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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第六十八話 集結!!七大将軍

ジャブローへの攻撃が失敗に終わった後ミケーネ帝国軍は岡の言葉通りジャブローから北にあるギアナ高地近辺で軍を集結させていた。そこに続々と兵がやって来ていた。
「超人将軍ユリシーザ、到着しました」
「悪霊将軍ハーディアス、ここに」
「大昆虫将軍スカラベ、参りました」
「猛獣将軍ライガーンでございます」
異形の者達が暗黒大将軍の周りに集まってきていた。そして暗黒大将軍は彼等を見てまず言った。
「遠地よりはるばる御苦労だったな」
「いえ」
将軍達はそのねぎらいの言葉に恭しく頭を垂れた。
「暗黒大将軍、そしてミケーネ帝国の為ならば」
「我等例え火の中水の中であっても」
「済まぬな」
暗黒大将軍はそんな彼等に対してまた言った。
「ではその命預からさせてもらいたいが」
「はっ」
「ジャブローを攻略する。よいな」
「そしてそこを我等の地上攻略の本拠地とすると」
「そうだ」
今度は強い声で頷いた。
「総攻撃を仕掛ける。よいな」
「了解」
「敵はロンド=ベルだ」
「ロンド=ベル」
その名を聞いた将軍達の顔色が変わった。
「手強いぞ。それはわかっているな」
「無論」
「用心してかかれ。敵は今守りを固めておる」
「ではその陣は私が崩して御覧に入れましょう」
「超人将軍か」
「はい」
見ればユリシーザが名乗り出てきていた。
「私がまず敵に切り込みます。そして血路を」
「いや、それはそれがしが」
今度はライガーンが名乗り出た。
「ジャブロー一番乗りは。是非それがしが」
「何を言うか、それはわしの役目だ」
今度はハーディアスが出て来た。
「この悪霊将軍こそジャブロー一番乗りの大任を果たすのだ」
「馬鹿を言え」
「それはわしが」
将軍達は互いに言い争いをはじめた。だがそれは暗黒大将軍達によって阻まれた。
「まあ待て」
「将軍」
「ここはわしに任せよ。今その任を与える者を選ぶ」
「それは」
将軍達はそれを聞いて固唾を飲んだ。そして彼の裁決を待った。
「超人将軍」
「はっ」
ユリシーザが顔を上げる。
「先陣は貴殿に任せる。よいな」
「有り難き幸せ」
「そして次は猛獣将軍」
「はっ」
「主力を率いてくれ。よいな」
「わかりました」
ライガーンはそれを聞き恭しく頭を垂れた。
「そして右は大昆虫将軍」
「はっ」
「左は妖爬虫将軍」
「わかりました」
「それぞれの軍で以って担当するように。よいな」
「了解しました」
二人はそれに頷いた。
「そして怪鳥将軍と魔魚将軍はそれの援護」
「了解」
「畏まりました」
「悪霊将軍は遊撃戦力だ。自由に動いてよい」
「わかりました」
こうして瞬く間に布陣を命じた。その統率力は流石と言えるものであった。
「わしは予備戦力を以って全軍の指揮にあたる」
「はい」
「何かればすぐに動こう。では全軍出撃するぞ」
「了解」
こうしてミケーネ帝国はその全軍を以ってジャブローに向かった。そしてその動きはすぐにロンド=ベルにも伝わった。
「ミケーネ帝国軍が動きました」
「よし」
岡は司令室でその報告を聞いた。そしてすぐにモニターを開いた。
「大文字博士」
「はい」
開いた先は大空魔竜の艦橋であった。大文字がすぐに姿を現わした。
「遂に来ました」
「そうですか」
「既にこちらの迎撃態勢は整っております」
「こちらもです」
「では宜しく頼みますぞ」
「はい、こちらこそ」
二人は互いに頷き合った。そして勝利を誓い合うのであった。
ロンド=ベルは既に戦闘態勢に入っていた。そして敵を見据えていた。
「敵発見」
ライトがマギーを見て報告する。
「これはまた。とんでもない数だね」
「どれだけいるんだ?」
「いいか、よく聞けよ」
「ああ」
「ジャングルが三で敵が七だ」
「どっかで聞いた表現だな、おい」
タップがそこで突っ込みを入れる。
