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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第六十六話 死闘!キリマンジャロ

                第六十六話 死闘!キリマンジャロ
 ロンド=ベルがキリマンジャロに向かっている丁度その頃戦場とはまた違った場所で動きがあった。
「そうか、マーグが地球に到着したか」
 若い男の声が玄室に響いていた。
「はっ」
「では私の出る必要はないな」
「それではここに留まられるのですね」
「そうだ」 
 低く、それでいて澄んだ声で返事が帰ってきた。
「それに今はここにあの者達が来ようとしているしな」
「あの者達ですか」
「まだ地球人はいい」 
 彼は言った。
「彼等は我等と同じだ。意志がある」
「はい」
「だがあの者達は違う。意志なぞない。あるのはただ本能だけだ」
「そうした意味で地球人やザンスカールよりも厄介ですな」
「そうだ。だからこそ気をつけねばならない」
 声が強いものになった。
「サルデスやヒラデルヒアはどうしているか」
「こちらに戻って来ておられるようです」
「そうか。ならばよいがな」
 それを聞いてとりあえずは安心したようであった。
「だが油断をしてはならんぞ」
「はい」
「ズフィルードといえど敗れているのだ。何度とな」
「彼等にも」
「近頃辺境方面軍の失踪が相次いでいる」
 男はそれに対する様にこう言った。
「これが何を意味するか。わからぬわけでもない」
「確かに」
「宇宙怪獣の力は日増しに強くなっている。まるで我々を喰らい尽くさんとするかのように」
「我々を」
「そうだ。我々の敵は一つではない。まずはこれを忘れるな」
「はい」
「全ては霊帝の為。それを忘れた者は」
 声が引き締まる。
「この帝国を滅ぼすことになる。よいな」
「ハッ」
 男はそう言うとその場を後にした。地球とは遥かに離れた場所においても戦いは行われていたのであった。
 そしてこれは地球においても同じであった。ドレイク達もまた暗闘を繰り広げていたのであった。
「そうか、ジェリル=クチビがか」
 ドレイクは部下からの報告を聞いて一言呟いた。
「はい。一人でギリシアと呼ばれる国を掌握しました」
「それは何よりだ。見たところギリシアは戦略の要地」
「はい」
「そこを抑えることは実に大きい。我等にとってな」
「そうですね。今我々は欧州にいますが」
「うむ」
「この地域においてあの場所の戦略的意義は極めて大きいようです」
「ティターンズはそれを知っているようだな」
「おそらくは。彼等は地上人の中でもとりわけ地上に対する執着が強いようですから」
「それはどうかな」
「といいますと」
「私の見たところティターンズは然程地上に対する執着はない」
「そうでしょうか」
「それよりも彼等は宇宙を見ているのではないのか。彼等の正体は地上人ではない」
「といますと」
「先の大戦のことは覚えておろう」
「無論」
 その部下は答えた。
「あの時はジオンが強い勢力を持っておりました」
「そう、そのジオンだ。ティターンズはそのジオンと同じ様な存在ではないかと私は見ている」
「まさか」
 これには多くの部下達を異議を呈した。
「ティターンズは連邦政府の中にある軍とされています」
「うむ」
「その彼等が。どうしてジオンと同質なのでしょうか」
「異端者は何処にでもいる」
 ドレイクはそんな彼等に対して語った。
「連邦政府然り、だ。現にバイストンウェルでは我等も最初はそうだったではないか」
「確かに」
 部下達もそれには頷いた。
「その異端を異端とせぬようにするのもまた政治というものなのだ。そして我等はそれに一度は成功した」
「はい」
「それと同じことだ。ティターンズもそうした意味では政治を行っている」
「政治を」
「あのジャミトフ=ハイマンという男は少なくともそうだ」
「ジャミトフ大将ですか」
「あの野心に燃えた目、似ておるわ」
 不敵な笑みを浮かべた。
「私にもな。そしてあの二人にも」
「あの二人ですか」
「左様」
 これが誰と誰を指すのか、言わずもがなであった。手を組んでいるからといってそれが固い絆とは限らないのである。むしろその裏で激しい駆け引きを繰り返している場合すらあるのだ。
「今あの二人はどうしているか」
「取り立てて動きはありません」
 部下の一人がそれに関して報告をした。
「どうやらバルカン半島にも気付いてはいない模様です」
「所詮はその程度か」
「ですがスプリガンはジブラルタルに向かっている様です」
「ジブラルタルに」
「はい。そこを防衛しているティターンズの部隊と何やら接触しようとしている模様ですが」
「まずいな」
 ドレイクはそれを聞いてこう呟いた。
「あの場所にあの男を向かわせるわけにはいかぬ」
「では手を打ちますか」
「無論。すぐにバスク=オム大佐に連絡をとれ」
「はい」
「ジブラルタルはティターンズに全てを任せたいとな。それでよい」
「わかりました。それでは」
「至急に頼むぞ。よいな」
「ハッ」
 こうしてドレイクからバスクにすぐに連絡がとられた。この時バスクはロンドンにいたがそれを聞いてあからさまに嫌な顔をした。
「フン、異邦人めが」
「どう為されました」
 そんな彼に腹心であるジャマイカンが声をかけてきた。
「気付かれたわ。ジブラルタルを我等に全て任せたいとのことだ」
「ドレイク殿からですか」
「そうだ。どうやら我々がショット=ウェポンと奴を対立させようとしているのを察したらしい」
「速いですな、気付くのが」
「流石と言うべきかな。伊達に軍を率いているわけではない」
「そしてどうされますか」
「ショット=ウェポンには持ち場に戻る様に伝えよ」
「はっ」
「あの男をジブラルタルに置きバルカンを牛耳るあの男を抑えようとしたが。止むを得ん」
 彼等もバイストンウェル軍内の対立には気付いていた。そして手を打ったのである。
「こうなれば他の手を考える。ビショット=ハッタはどうしているか」
「ジャミトフ閣下と何やら積極的に話をされている様ですが」
「閣下とか」
