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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第七十一話 決戦!大海獣

              第七十一話 決戦!大海獣
ロンド=ベルはアラスカからハワイに向かっていた。そこから日本に向かう予定である。だがそれは既にある者達にはわかっていることであった。
「そうか、ハワイにか」
マーグはそれを自らの乗艦の艦橋において聞いていた。ヘルモーズよりも小型の艦であった。
「どうされますか」
それに副官であるロゼが問うた。
「ハワイは確か諸島だったな」
「はい」
ロゼは彼の言葉に頷いた。
「それでは海が多いということになる」
「その通りでございます」
「ではあれを使うとしよう」
「あれでございますか」
「そうだ。丁度いいと思うが」
マーグは笑いもせず彼女にこう返した。
「どうかな」
「いいと思います」
そしてロゼもそれを認めた。
「それではすぐに」
「うん。あとポセイダル軍にも出撃を命じておいてくれ」
「ポセイダルにもですか」
「あとシャピロはどうかな」
「司令、御言葉ですが」
シャピロの名を聞いたところでロゼの顔色が少し曇った。
「あのシャピロという男は」
「地球人だから、とでも言うつもりかい?」
「いえ」
だがロゼはそれは否定した。
「そういう問題ではありません。ですが」
「君が彼を危険視しているのは知っているよ」
彼は優しい声でそう述べた。
「では尚更」
「ロゼ」
マーグはロゼの名を呼んだ。やはり優しい声であった。
「私は自分の部下は信じたい。それでは駄目なのか」
「信頼されるに値しない者もいます」
ロゼは反論した。
「あのシャピロこそまさにそれです。あの男の目には野心が宿っています」
「野心が」
「そもそもその野心の為に地球を裏切った男。どうして信じることにしましょう」
「だが私は彼を信じるよ」
「何故」
「さっきも言った筈だよ。自分の部下は誰であれ信じたいって」
「ですが」
それでもロゼは言う。
「あの者だけは」
「何も我々を裏切ったりすることはないと思うけれど?」
「それはそうですが」
バルマーと地球の力関係を見ればそれは一目瞭然であった。だからこそシャピロもバルマーに寝返ったのであるから。これはロゼも承知していた。
「私の背中を狙うというのなら大丈夫だ」
「何故そう言えるのですか?」
半ばくってかかっていた。ロゼは自分では気付いてはいないが少し感情的になっていた。
「司令に何かあればその後釜を狙う可能性も」
「私を守ってくれている者がいるからね」
「それは」
「君だよ」
マーグはロゼを見てこう言ってきた。
「えっ・・・・・・」
それを言われたロゼは思わずその整った顔をキョトンとさせた。
「あの、司令」
そして戸惑いながら言う。
「それは一体どういう意味でしょうか」
何故か少しモジモジとしていた。何処か少女の顔に戻っている。
「言ったままだよ」
マーグはにこやかに笑って答えた。
「君が副官として私のボディガードも務めてくれているからね。安心していられる」
「わ、私はそんな」
頬を赤らめさせて横に俯く。それがどうしてなのかは自分にもわからない。
「ただ・・・・・・自分の責務を果たしているだけです」
「それで充分だよ」
「そ、そうでしょうか」
何故こんなに戸惑うのか自分でもわからない。だがどうしても戸惑わずにはいられなかった。
「君がいられるから私は司令としての仕事に専念できる」
「はい」
「これからも頼むよ」
「わかりました。それでは以後もお側に」
「うん、頼むよ」
「はい」
「それでは軍を発進させよう。目標はハワイだ」
「了解」
こう言い渡すとマーグは自室に戻る。ロゼは一人艦橋に残った。
「な、何故なのかしら」
ロゼはまた顔を赤くしていた。
「司令の言葉を聞いていると。どうしても」
自分でも何が何かわからなかった。
「戸惑わずにはいられない。どうしてなのかしら」
「副官」
「はっ」
周りにいる部下の一人の言葉に我に返る。
「風邪でもひかれたのですか?顔が赤いですよ」
「な、何でもない」
慌ててその場を取り繕う。
「それで。どうしたのだ」
「ギャブレー殿から通信が入っておりますが」