「おっ、わかったか」
「っていうか宇宙怪獣のそれのままじゃねえのかよ」
ケーンも言う。
「元ネタがわかるとは鋭いな」
「わからねえ奴がいるのかよ」
「本当のところはどうなんだよ。そんなにいるのか?」
「残念だがそれは本当さ」
「ルリちゃん、マジ?」
「はい」
ケーンはルリに問うた。そしてルリはそれに答えた。
「ライトさんの仰る通りです。戦闘獣がジャングルを覆っています」
「七三の割合で」
「はい」
「何とまあ」
「おいおい、マギーちゃんを信用してないのか」
「マギーちゃんじゃなくておめえを信用してねえんだよ」
「これはまた」
「だっておめえよく嘘つくから」
タップが言う。
「嘘?さて、何のことだか」
「そうじゃなきゃハッタリだよな。大体いつもおめえはよお」
「あんた達三人共そうだと思うけれど」
「何だとアスカ」
入って来たアスカにも刃を向ける。
「大体敵が来てるのにそんなにしゃべってていいの?」
「いいんだよ、俺達は」
「そうだそうだ」
「その根拠は?」
「それは俺達がドラグナーチームだからだ」
「それ以外に何の理由があるんだよ」
「あっきれた」
ケーンとタップの言葉を聞いたアスカの言葉である。
「そんなのだからお笑いになるのよ。チャンバラトリオみたいに」
「ちょっと待て、あれ三人じゃねえぞ」
「あれっ、そうだったの」
「それを言うのならレッツゴー三匹じゃないのかな」
ライトが言う。
「ジュン、チョーサク、ショージってな」
「つまりわて等のことですな」
「流石ライトはん、よう知ってはる」
「その意気で将来はコメディアンでんな」
「おいおい、コメディアンか」
ミオのファミリアの三匹にそう返す。
「せめてシェークスピア劇の主役とか言って欲しいな」
「御気に召すまま?」
「きついな、アスカは」
「あんたなんて精々喜劇役者と。間違ってもハムレットやロミオなんて言わないでよ」
「狙ってたんだけどな。マクダフとか」
「マクベスじゃないの」
「あれは声が低くないと映えないからパス。やっぱりこのライト様は見栄えのいい王子様じゃなきゃな」
「じゃあ俺オセロー」
「俺は何がいいかな」
「あんた達にはシェークスピアは似合わないって言ってるでしょ」
アスカがまた言う。
「またきっついねえ」
「本当は見たい癖に」
「そんなことよりマギーはどうなのよ」
「おっと」
「ちゃんと見てなさいよ。今何処にいるのよ」
「ああ、今見られるところまで入ったぞ」
「えっ!?」
アスカはいきなり言われてキョトンとした顔になった。
「もう!?」
「ほら、前」
「おお、また多いねえ」
「どれだけいるんだろうね、本当に」
ケーンとタップはやはりいつものままであった。
「な、言った通りだろ」
ライトは得意気に言う。
「マギーちゃんはいつも正しいのさ」
「そういうことは早く言いなさい!」
アスカもいい加減切れてきた。
「来てからじゃ遅いでしょ!大体あんた達は」
「アスカ、敵の攻撃がはじまったよ」
「うっ」
シンジの言葉に顔を前に向ける。
「すぐに迎撃に掛かって」
「わかってるわよ」
アスカはそれに頷きポジトロンライフルを構えた。
「三馬鹿とは違うってとこ見せてやるわよ!」
「三馬鹿って誰なんだよ」
「まさか俺達?」
「やれやれだね」
「こら、そこに馬鹿共!」
ラー=カイラムのブリッジからダグラス大尉の怒声が聞こえてきた。
「さっさと戦闘に向かえ!そんなところでさぼっていると許さんぞ!」
「うわ、大尉殿がお怒りだ」
「さっさと行こうぜ」
「さっさとではない!早く行け!」
彼はまだ怒っていた。
「大体貴様等は」
「まあ大尉殿」
ここでベンが仲裁に入る。
「ワカバ少尉殿も今行かれましたし」
「軍曹!貴様がそうやってあの連中を甘やかすからだな」
「まあダグラス大尉も落ち着いて」
ブライトも言った。
「怒っていては冷静な判断は」
「ううむ」
「さて今のうちに」
「攻撃開始!」
「あのフォーメーションで行くぜ!」
ライト、タップ、そしてケーンはフォーメーションを組んだ。そして光子バズーカを一斉に放つ。