 バスクはそれを聞いて考える顔をした。ゴーグルの奥からでもそれはわかった。
「閣下も何かと御考えの様だな」
「はい」
「ではここは閣下に御任せするよしよう。それよりもまずはこの欧州だ」
「はい」
「欧州の要塞化を急げ。よいな」
「了解しました」
「特に今カルタゴ近辺にいるネオ=ジオンの残党には警戒しろ。あの者達も何をしてくるか油断がならん」
「そしてミケーネは」
「潰せ」
 一言であった。
「どのみち奴等も敵だ。容赦することはない」
「わかりました」
「ガイゾックもだ。我等に歯向かう者は全て敵だ。よいな」
「了解しました」
「欧州をまず掌握しここに足場を作る」
 彼はまた言った。
「全てはそれからだ。よいな」
 ティターンズもまた動いていた。ロシアを失いながらもまだ諦めてはいなかった。欧州における戦いもそれがはじまる時を待っていたのであった。

 ロンド=ベルはその頃キリマンジャロに到着していた。そして陣を敷き周囲に警戒を払っていた。
「油断するな」
 ピートが仲間達に対して言う。
「デスアーミーは何処から来るかわからないぞ」
「へっ、あんな連中屁でもねえぜ」
 サンシローがそれを聞いて軽い声で返した。
「例えどれだけ来ても俺がまとめて相手してやらあ」
「そう気楽にいけばいいがな」
 ピートはいつもの彼の強気な言葉をいなしながら述べた。
「まあ期待させてもらうか」
「何だよ、その言い方」
 サンシローはそれにクレームをつける。
「今までだって俺の活躍でやってこれたじゃねえか」
「おいサンシロー、御前だけじゃねえぞ」
「ヤマガタケ」
 ヤマガタケがそれに反論してきた。
「俺だっているんだ。御前なんか俺のアシスタント程の役にも立っていねえじゃねえかよ」
「おい、そりゃ逆だろ」
 サンシローがそれに反撃を返した。
「御前が俺の女房役なんだろ」
「俺が女房役だと!?」
「というよりファーストか。御前はピッチャーじゃねえだろ」
「何だよ、いきなり野球用語なんか出してきやがって」
「俺にはそっちの方がしっくりいくんだよ」
「じゃあ俺も相撲でいかせてもらうぜ。御前は俺の露払いだ」
「何だよ、えらく格が下じゃねえか」
「褌担ぎにされないだけでもましだと思いやがれ。大体御前は目立ち過ぎなんだよ」
「って御前も充分目立ってるじゃねえか」
「あれっ、そうか」
「そういえばそうだな」
 リーが非常にタイミングよくそれに頷いた。
「ヤマガタケにはな。地上からの攻撃でいつも助けられている」
「今回も宜しく頼みますよ、ヤマガタケさん」
 ブンタも続く。
「どんどんとね」
「ほら見ろ、やっぱりリーとブンタはわかってくれてるじゃねえか」
 それを聞いて上機嫌でサンシローに言う。
「やっぱり俺がいねえとな。ロンド=ベルは駄目なんだよ」
「そうだな」
「特に僕達は」
「よし、任せとけ」 
 胸をドン、と叩いた。
「何でもやってやる。大船に乗ったつもりでいな」
「どうやらあいつもやる気になったみたいだな」
 サコンがそれを見て呟く。
「いつもながらリーとブンタが上手いがな」
 ピートもそれを見て笑っていた。
「しかし一番そうしたのが上手いのは別にいるがな」
「ああ」
 二人はそう言いながらミドリに顔を向けた。
「!?」
 だがミドリはそれに気付いていない。ただキョトンとした顔をしているだけであった。
「ミドリ君」
 そんな彼に大文字が声をかけてきた。
「はい」
「レーダーに反応はないかね」
「今のところはありません」
 ミドリはそれに答えた。
「そうか、ではまだいいな」
「いや、そう思うのは早計だ」
 だがここでドモンが大空魔竜のモニターに出て来た。
「ドモン君」
「俺にはわかる、奴はもうすぐ側にまで来ている」
「側にまで」
「ああ。今は隙を窺っているんだ。何時出ようか、とな」
「まるで野獣の様だな」
「そう、奴等は野獣だ」
 ピートのその言葉に応える。
「来るぞ、今にも」
 そう言った瞬間であった。
「レーダーに反応!」
 ミドリだけではなかった。メグミもサエグサも言った。
「デスアーミーです。我が軍を包囲しております!」
「何だと!何時の間に!」
「やはり!」
 ドモンはそれを聞いて叫んだ。
「皆臆するな!こんなことは読んでいた!」
 彼は叫んだ。
「敵が来たならば!」
「敵出現!」
 丁度ドモンの前に一機現われた。
「倒す!」
 だがそのデスアーミーはドモンの拳により撃ち砕かれた。それにより爆発が起こった。
「それだけだ!幾ら来ようとも怖れることはない!」
「フン、口だけは達者になったようだな!」
「マスターアジア!」
 マスターアジアも姿を現わしてきた。
「ドモン、首は洗って来たか!」
「どういうことだ!」
「わしに倒される覚悟はよいかということだ!その為に来たのであろう!」
「戯れ言を!」
 ドモンはそれを否定する。
「それは俺が貴様に言う言葉だ!今ここで貴様を倒す!」
「ほう、そしてデビルガンダムもか」
「そうだ!デビルガンダムもそこにいる筈だ!出て来い!」
「言われずともここにおる」
「何だと!」
「出でよ、デビルガンダム!」
 彼は叫んだ。すると大地からデビルガンダムが姿を現わした。驚くべき巨体であった。
「何てこった」
 ヂボデーがその巨体を見て忌々しげに呟く。
「この前よりでかくなってるぜ」
「そうですね」
 ジョルジュがそれに頷く。
「成長しているようですね」
「成長!?そんな馬鹿な」
 サイシーはそれを聞いて首を横に振った。
「ロボットが成長するなんて」
「いや、それがデビルガンダムだ」
 だがそれはアルゴによって否定された。
「DG細胞の力だ。それによりデビルガンダムは成長するのだ」
「ふふふ、その通りだ」
 マスターアジアはアルゴの言葉を聞き得意気に笑って応えた。
「デビルガンダムは成長していくのだ。それこそが究極のガンダムである何よりの証!」
「究極のガンダムだと!?」
 カミーユがそれを聞き声をあげる。
「馬鹿な、あんなのはガンダムじゃない。只の怪物だ!」
「カミーユ、落ち着いて」
 そんな彼をフォウが宥める。
「焦っても何にもならないわ」
「だけど」
「フォウの言う通りよ、カミーユ」