「ギャブレーから」
「はい。司令を御呼びですが」
「司令は今お休み中だ。急な話なのか」
「いえ、そうでもないようですが」
「では私が出よう」
彼女は副官としてのロゼに戻っていた。
「すぐに通せ」
「わかりました」
この時彼女はまだ自分の心の中に気付いていなかった。だがこれにより彼女の運命は大きく変わることになる。だが彼女はそれにも気付いてはいなかった。そして自分の未来のことも。どんな力を持っていようとも彼女の心は人のそれであったからだ。人だからこそ彼女も弱い、だがそれにもやはり気付いてはいなかった。
ロンド=ベルはハワイまで僅かの距離にまで達していた。ハワイの管制から通信が入る。
「こちらの受け入れ準備は整いました」
「了解」
ブライトがそれに応える。
「では今から予定通りそちらに向かう。それでいいか」
「はい。お待ちしております」
そんなやり取りで終わった。そして彼等はそのままハワイに向かうのであった。
「久し振りのハワイだな」
ジュドーが自分の部屋で身体を伸ばしながら言った。見ればガンダムチームの面々が集まっている。
「何か。海を見ていると泳ぎたくなってくるぜ」
「もう、お兄ちゃんたら」
リィナがそれを聞いて困った顔をする。
「遊びに来たんじゃないのよ」
「わかってるよ。ここには中継で来たんだろ」
「へえ、わかってるじゃない」
エルがそれを聞いて言う。
「てっきり忘れてると思ってたわ」
「前から思っていたが御前俺を何だと思ってるんだ?」
「まあ固いことは言いっこなし」
「それに時間があったら本当に泳げるしね」
ルーも口を開いた。見れば彼等はかなりリラックスしている。
「けれど水着あったっけ?」
イーノがポツリと呟く。
「僕今洗濯中ですぐ着れるの持っていないよ」
「ナデシコで貸してくれるよ」
モンドが彼に答える。
「あっ、そうなんだ」
「結構派手な水着もあるよ。ユリカさんがこの前着てたやつ」
「ああ、あのピンクのビキニか」
ビーチャがそれに反応してきた。
「またあれは凄かったよな」
「ユリカさんプロポーション抜群だしね」
イーノが頷く。
「目の毒だったよ、本当に」
「おいおいドモン、一番驚いていたのは誰だよ」
「いいじゃないか、そんなこと。ジュドーだって」
「お、俺はだなあ」
ジュドーは向きになって返す。
「別によお。ユリカさんは何かなあ」
「歳が離れてるしね」
ルーが言った。
「そう。ちょっと高嶺の花ってやつだよ」
「意外だね、ジュドーがそんなこと言うなんて」
エルはそれを聞いてクスリと笑った。
「誰彼構わずってわけじゃなかったんだ」
「その前にユリカさんにはアキトさんがいるだろ。あの時だってよお」
「アキトさんにベタベタだったもんね」
「あの格好で抱きつくんだもの。見ているこっちが驚いたわ」
「まあその天真爛漫さがユリカさんなんだけれどな」
「ちょっとどころじゃなく天然だけれどね」
「まあな」
「それにしてもハワイの海って綺麗だね」
「ああ」
ジュドーは今度はプルの言葉に応えた。
「ここまで綺麗だと。何か見ていて落ち着くな」
「少し切り取ってお部屋に飾りたいね」
「ああ、できたらいいな」
プルツーがそれに頷く。
「二人でな。何時までも見ていたい」
「そうだね。シャングリラまで持って行こうよ」
「ジャンク屋に飾ってか。いいな」
「あそこにいる蛸も持って行ってね」
「蛸!?」
一同はプルのその言葉に反応した。
「蛸って・・・・・・何のこと!?」
「まさか。海まで大分あるし」
エルとルーは少し驚いて窓を覗いた。
「見える筈ないって」
「そうそう、幾らニュータイプでも」
「ガンダムファイターじゃないんだから」
「けれどいるよ」
プルは今度はビーチャとモンド、イーノに対して言った。
「ほら、あそこに」
「いるな、確かに」
プルツーも加わった。そして二人で海のある一点を指差す。
「一体どんな蛸なんだよ。化け物かよ」
ジュドーも首をかしげながら窓を覗き込む。皆顔を寄せ合って窓の外にある海を見ていた。
見れば確かに蛸がいた。プルはそれを見て誇らしげに胸を張る。
「ほらね、いたでしょ」
「確かに」
一同それに頷く。
「蛸だよな、どう見ても」
「ああ」
「しかし、何て大きさなんだよ」
「!?ちょっと待て」
だがここでプルツーが気付いた。