「よっし!」
「今日も絶好調!」
いきなり目の前にいる戦闘獣の小隊を消し飛ばす。軽さはともかく腕は充分であった。
「何だかんだ言ってやりますね、連中も」
「ああ」
ブライトはトーレスの言葉に頷いた。
「見事なものだな」
「全く」
ダグラスは苦い顔でそれに応えた。
「最初からそう真面目にしていれば」
「まあまあ」
そんな彼をまたベンが宥める。ラー=カイラムの艦橋も相変わらずであった。
「敵が迎撃して参りました」
「流石と言うべきかな」
暗黒大将軍はスカラベからの報告に応えた。
「ロンド=ベル、容易な相手ではない」
「はい」
「これだけの数を前に臆することがないとは。だがこちらも手を緩めるな」
「はっ」
「包囲殲滅にかかれ」
彼は指示を下した。
「数ならば我等は負けてはおらん。それで徐々に潰していく」
「了解」
ミケーネは数で押す作戦を採った。そして損害をものともせず前進を開始した。だがここでロンド=ベルは動いた。
「ヘッ、幾ら数で来ようってな」
まずはマサキが言った。
「俺達には通用しねえんだよ。シロ、クロ、いつものあれをやるぜ」
「あれか」
「じゃあさっさとやるニャ」
「おい、何でそう素っ気ねえんだよ」
そんなファミリア達に対して不平を述べる。
「だっていつもやってることだから」
「あたし達にとっちゃいつもの光景だニャ」
「ヘッ、じゃあいいよ」
マサキはいささかふてくされながら言った。
「やることは変わらねえしな。じゃあ行くぜ!」
サイバスターは敵の真っ只中に躍り出た。
「ヌッ、サイバスターか!」
「攻撃を集中させよ!」
将軍達の指示を受けてすぐに攻撃が仕掛けられる。だがサイバスターはそれを何なくかわしていく。
「戦闘獣でサイバスターを捉えられるかよ!」
「ちょっよマサキ、一人で何やってるのよ!」
そこにリューネのヴァルシオーネがやって来た。
「リューネ」
「あたしもいるよ!どのみちこれだけの数サイバスターだけじゃ無理でしょ」
「まあな」
「そういうこと。あたしも混ぜてよ」
「まあそういうことなら」
「あたしの他にもいるしね」
「他にもって」
マサキはその言葉に眉を顰めさせた。
「誰なんだよ」
「僕だ」
ヤンロンが出て来た。
「私も」
テュッティも。
「あたしも忘れないでね」
ミオもいた。四機の魔装機神がここに揃った。
「一人じゃまとめて相手できないけど五人いれば何とかなるわよね」
「そういうことだ」
「これだけの数でもあの攻撃を加えれば」
「何とでもなるよ」
「ヘッ、じゃあやるかい?」
「勿論」
「無論。その為に来た」
リューネとヤンロンが答える。
「それじゃあ早速やるぜ!」
サイバスターを筆頭とした五機は一斉に散った。
「いっけえええええーーーーーーーーーーーーっ!」
まずはマサキが叫んだ。
「サイフラァーーーーーーーーシュ!」
そしてサイフラッシュを放った。他の四機もそれに続く。これによりロンド=ベルを包囲せんとしていたミケーネ軍は大きなダメージを受けた。
「ヌウッ!」
それは将軍達も襲った。破壊された戦闘獣こそ少なかったがそれぞれ大きなダメージを受けていた。
「クッ、何ということだ!」
暗黒大将軍からもそれは見えていた。そして苦悶の言葉を漏らした。
「ぬかったわ、奴等の存在を忘れていたわ」
「将軍、ロンド=ベルが反撃に転じてきました!」
そこでまた報告が入った、見ればロンド=ベルはダメージを受けているミケーネの戦闘獣達に対して激しい攻撃を浴びせはじめていた。
「よし、今だ!」
ショウのビルバインが突撃を仕掛ける。
「一気にやるぞ!」
「やっちゃえショウ!」
チャムも叫ぶ。そしてビルバインはそのオーラソードを抜いた。
「はあああああああああっ!」
目の前を飛ぶ戦闘獣を切りつける。そして唐竹割りにしたのであった。
「ショウにばかり格好いい場面は独占させねえぜ!」
それにトッドが続く。彼のダンバインに攻撃が集中する。だが彼はそれを分身でかわす。
「甘いんだよ!」