 だがここでエマも彼を制止にやって来た。
「落ち着きなさい、今は」
「クッ・・・・・・」
 エマにまで言われては仕方がなかった。カミーユは黙ることにした。
「このデビルガンダムこそが腐敗した人類を粛清し自然を復活させる何よりの力なのだ!ドモン、まだわからぬというのか!」
「誰が!」
 ドモンは頭からかっての師の言葉を拒絶した。
「貴様の言うことなぞ!それに人類は腐敗なぞしてはいない!」
「それはどうかな」
 だがマスターアジアもかっての弟子の言葉を否定してきた。
「宇宙怪獣やバルマー帝国が近付いてきておるのに自分達のことしか考えず戦いと享楽のみを追い求める。それが腐敗と言わずして何と言うのか」
「珍しくまともなこと言っちゃてるわね」
「こらアスカ」
 また悪態をついたアスカをミサトが窘める。
「まるであの人がいつもとんでもないこと言ってるように言わない」
「だっていつもとんでもないんだもの」
「それでもよ。とにかく今は黙って話を聞くこと。いいわね」
「了解」
「とは言っても」
 ミサトは話を終えたところでふと呟いた。
「腐敗、かあ。じゃあいつもビールばっかり飲んでるあたしはどうなるのかな」
「その前に身体によくないわよ」
 リツコがここで横から言ってきた。
「ビールとインスタント食品ばかりじゃ。たまにはまともなのも食べなさい」
「ビールは美容にいいのよ」
「何処がよ」
「少なくともスタイルには自信があるんだから。健康にもね」
「あら、もうお肌の曲がり角なのに」
「それは貴女もでしょ」
 ムッとした顔を作ってそれに反論する。
「お互い若くないんだから。言いっこなしよ」
「あら、私は大丈夫よ」
「どうして?」
「節制しているから。貴女とは違うわ」
「そんなのしても太る時は太るのよ」
「けれどアムロ中佐には好かれないわよ」
「いちいち言ってくれるわね」
 今度は顔に険を作ってきた。
「アムロ中佐とも何もないわよ」
「そうだったの」
「どうしてそういった話になるのよ。中佐とは何回か一緒に御食事をしただけよ」
「それのせいよ。あとは声」
「声!?」
「アムロ中佐と貴女の声はね。よく合うのよ」
「そうかしら」
「そういうこと。まあ変な噂話には気をつけなさいね。あとはお肌にも」
「フン」
 二人がそんな話をしている間にも戦いははじまろうとしていた。ドモンとマスターアジアが睨み合う。
「ドモンよ」
 彼はドモンの名を呼んだ。
「来るがいい。そしてわしに倒されよ!」
「誰が!」
 やはりそれを拒絶する。
「何度でも言ってやる!貴様もデビルガンダムもここで最後だ!」
「では見せてみよ、貴様の明鏡止水を!」
「おう!」
 そして彼はそれに応えた。
「キング=オブ=ハートの名の下に!」
 彼は叫びはじめた。
「いや、それはまだだ!」
 また誰かの声がした。
「まさか」
 それを聞いてミサトの顔が露骨に嫌そうなものになった。さっきまでのリツコとのやりとりで見せていた作った顔ではなかった。
「そのまさかみたいね」
 リツコもそれに応える。二人だけでなくロンド=ベル全軍がそれに何かを見ていた。
「ドモン、今はまだ明鏡止水を使う時ではないぞ!」
 彼の前にガンダムシュピーゲルが姿を現わした。
「シュバルツ=ブルーダー!」
「やっぱり」
「いつも何処から出るのかしら」
「ガンダムシュピーゲルレーダーに反応ありませんでした」
 マヤがそう報告する。
「今も映ってません」
「・・・・・・でしょうね」
 ミサトは呆れた声でそれに応えた。
「ステルスじゃないみたいですけれど」
「これは一体どういうことなんですかね」
「深く考えない方がいいわ」
 シゲルに対しても言う。
「ネオ=ドイツの科学力を結集して作られたガンダムファイターらしいし。何があっても不思議じゃないわ」
「それはそうですけど」
 それでもまだマヤには疑問があった。
「何かしら」
 それにリツコが問う。
「ドイツに忍者っていたんですか?私聞いたことないですけど」
「確かいなかったと思うけどな」
 マコトがそれに応える。
「それにあれはどう見ても普通の忍術じゃないし」
 シゲルも言った。
「BF団とか国際エキスパートの忍者に近いですよね。マスク=ザ=レッドとか影丸とか」
「そういえばそんな忍者もいたわね」
 ミサトの言葉は溜息に近くなっていた。
「あたしも忍術は知らないわけじゃないけれど。あれはねえ」
「あれは忍術の限界越えてますよ」
 めぐみも話に入ってきた。
「めぐみちゃん」
「BF団や国際エキスパートの忍術はどちらかと言うと妖術です」
「そうなの、やっぱり」
 そう言われると納得できるものがあった。
「普通の忍者はあんなことできません。当然ドイツに忍術があったなんて最近になってはじめて知りましたし」
「そうなの」
「あれも妖術に近いです」
 ゲルマン忍術を評してこう述べた。
「私も父もあんなことはとてもできませんから」
「でしょうね」
「とすると増々怪しい存在ね」
 リツコはそう言いながらシュバルツを見据えていた。
「シュバルツ=ブルーダー、一体何者なのかしら」
「只の人間じゃないのはもうわかってることだけれどね」
「ニュータイプ・・・・・・じゃないですよね」
「だからあんなのは知りませんって」
 シーブックがモニターに出て来た。
「俺も宇宙でいましたけどゲルマン忍術だのそんなのは」
「やっぱりね」
 ミサトはそれを聞いてまた頷いた。
「ニュータイプでもなければ一体」
「何者なのかしら、彼は」
「ドモン、迂闊に明鏡止水に頼るな!」
 シュバルツはドモンに対して叱る様に言っていた。
「明鏡止水は切り札。それに頼っていては身を滅ぼす!」
「俺自身を」
「そうだ!」
 彼はまた言い切った。
「それよりも今は己の力で戦え!いいな!」
「わかった。それじゃあ」
 ドモンは彼の言葉に何かを見たのであろうか。珍しく素直に頷き前に出た。そしてその拳で戦いはじめた。
「そうだ、それでいい」
 シュバルツはそれを見て満足そうに頷いていた。
「それでは私も戦うとしよう。行くぞ!」
 そう言いながら分身の術を使って来た。シュバルツが何人にも分かれた。
「参る!」