「どうしたの、プルツー」
「リィナ、よく見てくれ」
彼女は左にいたリィナに声をかけた。なお右にはプルがいる。
「何?」
「あの蛸、何かおかしくないか」
「大体ここから見えるのだけでもおかしいけれど」
「そういう問題じゃない。見てくれ」
彼女はさらに言う。
「あの頭・・・・・・何処かで見たことがある」
「何処かで」
「しかも足に・・・・・・頭があるように見えるんだ」
「頭!?まさか」
「ああ、似ていないか。あれに」
プルツーの顔がみるみるうちに不吉なものとなっていく。
「おかしいぞ、あれは」
「ううん。まさか」
「いや、まさかじゃねえ」
ジュドーが言った。
「あの蛸は」
「ええ、間違いないわよ」
ルーが続く。
「あれは・・・・・・」
「ドラゴノザウルスだと!?」
ラー=カイラムのレーダーが警報を鳴らしていた。ブライトがトーレスに顔を向けていた。
「はい、間違いありません」
トーレスがそれに答える。
「ドラゴノザウルスです。海上に出現しています」
「他にも正体不明のマシンが多数空中に現われています。どうやらこちらに向かっています」
「ミケーネか」
「いや、違うな」
だがここでアムロが言った。
「ミケーネはジャブローでの敗戦の後戦力の回復に忙しい筈だ。彼等である可能性は低い」
「では一体」
「話は後だ。すぐ迎撃に出よう」
「そうだな。今は話すよりも動く方が先だ」
クワトロもそれに頷いた。そして彼等はすぐに動いた。
出撃して海岸でドラゴノザウルスを待ち受ける。そして空から来る敵にも備えていた。
「ピグトロンまでいやがるぜ」
甲児が金色に輝く何処か昔のSF小説を思わせる外見の敵を見て言った。
「どう見たってミケーネなんだけれどな」
「いや、それがどうも違うらしい」
しかし大介はこう言ってそれを否定した。
「それでは一体」
「あれを見てくれ」
大介は今度は鉄也に応えた。
「あれはミケーネのマシンではない」
「むっ」
それはメギロートであった。バルマーの無人偵察機である。彼等もよく知っている機体であった。
「あれがいるってことはバルマーかよ」
「まず間違いはないな」
「遂に動き出したというわけですね」
「そうだ。それに今回は新型のマシンも出て来ている」
見ればメギロートに似たマシンも多数あった。それ等が空に展開していた。
「見たところ今は小手調べといったところのようだが」
「数は多い。油断はできませんね」
「そうだ。ここはドラゴノザウルスと彼等、二つに分けるべきじゃないかな」
「そうだな」
グローバルが大介の言葉に頷いた。
「大介君の言う通りだ。すぐにそうしよう」
「はい」
「まずは主力はバルマーのマシンを迎撃せよ」
「了解」
「そして水中用のマシンでドラゴノザウルスを迎え撃つ。この際ドラゴノザウルスの上陸は許すな」
「ハワイ市街地への損害を避ける為ですね」
「そうだ」
彼は早瀬の言葉に答えた。
「戦艦はそれぞれの部隊の援護に回れ。では健闘を祈る」
「了解」
こうして戦術が決定された。戦いはこうしてロンド=ベルがバルマー、そしてドラゴノザウルスを迎え撃つ形ではじまった。まずは水中に何機かのマシンが入る。
「今回兄さんは入らないのね」
「ああ、バルマーの方をやらせてもらう」
大介はマリアの言葉に返した。
「ボスは今回はボロットだしね」
「やっぱりこっちの方がいいだわさ」
ボスは上機嫌で言う。
「慣れたマシンでよ」
「ハンドル裁きも乗ってるしね」
「やっぱりおいら達にはボロットだよ」
ヌケとムチャも言う。
「そういうことだわざ。それじゃあ敵をどんどんやっつけてやるだわさ!」
「それはいいけどよ」
「何だよ、兜」
「今回ボロットにはミノフスキークラフトもミノフスキードライブもついてねえぞ」
「何、どういうことだわさ」
「ハロもな。全部他のマシンに回しちまった」
「兜、何で黙っていただわさ」
「昨日言ったじゃねえかよ。何言ってやがる」
「何時だわさ」
「飯食ってる時によ。ちゃんと言ったぜ」
「聞いてないだわさ」
ボスは反論した。
「飯食ってる時に何言っても聞こえないだわさ」
「そんなんでよくパイロットやってけるな」
「それ以外の時はちゃんと聞こえてるから心配ないだわさ」
「いや、そうじゃなくてよ」
甲児もいささか呆れていた。