そして攻撃に移る。オーラソードに炎が宿った様に見えた。
戦闘獣をその炎が宿った剣で貫く。それは戦闘獣を完全に仕留めていた。
爆発の中トッドは更に舞う。次々にそのオーラソードで敵を屠っていく。彼の周りには最早炎と爆風だけがあった。
インディゴブルーのダンバインが紅に見える程であった。
「トッドもやるわね」
「ここでやらなきゃ洒落にならないからね」
彼はマーベルにこう返した。
「ジャブローを陥落させられたらな。アメリカもやばくなる」
「アメリカも」
「ここを拠点にでもされて攻撃されたらたまったものじゃないんでな。そういうことは潰させてもらうぜ」
「戦略ってやつね」
「そうさ。ここが陥ちたらまずやばいのは御前さんのところだろう」
「テキサスが」
「ああ。南にあるだけにな。違うか?」
「言われてみればそうね」
マーベルはそれに頷いた。
「それじゃあここでしっかりしないとね」
「マーベルはいつもしっかりしてるじゃない」
そんな彼女にチャムが言った。
「ショウやトッドなんかより」
「おい、俺もかよ」
二人はそれを聞いて同時に声をあげた。
「うん。大人だしね」
「確かに歳はくってるわね」
マーベルは穏やかに笑いながらそれに応えた。
「けれどパイロットとしてね。今一つじゃないかしら」
「別にそうは思わないけど」
「有り難う。それじゃあここでそれを証明してみせるわね」
「うん、それがいいよ」
「俺もやるか」
「私も」
ニーやキーンも出て来た。
「最近何かと影が薄いからな」
「これでも聖戦士なんだし。しっかりしたところ見せないと」
「ニー、後ろは任せてね」
そこにはリムルもいた。
「ビアレスはサポートには向かないけれど」
「接近戦用だからな、それは」
それを聞いたトッドが言った。
「オーラバトラーの中でも特にな」
「それで少し困る時があるのだけれど」
「何、それでもやり方があるんだよ」
「やり方?」
「姫さんはそれなりに剣もできるようになったしな。思いきって前に出なよ」
「けれどそれじゃあサポートが」
「それもやりようなんだよ。何もサポートってのは後ろからだけやるもんじゃないんだ」
トッドはさらに言う。
「派手に斬るのもそれさ。わかったな」
「それじゃあ」
「頑張りなよ、要は度胸ってこそさ」
「ええ」
こうして三人も前に出た。そしてガラリアもそこにはいた。
「ガラリア」
「私も何かと影が薄いのでな」
彼女は笑いながらショウにこう声をかけてきた。
「たまには活躍の場を見せておかないとな。忘れられてします」
「ガラリアも普通に強いと思うけれど」
「ただ強いだけでは駄目なのだよ」
チャムに対して言った。
「生半可な腕ではな。かえって怪我をする」
「そうなのかなあ」
「そうだ。だからこそここでそうではないことも見せる」
オーラソードに炎を宿らせる。
「来い、思う存分相手をしてやろう」
そう言って目の前の戦闘獣達に向かう。早速数機を切り伏せた。
「うわあ、やっぱり凄いねえ」
それを見たチャムが感嘆の言葉を口にする。
「やっぱりドレイク軍でバーンと争っていただけはあるよね」
「バーンか」
その名を聞いたショウは少し複雑な顔をさせた。
「あいつも。今はどうしているかな」
「どうせヨーロッパで御前さんを倒すことばかり考えているさ」
トッドがここでこう言ってきた。
「俺をか」
「あの旦那は一つのこと以外考えられねえからな。自分では気付いていないみたいだが」
「あれで気付かないの」
「自分は案外自分のことはわからないものさ」
ショウはチャムにこう述べた。
「特に生真面目な人間はな」
「俺みたいに少し不真面目さを持たないとな」
「トッドは単に軽いだけでしょ」
「へっ、いつも通り言ってくれるね」
「どうせ口が悪いですよ~~~~だ」
「それはそうとまた敵がこっちまで来ているぞ」
「おっと」
「いけない」
トッドとチャムはショウの言葉で言い合いを止めた。
「全く、次から次へとまあ」
「全然数が減らないね」
「いや、減ってはいるさ」
ショウは前を見据えて言う。