 そしてデスアーミー達に攻撃を仕掛ける。その手裏剣と刃で敵を次々と屠っていく。
「うわ、やっぱり強いわね」
 ミサトがそれを見て呟く。
「流石は忍者」
「だからあれは忍者じゃありませんって」
 めぐみが反論する。
「妖術ですよ、殆ど」
「・・・・・・確かにそうかも」
「甘いっ!」
 デスアーミーの攻撃が当たったかと思うと姿を消した。そこには巨大な岩があった。
 そしてデスアーミーの頭上に姿を現わす。そのまま降下し敵を一刀の下に切り伏せるのであった。
 爆発が彼の背で起こる。次に彼は畳返えしでその姿をまた消した。
「また消えた」
「今度は何処に」
「何かもう滅茶苦茶ですね」
「何処にあんな畳があったんだ」
 ネルフの面々も驚きの連続であった。彼等はもうシュバルツの戦いから目を離せなくなっていた。
 姿を消したガンダムシュピーゲルはデスアーミーの後ろにいた。一言呟いた。
「・・・・・・滅っせよ」
 それだけであった。そのデスアーミーも爆発し炎の中に消えた。シュバルツはそれを見届けるより速くまた動いていた。そしてデスアーミー達を次々と屠っていくのであった。
 ドモンとシャッフル同盟もまた戦いの中心にいた。彼等はその拳で以って敵を倒し続けていたのであった。
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
 ドモンの叫び声が木霊する。そして目の前の敵をまた一機粉砕した。
「まだだ、来い!」
「へえ、気合入ってるじゃねえかドモンの奴」
 豹馬がそれを見て言う。
「何かいつもと違うな」
「そう?普段と変わらないと思うけど」
「ちずる、おめえはそうした男の熱さってのがわかんねえのかよ」
「悪かったわね、女で」
「一平はわかるよな」
「俺か」
 話を振られた一平は少し戸惑いを見せた。
「そうだよ。同じ超電磁ロボのパイロットとしてな」
「まあわからないでもないな」
「ほら見ろ」
 豹馬は一平のその言葉を聞いて得意気になった。
「一平もこう言ってるじゃねえかよ」
「アホ、一平は御前に合わしとるだけや」
 だがそんな彼に十三がクレームをつけた。
「おろ」
「おろ、やないわ。大体御前はそもそも最近まともに技も開発しとらへんやろが。しっかりせんかい」
「おい、何だよその言い方」
 今度は十三に突っかかってきた。
「俺が最近何もしてねえみたいじゃねえか」
「ホンマのことやろが」
「何!」
「まあ待つでごわす」
 そんな二人を大作が止めた。
「そもそもコンバトラーの技はもう充分多いでごわす。もう必要ないと思わないでごわすか?」
「そうやろか」
「言われてみればもう充分だと思います」
「小介」
 小介も話に入ってきた。
「コンバトラー単体としては」
「コンバトラー単体!?」
「はい。ここはもっと大きな技に挑戦すべきだと思います」
「大きな技って言われてもねえ」
 ちずるも首を傾げた。
「何かあるかしら」
「合体技というのはどうでしょう」
「合体技!?」
 小介のその言葉にコンバトラーチームの他の四人が一斉に反応した。
「はい。健一さん」
 彼は健一にも声をかけてきた。
「どうしたんだ、小介君」
「少しお話したいことがあるのですが」
「その合体技のことだね」
「はい。宜しいでしょうか」
「そうだな」
 彼は暫く考えた後で口を開いた。
「皆はどう思うかな」
 そしてボルテスチームの面々に話を聞いてきた。
「面白そうだな」
 まずは一平が答えた。
「コンバトラーとの合体技か。面白そうだ」
「やってみる価値はあると思うよ」
 日吉も賛成した。
「コンバトラーとボルテスは相性がいいしね」
「おいどんも賛成でごわす」
「大次郎もか」
「はい。さらに仲良くなってよいと思うでごわす」
「そうね」
 めぐみも口を開いた。
「やってみましょう。どんな技が出るか楽しみよ」
「よし、ボルテスとしては全員賛成だな」
「おう」
「そういうことだ。こっちはいい」
「よし、それじゃあすぐにはじめっか」
「ああ」
 コンバトラーとボルテスは並んだ。そして攻撃に入る。
「行くぜ健一」
「ああ、豹馬」
 二人はそれぞれ動きを合わせる。
「まずは俺からだ!やるぜ!」
 コンバトラーの全身を赤い光が覆った。
「超電磁タ・ツ・マ・キーーーーーーーーーーッ!」
 まずは超電磁タツマキが放たれた。その間にボルテスは天空剣を出す。
「超電磁ボォォォル!」
 そしてそこから超電磁ボールを放った。コンバトラーはその間にその身体を激しく回転させる。
「超電磁スピィィィィィンッ!」
 そして敵に突攻を仕掛ける。それによりまず一撃目が加えられた。
「よし、次は俺だ!」
「頼むぜ健一!」
「ああ!」
 ボルテスは天空剣を振り被った。そして敵に襲い掛かる。
「天空剣!」
 超電磁スピンの直撃を受けてその動きを止めている敵にさらに襲い掛かった。そしてその剣を振り下ろす。
「Vの字斬りぃぃぃっ!」
 それが止めとなった。敵は二体のマシンの攻撃を受け爆発四散した。見事な連携攻撃であった。
「やったな」
「ああ」
 コンバトラーとボルテスは互いに顔を見合わせ言った。
「これで新しい技が完成したな」
「いきなりだったが上手くいったな。ところで」
「何だ?」
「この技の名前は何にする?」
「技の名前か。そうだなあ」
 豹馬は少し考えた後で述べた。
「超電磁Ⅴの字斬りなんてどうだ」
「超電磁Ⅴの字斬り」
「そうだ。いい名前だと思うけれどどうだ」
「あっきれた」
 それを聞いてまずちずるが言った。
「そのまま合わせただけじゃない」
「ホンマや。もうちょっとましな名前考えんかい」
「何だよ、文句でもあるのかよ」
「あるから言ってるのでしょ」
「他にはないんか、他には」
「まあ待ってくれよ、二人共」
 だがそんな二人に対して健一が言った。
「俺はそれでいいと思うんだけれどな。シンプルでいいし」
「健一さんがそう言うんなら」
 ちずるも頷くものがあった。
「わいもええわ。じゃあそれでオッケーやな」
「そうだな。それでいこう」
「よし」
 こうしてコンバトラーとボルテスの合体技が完成した。これにより両チームの結び付きがさらに深いものになったのは言うまでもない。