「まあいいや。とにかく今は空は飛べねえからな」
「チェッ、ダイアナンAにはつけてるのに」
「ダイアナンAは修理装置があっからな。それにさやかさんも強いし」
「俺は強くないっていうのかよ。ボロットにだって補給装置があるだわさ」
「いいからとにかくフォローを頼むぜ。もう来ているんだからな」
「フン、いつもこうだわさ」
ボスはこう言ってむくれた。
「ボロットにばっかり。何時かギャフンと言わせてやるだわさ」
そんなことを言っている間にバルマー軍はハワイ市街に近付こうとしていた。ロンド=ベルはそれへの迎撃態勢を整え彼等を待ち構えていた。
「目標捕捉」
ヒイロが呟く。
「・・・・・・破壊する」
白い翼が舞った。そしてツインバスターライフルを構える。
それで敵を撃った。まずはそれで敵の小隊が一つ吹き飛んだ。
「今度は俺だ」
トロワが続く。空中高くアクロバチックに跳んだ後で狙いを定める。
「邪魔するのなら・・・・・・容赦はしない」
感情のない声で言った。そして一斉射撃を加えた。
無数のミサイルと弾丸が敵を貫いた。そしてまた敵が消え去った。
「何か二人共派手にやってるな、おい」
デュオがそれを見て言う。
「ここは俺も目立たなくちゃな」
「では行くのだな」
ウーヒェイがそれを聞いて言う。
「俺も出なくてはならないからな」
「それじゃあ行くぜ!」
「うむ」
二機のガンダムは空に舞った。どうやら彼等にミノフスキークラフトが回されていたらしい。
「チェッ、あいつ等が持ってたのかよ」
ボスがそれを見て嫌そうに呟く。
「ボロットにもたまにはスポットを当てて欲しいだわさ」
だが二人はボスのそんな嘆きをよそに動く。デュオは右に、ウーヒェイは左にそれぞれ動く。そして目の前にいる敵の部隊と正対した。
「一気に行くぜ!」
「行くぞナタク!」
二人は同時に動いた。ビームサイズとトライデントをそれぞれ出す。そしてそれで敵に斬り掛かった。
「やあっ!」
「はあっ!」
デュオが敵をまとめて両断するとウーヒェイは敵の中に踊り込んでトライデントを振り回した。それぞれやり方は違うがそれで敵をまとめて斬った。彼等の前と後ろでそれぞれ爆発が起こる。
「行くよサンドロック!」
残る一人カトルも攻撃に入った。彼の周りにマグアナック隊が姿を現わす。
「カトル様、間に合いましたね!」
「うん、丁度いいよ」
彼等はカトルの周りを覆った。そして一斉に攻撃に入る。
「皆、頼みます!」
「了解!」
一斉射撃を加えた。それで以って敵を吹き飛ばす。五人はそれぞれの戦い方で敵を屠ったのであった。
「ふむ」
それをモニターで遠くから見る男がいた。マーグであった。
「やはり彼等はかなりの戦闘力を持っているようだね」
「はい」
傍らにいるロゼがそれに応えた。
「やはり。油断のならない相手かと」
「そうだね」
「ですが勝てない相手ではないと思います」
「それはどうしてだい?」
「それは彼等の甘さにあります」
「甘さ」
「はい、私に策があります」
彼女は言った。
「策・・・・・・一体どんな」
「まずは次の作戦はポセイダル軍の担当でしたね」
「うん」
マーグはそれに頷いた。
「その通りだけれど」
「その作戦に私も参加させて下さい」
「君が?」
「はい。私は工作員として中に潜入します。そして」
「内部から彼等を撹乱し、破壊するというわけだね」
「如何でしょうか。彼等は戦災で焼け出された者を救ったことは常です。きっと上手く潜入できますが」
「いや、それは駄目だ」
だがマーグはそれを却下した。
「何故でしょうか」
ロゼは却下されながらも食い下がった。
「作戦に不備があるでしょうか。それなら」
「いや、いい作戦だと思うよ」
意外にもマーグはこう答えた。
「外から攻めて駄目ならば中から攻めるのがいい。これは基本だね」
「なら」
「しかしそれは危険を伴う。君自身にね」
「私のことなら」
「ロゼ」
マーグはロゼの言葉を遮るようにして言った。
「君は自分の身をあまりにも軽んじ過ぎる」
「ですがそれが」
「君の言いたいことはわかる。だが私はそうは思わない」
「・・・・・・・・・」
ロゼはマーグの話を聞くうちに沈黙してしまった。黙って話を聞いていた。
「君に何かあっては悲しむ者もいる。だからそんなリスクの高い作戦は採りたくはない」
「ですが」