「ただもっと減らす必要がある。それだけさ」
「それじゃあ行くか」
「よし」
ショウのビルバインとトッドのダンバインは動きを合わせた。二機のオーラバトラーは同時に空を駆った。
「ショウ、遅れるんじゃねえぜ!」
「わかってる!」
彼等は左右に一旦散りそこから敵の小隊に突進する。当然ながらその手にはオーラソードが握られている。
「はあああああっ!」
「やるぜ!」
二つの影が敵を切り裂く。そして戦闘獣達が空中で二つに割れていく。彼等もまたその剣の腕をあますところなく見せていたのであった。
魔装機神達の攻撃がやはり決め手となっていた。ミケーネ軍は攻勢に出て来たロンド=ベルに対して守勢に回っていた。
「中軍が突破されました!」
暗黒大将軍の下に報告が入る。
「左右両軍共に壊滅状態!最早前線を維持できておりません!」
「水中部隊と航空部隊は」
「こちらも壊滅しております!そして遊撃軍も!」
「ヌウウ」
「将軍、どう為されますか」
それを聞いた腹心である獣魔将軍が問うてきた。
「このままでは我が軍は」
「後詰を投入せよ」
だがそれでも暗黒大将軍は冷静さを失ってはいなかった。落ち着き払った態度でこう指示を下した。
「それで戦線を再構築する。よいな」
「わかりました。それでは」
こうして最後の軍が投入された。だがそれでも勢いは戻らなかった。
暗黒大将軍が自ら前線に出て戦う。それでもミケーネの劣勢は覆らず戦いは次第に彼等にとって壊滅的なものとなろうとしていた。その時であった。
「フン、所詮その程度か」
「何!?」
何処からか声がした。
「ミケーネ帝国、口程にもないわ」
「誰だ、そこにいるのは」
暗黒大将軍はその声に対して問うた。
「ミケーネを侮辱することは許さぬぞ」
「安心せよ、我等とてミケーネの者」
「何だと」
ここでその声は我等と言った。
「助太刀に来たのだ。安心するがいい」
「ここは助けてやろう」
そして二つの移動要塞と戦闘獣達が姿を現わした。その二つの移動要塞を見た甲児が声をあげた。
「ブードとグールかよ!」
「久しいな、兜甲児よ」
男の声を女の声が同時に聞こえてきた。
「元気でいるようだな、何よりだ」
「あしゅら男爵!」
海にある移動要塞ブードには右半分が男、そして左半分が女の異形の者がいた。フードで全身を覆っている。
「そしてわしもいる」
空にある移動要塞グールからまた声がした。そこには自身の首を小脇に抱えた第二次世界大戦のドイツ軍の軍服を身に纏った男がいた。
「ブロッケン伯爵もかよ」
「フフフ、我等はミケーネの力により甦ってきたのだ」
「別に頼んだ覚えはねえぜ」
「貴様に頼まれるいわれはないわ!」
あしゅら男爵はその言葉にいきなり激昂してきた。
「貴様等への復讐の為に甦ってくたのだからな!」
「だから俺はおめえ等なんか呼んだ覚えはねえって言ってるだろ!」
「呼ばれてもおらぬわ!話がややこあしくなるから黙っておれ!」
「何だと!」
「甲児君も落ち着きなさいよ」
そんな彼をさやかが窘める。
「とにかく今は彼等は生き返った理由を聞かないと」
「そうだな」
「しかし敵から理由を聞くってのも」
「変な話だな、おい」
ダバとキャオがそう言い合う。何はともあれ二人の説明がはじまった。
「確かにあの時我等は死んだ」
「そのままでいてくれてよかったのにな」
「だから黙っておれ!それでだな」
また甲児を黙らせてから言う。
「その亡骸はミケーネ帝国に回収された。そしてドクターヘルによって復活させて頂いたのだ」
「何だって、ドクターヘルだと!?」
それを聞いた甲児がまた声をあげた。
「左様」
あしゅら男爵は頷く。なお彼はこの時自分の発言の意味をまだわかってはいなかった。
「ミケーネにより復活されていたドクターヘルによってな」
「何てこった」
甲児はそれを聞いて呻く。
「あいつまで生きていたのかよ」
「それがどうしたのだ、兜甲児よ」
ブロッケン伯爵は得意な顔で彼に問うてきた。
「ドクターヘルが生きておられたことがそんなに恐ろしいのか」
「いや、やっぱりな、なんて思ってたからよ」