 コンバトラーとボルテスがその合体技を実現させていたその頃戦いは更に激しさを増していた。
 ドモン達シャッフル同盟はシュバルツやレイン達の援護を受けデビルガンダムに迫っていた。そして遂に対峙することとなったのであった。
「遂にここまで来おったな、ドモン」
 マスターアジアはドモンを見下ろしながら言った。
「それは褒めてやろう。ではわし自ら相手をしてやる」
 そしてドモンの前にまでやって来た。
「マスターアジア」
「ではよいな。ガンダムファイト」
「レェェェェェェェェェェェェェェェディィィィィィィィィィィィィィィィィ」
「ゴォォォォォォォォォォッ!」
 こうして両者の戦いがはじまった。まずはマスターアジアが容赦のない攻撃を浴びせてくる。
「これでどうじゃっ!」
「クッ!」
「動きが鈍いわ!その程度でわしを倒せると思うてか!」
「何だと!」
「未熟未熟ゥッ!所詮はこの程度か!」
「言わせておけば!」
 ドモンも反撃に転じる。だがそれは空しくかわされてしまった。
「何処を狙っておるか!」
「チィッ!」
「この程度の動きすら読みとれぬとは!わしの見込み違いだったようじゃな!」
「見込み違いだと!」
「そうよ!」
 彼は言い切った。
「貴様は不肖の弟子よ!貴様なぞに流派東方不敗は極められはせぬ!ましてや明鏡止水なぞ!」
「その減らず口黙らせてやる!」
 ドモンはムキになって攻撃を浴びせる。だがそれも当たりはしない。
「何処を見ておるか!」
「クッ!」
「最早これ以上戦っても意味はないわ!一気に勝負をつけてくれようぞ!」
 そう叫びながら構えに入った。
「行くぞ、ダークネス・・・・・・」
 その右腕が禍々しく輝きはじめた。
「フィンガァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!」
「ヌオッ!」
 かわしきれなかった。反応が遅れた。その結果としてドモンはダークネスフィンガーの直撃を受けてしまった。
「ドモン!」
 シャッフル同盟の仲間達は吹き飛ぶドモンを見て叫んだ。彼等は今デビルガンダムとそれぞれ戦っていたのだ。
 シャイニングガンダムは地面に叩きつけられた。激しい衝撃が大地を襲い揺れる。最早立てないかとすら思われた。
「まだだ!」
 だがドモンはそれでも立ち上がった。満身創痍のまま立ち上がる。
「俺はまだ負けてはいない!この程度で!」
「やれるというのか、まだ!」
「そうだ!今それを見せてやる!」
 そう言いながら構えをとる。するとその全身が徐々に金色に輝きはじめた。
「ほう」
 シュバルツはそれを見て声をあげた。
「そうか、遂にか」
「行くぞ、マスターアジア!」
 今ドモンの心は完全に澄み渡っていた。そこに何かがやって来た。
「あれは」
 アレンビーが最初に気付いた。
「ガンダム。何でこんなところに」
「ゴッドガンダムね」
 レインはそれが何なのかすぐに理解した。
「御父様が開発した。今届いたのよ」
「けど今のドモンは」
「大丈夫よ、ドモン!」
 レインが彼に声をかける。
「ゴッドガンダムが来たわよ!そのまま続けて!」
「けれどそれじゃあ乗り換えられないわよ、どうするのよ」
「だから心配しないで」
 それでもレインに動揺はなかった。
「そのままで。意識さえシンクロすれば」
 その時シャイニングガンダムのコクピットが外れた。
「何と!」
 マスターアジアからもそれは見えた。だが彼は手を出さなかった。
「どうして」
「それは彼が真のガンダムファイターだからさ」
 一矢がいぶかしるナナに対して言った。
「本当のガンダムファイター!?」
「そうさ。本当の戦士は相手が戦える状態じゃないと拳を向けたりはしない。マスターアジアはそうした意味でも本物のガンダムファイターなんだ」
「そうだったの」
「敵であろうともそれは認める。だがドモンもまた真のガンダムファイターだ」
 彼はドモン達から目を離そうとはしなかった。
「ドモン、見せてみろ御前の戦いを!」
 一矢は叫んだ。
「そしてデビルガンダムを倒すんだ。いいな!」
 ゴッドガンダムの中にシャイニングガンダムのコクピットが入った。すすろその全身が瞬く間に金色に輝きはじめた。
「これだ、この気持ちだ」
 ドモンは黄金色に輝く中で呟いた。
「この気持ちこそが明鏡止水。これさえあれば」
 彼は言う。
「怖れるものはない。行くぞ、マスターアジア!」
「ようやく目覚めたようじゃな!」
 マスターアジアは黄金色に輝く弟子に対して言った。
「遅いわ!だが褒めてやろう!」
 そしてまた構えをとった。
「明鏡止水を見せてくれたことをな!では参る!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
 両者は互いに拳を繰り出した。そしてそれが撃ち合う。
 二人の一騎撃ちが激しさを増すその頃イルイはラー=カイラムの中にいた。アイビス達と一緒にいる部屋である。彼女はアイビスとツグミ、そしてスレイ達と共にいたのである。
 一人部屋にいた。何も語らない。だが何かを察していた。
「危険・・・・・・」
 彼女は呟いた。
「あれはキケン・・・・・・。デビルガンダムは・・・・・・」
 何かを呼んでいるようであった。そして上を見上げた。
「来て、聖なる獣達よ」
 また呟いた。
「そして地球を守る戦士達を助けて」
 何かが来た。そしてそれはデビルガンダムの周りに姿を現わしたのであった。
「!?」
「何だ一体!?」
 デビルガンダムの周りに三体の何かが姿を現わした。そしてそれは咆哮をはじめた。
「鷲か!?」
 アムロがその中の一体を見て言った。
「そして鮫」
 次には竜馬が。
「最後は豹かよ。何なんだありゃ」
 甲児も言った。見れば確かにそれはそのままの姿であった。
「サンバルカンだね」
「ミオちゃんも知ってるの!?」
 ユリカがそれをきいて楽しそうな声をあげる。
「もっちろんよ。へドリアン女王がよかったわよね」
「そうそう、デンジマンから出ててね」
「あれだけの悪役はそうそういないわよね。声もいいし」
「うんうん」
「よくそんな話御存知ですね」 
 ルリが二人に尋ねる。