「それなら超能力を使って潜入すればいい。工作の方法は幾らでもある。いいね」
「・・・・・・わかりました」
「その際はまた伝える。だが今はその時ではないんだ。わかったね」
「はい」
敬礼で応えた。ここまで言われては従うしかなかった。
「どちらにしろここで彼等の強さを正確に把握しておきたい」
そしてマーグはまた言った。
「メギロートをさらに出そう。いいね」
「了解」
とりあえずは武力偵察を続けることになった。だがロゼはマーグに対して心の中で思った。
(優し過ぎる)
と。かってのラオデキアの様に非情な指揮官の多いバルマーにおいてはこれは異様なことでもあった。
(その為指揮官としては)
しかし彼女は何故かそれを批判する気にはなれなかった。むしろそんなマーグの側に常にいたいとさえ思えるようになってきようとしていた。しかしまだそれには自分では気付いてはいなかったのであった。
その間にも戦いは続いていた。バルマーはさらにメギロート部隊を送りロンド=ベルに攻撃を仕掛けていた。その間にドラゴノザウルスはゲッターポセイドンやテキサスマックの攻撃を受けながらも徐々に海岸に近付いてきていた。
「まずいな、これは」
ブライトはドラゴノザウルスの状況を見て呟いた。
「このままでは上陸されてしまう」
「ダイザーに向かってもらいましょうか」
「マリンスペイザーを出していないのにか」
トーレスにこう返す。
「ここは一時誰かに乗り換えてもらって。これは危険ですよ」
「それも手か。どうするべきか」
「ネッサーも今は手が離せませんし」
見ればブンタのネッサーもガイキング達と共にバルマー軍にあたっていた。当初はドラゴノザウルスに当たっていたのだがバルマー軍が増えるにつれてそちらに向かったのである。
「ううむ」
「ここはスペイザーしか」
「仕方ないか。ではデュークとマジンガーチームの誰かに通信を入れよう」
「はい」
その通信を入れようとした時だった。突如としてラー=カイラムの前に白い光が現われた。
「光!?」
「これは一体」
皆思わずそれに目を向けた。その光の中からアストラナガンがその黒い姿をゆっくりと現わしてきた。
「イングラム教官」
「暫く振りだな、リュウセイ」
彼はリュウセイに顔を向けてこう言った。
「元気そうで何よりだ」
「あっ、こりゃどうも」
リュウセイはそれを受けて言葉を返す。
「教官も元気そうで何より。ところで」
「私がここに来た理由だな」
「そうですよ、何でまたいきなり」
リュウセイは問う。
「いつもそうやっていきなり出て来ますけれど。今回はどうしたんですか?」
「今回もっていつもああなの?」
「どうやらそうみたいですね」
アクアがエクセレンの言葉に答えた。
「イングラム少佐といえば神出鬼没ですから」
「うわ、何か昔のアニメのニヒルな味方みたい」
「みたいじゃなくてそのものですよ」
アクアはさらに言う。
「だってこの前の戦いじゃ途中から最後の方まで敵だったんですから」
「うわあ、何てベタな展開」
エクセレンはそれを聞いて苦笑いを浮かべていた。だがイングラムは当然ながらそんな彼女には気付くこともなく平然とリュウセイに顔を向けていた。
「私が今回御前達の前に姿を現わしたのは」
「はい」
「御前達の前に恐るべき敵が姿を現わそうとしているからだ」
「あの蛸のことですか?」
リュウセイはそう言って海にいるドラゴノザウルスを指差した。
「今あれで困っているんですけれど」
「あんな軽いものではない」
「軽いねえ」
エクセレンはそれを聞いてまた言った。
「あれの何処が軽いのかしら」
「私が見ているのはもっと大きなものだ」
「大きなもの」
「そうだ、詳しい話は後だ。まずは」
そう言いながら前に出る。
「この場を切り抜けるとしよう。私も協力しよう」
「よし、教官が来たからには百人力だぜ」
リュウセイはイングラムが前に出て来たのを見て声をあげた。
「ガンガンやるぜ、ガンガン」
「では私に続け、行くぞ」
「了解」
アヤがそれに応えた。
「皆行くわよ」
「うむ」
「何かリュウセイに引っ張られている気もするがな」
マヤとライも頷いた。ライはいささか複雑な顔であったが。
イングラムの後に四機のSRXチームのマシンが続いた。彼はそのままドラゴノザウルスに向かっていた。
「軽いものとは言っても何とかしないわけにはいかない」