「驚いてはおらぬのか」
「おめえ等が今ここにいるとな。まあ少し驚いちまったけれどな」
「フフフ、素直だな」
「けどな」
ここで甲児の口調が変わった。
「何だ?」
「おめえ等そんなことベラベラ喋っていいのか?」
「何!?」
「それって軍事機密じゃねえのかよ、ミケーネの」
「ムッ」
それを聞いた二人の顔色が一変する。
「ドクターヘルが生きていたなんてよ。すげえニュースだぜ」
「今この話全世界に流れたわよね」
「間抜けなことだな、相変わらず」
さやかと鉄也も言った。
「どうするんだよ、そんなこと言っていいのかよ」
「それが貴様等にどう関係あるというのだ!」
「あらら、逆キレ」
「お決まりのパターンってやつだな」
レミーとキリーがそれに突っ込みを入れる。
「どのみち貴様等は全員ここで死ぬのだ!大人しく首を洗っておけ!」
「そうかい、何か決まりきった台詞だな!」
「マンネリこそが我等が王道!」
「そんなことに携わる程我々はオーソドックスではないのだ!」
「そうかい、じゃあこれまで通り捻り潰してやるぜ!」
「行くぞ兜甲児!」
「今日こそは決着をつけてくれる!」
暗黒大将軍の指示を待つまでもなく彼等は動いていた。そして前線で積極的に攻撃に出る。
「死ねい!」
ブードからミサイルが飛ぶ。それはマジンガーを正確に狙っていた。
だがそれはかわされてしまった。かわした甲児が叫ぶ。
「外れだぜ、下手糞!」
「おのれ!」
あしゅら男爵はそれを聞いて激昂した声をあげる。
「潜水艦で空のものを狙おうとするからよ!」
そんな彼にブロッケン伯爵が言う。
「何だと!」
「空には空だ!今わしが手本を見せてやろう!」
そして破壊光線を出す。だがそれもマジンガーにかわされてしまった。
「狙いが甘いんだよ!」
「何だと!」
ブロッケンも激昂した。
「わしを愚弄するというのか!」
「ほれ見よ、お主も外したではないか」
あしゅら男爵がそれを見て楽しそうに言う。
「もう少ししっかり狙わんか」
「貴様にだけは言われたくはないわ!」
今度はあしゅら男爵に対して叫んだ。
「わしを馬鹿にすることは許さんぞ!」
「馬鹿にはしておらん。事実を言っているだけだ!」
「何!」
二人は喧嘩をはじめた。最早ロンド=ベルへの戦闘よりそちらを優先させていると言ってもよい程であった。その間に彼等の指揮する戦闘獣達も次々と撃破されてしまっていた。
「奴等は何の為に来たのだ」
暗黒大将軍は戦いよりも喧嘩を優先させる二人を見て呟いた。
「さて」
これには部下達も答えられなかった。首を傾げるだけであった。
「ですが時間は稼げたかと」
「時間か」
暗黒大将軍はここに何かを見た。
そして今の自軍を見る。とても戦える状況ではなかった。彼は遂に決断を下した。
「作戦を中止する」
「中止ですか」
「そうだ、これ以上の戦闘は無駄に損害を出すだけだ。それは避けなくてはならん」
「わかりました」
「丁度我々も時間を稼げた。今が時だ」
彼はまた言った。
「全軍撤退、よいな」
「了解」
こうしてミケーネ軍は撤退を開始した。あしゅら男爵とブロッケン伯爵は意図せずして友軍を救ったのであった。
「待て、逃げるのかよ」
「逃げるのではない!」
あしゅら男爵が甲児に対して言う。
「兜甲児よ、これは逃げるのではないのだ」
男の声と女の声、両方で言う。
「じゃあ何だってんだよ!」
「これは名誉ある撤退だ。また会おうぞ!」
「二度と見たくはねえぜ!」
これが最後のやりとりであった。ブードもグールも撤退した。こうしてジャブローでの戦いは幕を降ろしたのであった。
「終わりか」
大文字は戦場からミケーネ軍がいなくなったのを確認して呟いた。
「何とかジャブローは防いだな」
「ええ」
それにサコンが頷く。
「もっとも連中のことですからまた何かしてくるでしょうが」
「いや、以後はこちらで何とかできるようになった」
「長官」
ここで岡が大空魔竜のモニターに出て来た。
「丁度君達の別働隊であるヘンケン艦長の部隊がこちらに向かってくれることになってね」