「何処で御覧になったんですか?」
「ビデオで」
「DVDで」
 二人はそれぞれ答えた。
「すっごい面白かったんだから」
「三人の戦隊ものはこれが最初で最後だったみたいだけれどね」
「そうだったんですか」
 ルリはそれを聞いて頷いた。
「ではあれのコードネームは決まりですね」
「何かしら」
「バルイーグル、バルシャーク、バルパンサーです」
「いや、それはストレート過ぎると思うけど」
 メグミがそれに突っ込みを入れる。
「せめてイーグルとかシャークにしない?ルリちゃん」
「じゃあそれで」
「何かルリルリって時々本気か冗談かわからないのよね」
 ハルカも言う。
「けどそれがルリさんの持ち味なんですけれどね」
「ではハーリー君」
 ルリが今口を開いたハーリーに対して言った。
「コートネームのインプットお願いしますね」
「了解」
 こうしてあの三体のインプットが行われた。それはすぐに他の六隻にも送られたのであった。
「鷲と鮫と豹か」
 ブライトは送られてきたコードネームを見て呟いた。
「何かそのままだな」
「そうですね。けれどストレートでしっくりきますね」
 サエグサがそれに答えた。
「陸空海三つ揃ってるわけですし」
「そういえばそうだな」
「何か。意志めいたものも感じますけれど」
「意志」
 ブライトはその言葉に反応した。
「だとすれば何の意志だ」
「いや、ただ言ってみただけですけれど」 
 問われたサエグサの方がキョトンとする。
「それが何か」
「いや、いい」
 サエグサにもわかっていなかった。ならば仕方がないと思った。それ以上は聞かなかった。
「問題はあの三体がデビルガンダムに何をするかだ」
「とりあえずは我々に対する攻撃の意志はないようですが」
「だが油断するな。いきなりということも考えられる」
「はい」
 こうしてロンド=ベルはその三体にも警戒を払うことにした。だが三体の獣は彼等には構うことなくデビルガンダムに攻撃を仕掛けたのであった。
「ムッ!?」
 マスターアジアがそれに顔を向けた。
「デビルガンダムに攻撃を仕掛けるというのか」
「何処を見ている、マスターアジア!」
 そんな彼にドモンが叫んできた。
「貴様の相手はこの俺だ!余所見をすることは許さん!」
「ヌウッ!」
 だがマスターアジアは彼から間合いを離した。そして三体の獣に向かう。
「逃げるな!」
「ほざけ!今は貴様の相手をしている時ではないのだ!」
 彼も叫んだ。
「貴様の相手は後でしてくれるわ!楽しみに待っておれ!」
「チイッ!」
「ドモン、今はそれよりも!」
 レインが声をかけてきた。
「デビルガンダムをやれ!今こそその時だ!」
「シュバルツ」
「ここは我々が引き受けよう!さあ行け!」
「わかった、それじゃあ!」 
 ドモンはそれを受けた。そして前に進む。
 だがその前に無数のガンダムヘッドが地中から姿を現わしてきた。そしてドモンに向けて襲い掛かる。
「何のっ!」
 だがドモンはそれを蹴りで薙ぎ払った。そしてそのまま跳躍する。
「トオッ!」
 空中で身構える。その腕にキング=オブ=ハートの紋章が浮かび上がった。
「キング=オブ=ハートの名にかけて!」
 彼は言った。
「俺の拳が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!」
 今彼の全身が再び黄金色に輝いていた。
「ばぁぁぁぁぁぁくねつ!」
 拳も輝きを増してきた。
「ゴッドフィンガァァァァッ!」
 そしてその拳をデビルガンダムの脳天に叩き込んだ。今デビルガンダムの身体にも黄金色の光が炸裂した。
「石破!」
 技の名を叫ぶ。
「天驚けぇぇぇぇぇんっ!」
 それが全てであった。デビルガンダムは今その動きを止め光に包まれた。
「ヒィィィィト!エンドッ!」
 ドモンは着地した。それまで動きを止めていたデビルガンダムの巨体が光に包まれた様に見えた。そしてそれは光の中に消えていった。
「何と・・・・・・」
 これにはさしものマスターアジアも絶句した。
「デビルガンダムを倒すろは・・・・・・。何ということを」
「正義は必ず勝つ!」
 ドモンはそんな師に対して言い切った。
「だからこそ俺は勝った!違うか!」
「ヌウウ!」
「次はマスターアジア、貴様の番だ!」
「ほざけ、馬鹿弟子があっ!」
 彼もまだ負けてはいなかった。
「わしの名を言ってみよ!」
「何!」
「言ってみよというのだ、この東方不敗の名を!」
「一体何滅茶苦茶言ってるんだ、あのおっさん」
 忍がそれを聞いて言う。
「手前の名前なんてよ。いきなり言わせてよ」
「頭がおかしくなったとかじゃないよね」
「まさか」
 勝人の言葉を沙羅が否定した。
「そんなんだったらとっくの昔にあれでしょ」
「それもそうだね」
「沙羅の言う通りか」
 亮もそれに頷いた。
「まだやるつもりなのよ、あの人」
「ヘッ、意気盛んだな」
「そうも悠長には言っていられないぞ、忍」
「何かあるのかよ」
「あの気迫、只者ではない。おそらくまだ何かやるつもりだ」
「何かか」
「ああ、注意しておけ」
 デスアーミー達も消えていた。だがマスターアジアはそれでも戦場に残っていたのである。
「ドモン!」
 彼は弟子を見据えていた。
「貴様だけは許さんぞ!」
「何故そこまでして闘う!」
 ドモンはそんな彼に対して問うた。
「俺がデビルガンダムを倒したからか!」
「それだけではない!」
 だが彼は言った。
「それだけではないのだ、ドモンよ!」
「では何故!」
「わしは敵は必ず破る!それがこの東方不敗の名の誇りだからだ!」
「だから闘うというのか!」
「左様!では覚悟はよいな!行くぞ!」
「ならば!」
 彼もそれを受けることにした。互いに構えをとる。
「流派東方不敗の名にかけて!」
「俺のこの手で!」
「うわ、また熱くなってきたね」
「変態同士の対決ね」
 驚くシンジに対してアスカは冷めた様子であった。
「何かアスカってあの人が本当に嫌いなんだね」
「嫌いとかそんなんじゃないわよ。受け付けないだけ」
 彼女は素っ気無く返した。
「まあ死にはしないでしょうし。離れて見ましょう」
「冷たいなあ」