彼は言った。
「行くぞ」
そしてガン=ファミリアを出した。そしてそれで攻撃を仕掛ける。
それは海中にいるドラゴノザウルスを的確に撃った。これで今までその動きを止めていなかった怪物が一瞬だが動きを止めた。
「ギャオオオオオオオオオオン!」
「よし、今だ!」
リュウセイはそれを見逃さなかった。
「一気にいくぜ皆!」
「ええ、わかったわ!」
まずはアヤがそれに頷く。
「援護は任せろ」
ライも言う。
「そして私もいる。一気に終わらせるぞ」
レビも。四人は同時に攻撃を放った。
まずはストライク=シールドが。続いてハイゾルランチャーが。アヤとライの攻撃が炸裂した。
続いてレビのパワードが放ったHTBキャノンが撃った。これでドラゴノザウルスはかなりのダメージを被った。だがそれでも獣はまだ生きていた。
「しぶとい奴だ。だが!」
最後にリュウセイが突っ込む。ウィングから元の形に変形し、海の中に飛び込む。
海の中にいるドラゴノザウルスは既に満身創痍であった。彼はそのドラゴノザウルスに対して拳を向けた。
「いっけえええええええええええーーーーーーーーーーっ!」
ナックルを放つ。全身全霊の力で以って拳を撃つ。Zイが離れ、変形して海から出ると今までいた場所で
巨大な爆発が起こった。こうしてドラゴノザウルスは滅んだのであった。
「終わったなZイが離れ、変形して海から出ると今までいた場所で
巨大な爆発が起こった。こうしてドラゴノザウルスは滅んだのであった。
「終わったな」
「ああ、一時はどうなるかと思ったがな」
ライがリュウセイに応える。
「これでハワイの危機は去ったな」
「いや、残念だがまだだ」
だがここでイングラムがこう言った。
「教官」
「というと今回ここに来られら理由は」
「ああ、その通りだ」
イングラムは頷いた。その間に戦いはもう終わろうとしていた。メギロート達はドラゴノザウルスが滅んだのを見て一斉に姿を消した。ピグトロンもマジンガーとグレートにより倒されてしまっていた。とりあえずは敵を退けた形になっていたのであった。
「話せば長くなる」
イングラムはまた言った。
「暫くそちらに留まりたい。いいか」
「うむ、こちらは構わない」
グローバルが彼に応えた。
「こちらも話を聞きたい。いいか」
「了解」
こうしてイングラムはロンド=ベルに合流した。漆黒の堕天使は今その黒い翼をマクロスの銀の身体の上に降ろした。そして彼等の中に入るのであった。
戦いが終わったことは事実であった。しかし同時に新たな謎と戦いがはじまろうとしていた。それはロンド=ベルだけでなくバルマーにもわかっていた。
「今度はイングラムがか」
「はい」
マーグはロゼからの報告を受けていた。ロゼは彼の前に片膝をつき報告を述べていた。
「ロンド=ベルに合流した模様です」
「我々のことに気付いたか」
「おそらくは。どうされますか」
「いや、特に手は打たなくていい」
しかしマーグはこう述べた。
「ただし兵は増やそう。シャピロを呼べ」
「宜しいのですね」
「先にも言ったね。構わないと」
「わかりました、それでは」
不本意ではあったがそれに頷いた。
「彼等とポセイダルで。二重の備えと致しましょう」
「そして私も出る」
「司令も」
「そうだ。最初は見ているだけにしようと思っていたがイングラムが来たとなると話は違う」
彼は言った。
「私も出なければ。わかったね」
「わかりました。では」
ロゼはここで言った。
「私も行かせて下さい」
「君もかい?」
「はい、イングラムはバルマーにとっては不倶戴天の裏切者。裏切者を捨て置くことはできませんから」
「いいのかい、それで」
「司令」
ロゼはマーグの言葉にスッと笑った。
「私が女だからと思っておられるのですか?」
「いや、そうではないけれど」
「御安心下さい。司令の身は何があっても御護り致しますから」
「そうか。そこまで言うのなら」
マーグとて拒むことはできなかった。
「頼むよ」
「お任せ下さい」
彼等も戦場に向かうこととなった。戦いはまた変わろうとしていた。今様々な者達が地球においてそれぞれの心と野望をぶつかり合わせていた。

第七十一話完
2006・1・30 
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