「ヘンケン艦長が」
「そうだ。以後は彼等にジャブローの防衛を担ってもらうことになる。君達はそのまま独立行動をとってくれ」
「わかりました。それでは」
「しかもタイミングがいいことにパナマ運河にまた敵が来ているそうだ」
「パナマ運河に」
言わずと知れたアメリカ大陸の要衝である。北アメリカと南アメリカを分ける場所でありここに造られた運河を通って多くの船が太平洋と大西洋を行き来する。アメリカがこの運河を作り長い間自分達のものとしてきた。その為にパナマの指導者を拘束して自国で裁判にかけたことすらある。
「ドクーガが向かっている」
「ドクーガが」
真吾はそれを聞いて声をあげた。
「最近見ないと思っていたら」
「出番が欲しくなったみたいね」
レミーがそれに続いて言う。
「あの三人目立ちたがり屋だから」
「悪役だってのにまた難儀なことだな、全く」
キリーも言う。やはりこの三人はいつもの調子であった。
「それで君達にはそちらに向かって欲しいのだが」
「わかりました」
大文字はその要請を受けた。
「それではすぐに」
「頼むぞ。おそらくそれが終わったらすぐに日本に向かうことになるだろうが」
「日本ですか」
「どうもまたキナ臭いのでな。当分そこで戦ってもらうことになると思うが」
「了解しました。それでは」
「まずはここで補給等を受けてくれ。それからパナマに向かってくれ」
「はい」
こうしてロンド=ベルの次の作戦は決まった。彼等は今度はパナマ運河で戦うこととなった。
「また今度も個性派が出て来るんだな」
勇はふと呟いた。
「何か嫌なの?」
「嫌とかそういう問題じゃないけどさ」
ヒメの問いにこう答える。
「何かな。あの三人は戦っていて違和感があるんだ」
「違和感って?」
「悪人っぽくないっていうかな。そんな感じなんだ」
「悪人じゃない、ね」
カナンがそれに反応した。
「戦っている相手に言う言葉じゃないけれど」
「それでもそう感じるんだ。不思議にあっちのリズムに乗ってしまうし」
「確かにあのやりとりはね」
カナンはここでは頷いてみせた。
「独特のものがあるわ」
「やりとりだけじゃなくて雰囲気もな」
「私のあの人達は悪い人じゃないと思うよ」
「ヒメ」
「ただ、何か色々と考えてるみたい。そのうち一緒になるかも」
「一緒って言われてもねえ」
カナンはそれを聞いて今度は困った顔になった。
「また個性の強い人達がね」
「一緒っていうよりは協力してくれるって言った方がいいかな」
「ドクーガなのにかい」
「ドクーガじゃなくなったら。わからないよ」
「ドクーガじゃなくなったらか」
勇はそれを聞いて不思議な顔になった。
「あまりピンとこないな。そんな三人」
「ある意味ドクーガの顔だしね」
「そうだよな。まああの三人ならドクーガなしてもやっていけるだろうけれど」
「あれだけキャラクターが立っていればね」
「まあね」
ドクーガについては皆何故か悪い印象を持っていなかった。皆わりかし明るい顔で次の作戦の準備を進めていたのであった。
「ダンクーガのエネルギーはこれでいいな」
「ああ、満タンだぜ」
忍がキャオに対して答える。
「また派手に暴れてやるぜ」
「ダンクーガは何かとエネルギー食うからな。エネルギータンクもつけといたぜ」
「おや、気が利くね」
沙羅がそれを聞いて言った。
「気を利かせるのもメカニックの仕事なんでね」
キャオはそれに対して明るく返した。
「改造できるところはもう完全にしちまったし。後はこれ位しかないしね」
「断空光牙剣もあっしな」
「やっぱりあれがあると心強いからね」
雅人も言う。
「けれど忍っていつも際限なく使っちゃうからなあ。有り難みは今一つなんだよな」
「ヘッ、武器ってのは使う為にあるのさ」
忍はあっさりとこう返す。
「またやってやるぜ。徹底的にな」
「徹底的にやるのもいいが後先は考えてくれよ」
ここで亮がブレーキに回ってきた。
「補給が大変なんだからな」
「ヘン、悠長なこと言ってたら戦争ってのは勝てねえんだよ」