「素手で何でも破壊できるような人達でしょ。気にしない気にしない」
 彼等は離れて見ることにした。こうしている間にも両者を包むオーラは高まっていく。
「凄いオーラだな」
「そうだね」
 チャムはショウの言葉に頷いた。
「けれど邪悪なものは感じられません」
 シーラがここでモニターに出て来た。
「シーラ様」
「あの人はあの人で何か大きな志があるようです」
「志」
「それは私も感じます」
 エレも言った。
「あの人は。少なくとも私利私欲はありません。自分を犠牲にして何かを果たそうとしています」
「何を」
「そこまではまだわかりませんが。けれど何かがあります」
「そうなのか」
 ショウは二人の話を聞いてからマスターアジアを見た。
「マスターアジア、一体何を考えているんだ」
「ではここで死ぬがいい、ドモン!」
「死ぬのは貴様だ!」
 彼はやはり睨み合っていた。
「デビルガンダムを破壊してくれた恨みもまとめて晴らしてくれる!」
「そんなもの!恨みなぞ今の俺には!」
 両者は今まさに激突せんとしていた。だがその時であった。
「マスターアジアさん」
「ヌッ!?」
 ここでウォンが姿を現わした。
「デビルガンダムが破壊されたそうですね」
 彼は薄笑いを浮かべながら彼にこう声をかけてきた。
「見ていたのか」
「少しね。残念なことです」
「残念で済むと思うか!わしの夢が果たせぬようになったのだぞ!」
「ですがそう御考えになるには少し早いです」
 だが彼はこう言ってマスターアジアを宥めてきた。
「・・・・・・その言葉、何かあるな」
「はい、実はデビルガンダムの細胞の一部を確保しておりまして」
「何!?」
 これはドモン達には聞こえていなかった。あくまでウォンとマスターアジアとだけの話であった。
「それはまことか」
「私が貴方に嘘を言ったことがありますか?」
「フン」
 実はマスターアジアは彼を信頼なぞしてはいなかった。だがここはあえて信じる演技をすることにした。
「では下がるとしよう」
「そうそう、もう一つありますよ」
「何じゃ!?」
「四天王が遂に完成しようとしております」
「ほう、四天王が」
 それを聞いてニヤリと笑った。
「思ったより速いではないか」
「私とて無駄に手をこまねいているわけではないということです」
「わかった。ではすぐにネオ=ホンコンに戻ろう」
「はい」
「ドモンよ!」
 彼は弟子に顔を向けた。
「急用ができた。これでさらばだ!」
「何だと!」
「ちょっと待てよ!いきなり帰るのかよ!」
「何て勝手な爺さんなんだ」
 勝平だけではなかった。宇宙太も呆れた声を出した。
「ふはははははははは!君子豹変すよ!」
「・・・・・・そういう意味だったかしら?」
「もうどうでもいいわよ、実際」
 恵子は首をかしげアスカは諦めていた。その間に風雲再起がやって来た。
「ではさらばだドモン!また会おうぞ!」
 ドモンに何かを言わせる間もなくその場を後にした。こうしてキリマンジャロでの戦いは幕を降ろしたのであった。
「何かいきなり終わっちゃいましたね」
「相変わらず嵐の様だな」
 ブライトはトーレスの言葉に頷く形で応えた。
「ですがデビルガンダムは倒しましたしとりあえずの作戦目的は達成しました」
「とんでもないのを残しているがな」
「まあ今は仕方ないですよ」
 サエグサはそう言ってブライトを慰めてきた。
「両方を何とかするのはやっぱり難しいですし」
「そういうものか」
「はい。ではダカールに帰りましょう。ここんとこ連戦続きで艦もかなり傷んでいますしね」
「修復の為にも」
「よし。作戦終了」
 ブライトは全軍に伝えた。
「ダカールに帰還する。いいな」
「了解」
「これで終わりか、やれやれ」
 殆どの者はそれに頷く。だがドモンだけはまだキリマンジャロに一人立っていた。
「ドモン」
 そんな彼にレインが声をかけてきた。
「どうしたの、戦いは終わったわよ」
「ああ、わかっている」
 とりあえず彼はそれに頷いた。
「しかし」
「マスターアジアのことね」
「ああ。そしてデビルガンダムだ」
「それは今貴方が倒したじゃない」
「いや、俺にはわかる」
 だが彼はここで言った。
「奴はまだ生きている。キョウジも」
「お兄さんも」
「そうだ。また戦うことになるだろう。その時は今よりもずっと辛い戦いになる」
「今よりも」
「そう、その通りだ」
 シュバルツがそれに応えた。
「シュバルツさん」
「私にもわかる。デビルガンダムはまだ生きている」
「何故それが」
「そんなことはどうでもいい。私にはわかる、それだけで充分だろう」
「けど」
「いや、シュバルツの言う通りだ」
 ドモンもそれに頷いた。
「勘だ。全てがそれでわかるんだ」
「勘で」
「勘を馬鹿にしない方がいい。戦いにおいて最も重要なものの一つだ」
 シュバルツはまた言った。
「これがどうなるかで戦いが変わっていくのだ。ドモンの言うことは正しい」
「そうなんですか」
「ドモン、これから何を為すべきかわかっているな」
「無論」
 ドモンは答えた。
「その為に俺はここにいる」
「よし、では今は何も言うまい。私も消えるとしよう」
 そう言いながら間を離した。
「今は暫しの別れ。だが次に会う時は」
 彼の身体を霧が包んでいく。
「決戦の時。その時にまた会おうぞ!」
 そして姿を消した。霧が消え去ると彼の気配もまた完全に消え去ってしまっていた。
 ドモンはそれを見届けた後で艦に戻った。そしてロンド=ベルはダカールに帰還したのであった。
「御苦労だったな、諸君」
 その彼等をミスマル司令が出迎えた」
「これでアフリカは救われた。とりあえずはな」
「はい」
 グローバルがそれに頷いた。
「ですが北アフリカにはまだネオ=ジオンがおりますな」
「彼等についてはまだ抑えている状況だ」
 司令は言った。
「抑えて」
「こちらもな。彼等に向ける程の兵はないのだよ。環太平洋区が今大変な状況になろうとしていてな」
「太平洋が」
「またあのおっさんかよ」
 豹馬がそれを聞いて嫌そうな声を出した。
「一体何があったのですか」
「まずジャブローが敵の総攻撃を受けている」
「ジャブローが」
「ミケーネ帝国のな。彼等は暗黒大将軍の指揮の下大規模な攻勢に出て来たのだ」
