周りは誰も動かない。動いても無駄だと分かったからだ。刷り込まれたからだ。阿鼻叫喚の地獄は、それを知らしめるには十分だった。そして、彼女の最後の行動は、間違いなく総仕上げだろう。

「恐怖を刻み込め――――スターライトブレイカー」

 その声が、男には怨嗟の声のように刻み込まれた。



  ◇  ◇  ◇





 高町なのははまどろみの中、頭に温かさを感じた。うっすらと目を明けてみると、そこには病院服を着た翔太の姿が。

 翔太は微笑んでいた。なのはが好きな笑みだ。頭から感じるのは翔太の手の平だろうか。おそらく頭を撫でてくれているのだろう。それが気持ちよかった。まるで猫のように目を細めて、その温もりを感じてしまう。

「なのはちゃん、お疲れさま」

 ―――うん、私頑張ったよ。

 それは声にはならない。眠すぎて、あまりに心地よすぎて。だが、なのはは満足していた。

 翔太が笑ってくれて、自分の傍にいてくれて、褒めてくれて、なのはを見てくれて、名前を呼んでくれるのだから。



 ―――高町なのはは、間違いなく幸せだった。





 空白期終わり

 A's編へ続く


















 
 

 
後書き
 拷問部隊ですか?
 いいえ、魔法少女です。 
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