やはり忍は忍であった。話を聞こうとはしない。だがそれでも戦いへの準備は進んでいた。彼は彼で戦いに備えていたのである。
だがそれはドクーガも同じであった。彼等は今カリブ海にいた。そこで三隻の戦艦が空の上に留まっていたのである。
「さて、ブンドルよ」
「何だ」
ブンドルはモニターに姿を現わしたカットナルを見上げて声をかけた。
「今回は誰の受け持ちだったかな」
「そういえば誰だったかのう」
ケルナグールも出て来た。
「久し振りの作戦行動なので忘れてしまったわい」
「久し振りだったか?」
だがカットナルはケルナグールのその言葉に眉を顰めさせた。
「この前のヨーロッパでのティターンズへのあれは何だったのだ?」
「ロンド=ベルに対してだ」
しかしケルナグールはこう返す。
「連中と久しく戦ってなかったので今から腕が鳴るわい」
「そうだったのか」
「それで今回はわしがメインでいきたいのだがな」
「何を馬鹿なことを言う」
カットナルはそれには反論してきた。
「今回はわしだ。その為にここに来たのだからな」
「何!順番がどうとか言っていたのはお主ではないのか!」
「それとこれとは別だ!そういえばティターンズの作戦はお主がメインだったな!」
「如何にも」
「そしてその前のギガノスではブンドル、お主だった」
「うむ」
ブンドルはそれを静かに認めた。
「その通りだが」
「では次はわしだ!メインは順番だというのがドクーガの鉄の掟だった筈だ!」
「そうだったか!?」
だがケルナグールはそれには懐疑的であった。
「ドクーガは早い者勝ちではなかったか」
「勝手に話を作るでないわ。大体だな」
トランキライザーを噛み砕きながら反論する。
「お主はそもそも目立ちたがり過ぎるのじゃ。ブンドルも」
「その格好で言っても説得力がないぞ」
「確かに」
ブンドルもケルナグールの言葉に頷く。
「それに私は特に自分を目立ちたがりだとは思っていないが」
「いや、悪いがそれも違うぞ」
ケルナグールは彼に対しても言う。
「お主も。かなり目立ちたがりだぞ」
「それは心外だな」
「まあ悪役は目立ってこそ華だ。では今回はわしだな」
「フン、まあいい」
ケルナグールも折れてきた。
「では今回は三人でメインを張ろうぞ」
「待て、三人か」
「よく考えればギガノスの前のバウドラゴンとの戦いはお主がメインではなかったか?」
「バウドラゴン、また古い話を」
「いや、つい最近じゃぞ。とぼけるでない」
「チッ」
「とにかくそろそろ作戦開始の時間なのだが」
ブンドルが腕時計を見ながら言う。豪奢な装飾が施されているスイス製の高給腕時計であった。
「おっ、もうか」
「ゴングが鳴るのだな」
「では行くとしよう。今回は三人でやろう」
「チッ、結局はそれか」
「まあよい。では行くとしよう」
「全軍発進」
ブンドルが指示を下す。
「目標はパナマ運河だ。いいな」
「我等も行くぞ」
カットナルも自分の部下達に対して言った。
「パナマで派手に暴れるぞ」
「わし等もじゃ」
ケルナグールも続く。
「パナマを粉々にしてやろうぞ。よいな」
「待て、今回は破壊工作が目的ではないぞ」
「おっと、そうだったか」
カットナルの突っ込みに応える。
「あくまで占領が目的だ。忘れるな」
「うむ、済まぬ」
「既にロンド=ベルが向かおうとしているという情報もある。警戒はするようにな」
「フン、あの連中も動きが早いのう」
「わし等程ではないがな」
「油断は大敵だ。では行くか」
「おう」
「待っておれ、ロンド=ベル」
「そしてマドモアゼル=レミー」
ブンドルはここで呟いた。
「私達の赤い糸の為にも」
目を閉じ紅の薔薇を掲げる。そして彼も戦場に赴くのであった。
ドクーガもまた動いていた。そしてロンド=ベルも。今アメリカ大陸の心臓部で双方の激突がはじまろうとしていたのであった。そしてそれを止めることはもう誰にもできなかった。


第六十八話完

2006・1・18  
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