「暗黒大将軍が」
 それを聞いた鉄也の顔色が変わった。
「ミケーネ帝国、遂に」
「そして日本ではバーム星人達が勢力を盛り返してきた。またガイゾックも出没してきている」
「将に混沌ですな」
「そうだ。だから君達には至急そちらに向かってもらいたい。修復が終わってからな」
「わかりました。それでは」
 グローバルはそれを了承した。
「すぐに向かいます。では」
「うむ、頼むぞ」
 こうしてロンド=ベルの次の作戦が決まった。彼等はジャブローに向かうこととなった。
「日本に戻るのか」
 一矢はそれを聞いて感慨深げに呟いた。
「家でも思い出したのか」
「いや、違う」
 だが彼は京四郎のその言葉には頷かなかった。
「エリカのことを思うとな」
「まだ諦めていなかったのか」
「誰が諦めるもんか」
 彼の声が強くなった。
「俺はエリカをこの手で・・・・・・。その為に戦っているんだ」
「地球よりも一人の女の為にか」
「エリカを救えなくてどうして地球が救えるんだ」
 一矢はまた言った。
「俺は地球も救う。だがエリカも」
「わかった。御前はとんだ甘ちゃんだな」
 京四郎はまたシニカルに言った。
「こんなに甘いとは思わなかった。何処まで甘いんだか」
「京四郎」
「そしてそんな奴の側にいる俺もな。甘いものだ」
「今何て」
「聞こえなかったのか?俺も応援してやるよ」
「本当なのか、それは」
「ああ。俺も今までは地球の為には一人の女のことは放っておけと考えていた」
 彼は述べた。
「だが御前を見ているうちに考えが変わった。一人の女を救えなくてどうして地球が救えるんだ、ってな」
「協力してくれるのか」
「だから今ここにいる」
 彼はまた述べた。
「京四郎・・・・・・」
「だが一矢忘れるな」
 彼はここで声を厳しくさせた。
「御前は地球人でエリカはバーム星人だ」
「ああ」
「結ばれるまでには多くの苦難があるぞ。それはわかっているな」
「勿論だ。けれど俺は乗り越えてみせる」
「よし」
「エリカを、そして地球を救うんだ」
 彼は決意を新たにした。ロンド=ベルの面々はそんな彼等を遠くから見守っていた。
「妬けるわね、本当に」
 マリがそれを見て言う。
「あそこまで想っていると。エリカさんも幸せね」
「幸せなんですか」
「当然よ。あんな人にあそこまで想われてるんですからね」
 マリは猿丸にそう答えた。
「一矢さんみたいな人に。あんなに誰かを思える人なんてそうそういないわよ」
「そうだな」
 それに神宮寺が頷いた。
「一矢さんは確かに立派だ。あんな人は他にはそうはいないだろう」
「ミスターもわかるのね」
「ああ。妬けるのもな」
「ミスターもそうなの」
「少しな。だが応援したくなるな」
「そうね。私も似た様な状況だったから」
「フォウさん」
「ティターンズにいて。そしてカミーユに導かれてここまで来たから」
「そうだったな。あの時は本当にどうなるかと思ったよ」
 カミーユがそれに応えた。
「けれど今君はここにいる。だから彼等も」
「ええ、きっと願いは適うわ」
 フォウは何時になく優しい声で述べた。
「私達もそうだったんだから」
「何かこっちも妬けるなあ、おい」
 タップがそんな二人を茶化す。
「俺達みたいなもてない連中にとっちゃ目の毒だぜ」
「もてないのは御前だけじゃないのか、タップ。と言いたいが御前はローズちゃんがいるじゃないか」
「おっと、そうだったか」
 ライトに言われてようやく気付く。
「俺なんか本当に誰もいないんだ。それに比べれば」
「ダイアンさんとはどうなったんだ?」
「ベン軍曹と婚約されたそうだ」
「嘘」
 これには流石に皆驚いた。
「あの軍曹と」
「あれで結構女性にも優しいんだ、これが」
「ううむ」
「また意外なカップリング」
「で、皆俺とリンダちゃんの仲は突っ込まないのか?」
「当たり前過ぎてなあ」
 ジュドーが応える。
「何か突っ込めないんだよ、ケーンさんのは」
「ちぇっ、最近何か影が薄いなあ、俺」
「そのうち主役じゃなくなったりしてな」
「おいタップ、言っていいことと悪いことがあるぞ」
「けど最近俺達の出番が減っているのも事実」
「ぐっ」
 ライトの言葉に顔を強張らせる。
「ここいらで大きな見せ場がないとやばいぞ」
「脇役に降格かよ」
「何か深刻な話になってきたな」
 真吾がここで言う。
「恋を達成しようとする熱い話題から出番の話ね。生臭いわね」
「そういう時は俺達が爽やかに話を戻すのが大人の流儀ってやつだな」
 今度はグッドサンダーチームが出て来た。
「そういえば最近ドクーガも大人しいですよね」
 ファが彼等に声をかけてきた。
「前まで何かと出て来たのに」
「案外破産してたりして」
 レミーがそれに応えた。
「今までの負けが響いてね」
「そういえばあの三人って実業家でしたね」
 麗がそれに応じる。
「確かフライドチキンに製薬会社に化粧品会社で」
「結構成功しているらしいのよ、これが」
「嘘みたい」
「あれで」
「ああ見えても経営センスはあるらしいんだ、これが」
 キリーが仲間達に対して述べる。
「俺なんかホットドッグ屋やっても売れそうにないのにな」
「しかもケルナグールの奥さんはかなりの美人らしい」
「何か何も信じられなくなってきたな、おい」
 ケーンが言う。
「世の中ってのは怖いところだ」
「といっても鍋島の猫よりはましだろ」
 だがそこでキリーがタイミングよく言葉を入れる。
「怪談に比べれば」
「怪談に猫がおんねん・・・・・・プッ」
「だから強引な駄洒落は止めろって」
「あれ、今回は結構面白いですよ」
 何だかんだで和気藹々としていた。こうして英気を養っていたのであった。
 ロンド=ベルは修復を終えるとジャブローに向かって出撃した。今度もまた激しい戦いの中にその身を投じるのであった。


第六十六話  完

                                   
                                      2006・1・8

 
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