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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第六十二話 ダカールの攻防

                第六十二話 ダカールの攻防
 ダカールへ踵を返すロンド=ベルとダカールに向かうネオ=ジオン。両者は全速力で街に向かっていた。これは双方共同じであった。
「彼等は今何処にいるか」
 ハマーンはグワダンの艦橋で部下達にこう問うた。
「もうすぐダカールに着くそうです。そして街の東側に布陣するようです」
「そうか、予想通りだな」
 ハマーンはそれを聞いてこう呟いた。
「ならば。わかっておろうな」
「はい」
「もうすぐ火星の後継者達も到着する。彼等と連動して我等はそのまま東側から攻撃に入る」
「はい」
「これでダカールの守りは他の部分が手薄になる。そこを衝くぞ」
「わかりました。それでは」
「そして連邦軍は何処にいるか」
「街の北及び西に展開しているようです」
「そうか」
 これもまたハマーンの読み通りであった。彼女はそれを聞いて満足したように微笑んだ。
「そちらにはマシュマーとグレミーの部隊が向かっているな」
「はい」
「我等は三方から攻撃を仕掛ける。だがそれだけではない」
 そしてこう言った。
「南からもだ。連邦はどうやら一年戦争の時の我等の作戦を忘れれているようだな」
「どうやらそのようで」
「海を制する者が地球を制する」
 かって大英帝国がそう豪語したことであった。
「それを今また思い出させてくれる。地球に閉じ篭もっている者達には」
「それでは」
「この戦い、裏を衝いた方の勝ちだ」
 ハマーンはまた言った。
「そして裏を衝くのは我々だ。よいな」
「はっ」
 ネオ=ジオンはダカール攻略に策を講じていた。それはまるで竜の顎の様にダカールという街を捉えようとしていた。

 ロンド=ベルはそれも知らず一路ダカールに向かっていた。彼等はただダカールだけを目指していた。
「敵は北と東からダカールに向かっています」
 ルリが報告する。
「その数はかなりのものです。そして宇宙からもエネルギー反応がありました」
「火星の後継者ね」
「おそらく」
 ユリカの問いに答える。
「どうしますか」
「決まってるじゃない。やっつけちゃいます」
 ユリカは一言で終わらせた。
「放っておいたら大変なことになりますから」
「わかりました」
「街の東と西は連邦軍正規軍が守りを固めています」
「御父様ね」
「はい。そしてキングビアルも。神ファミリーも参戦しています」
「あの人達も頑張ってるんですね」
「頑張ってるどころか主力ですよ」
 メグミは付け加えた。
「キングビアルがないと今までダカールを守りきるなんてできませんでしたから」
「じっちゃんも頑張ってるんだな」
「そうですね。だから勝平君も頑張って下さいね」
「へへっ、わかってらあ」
「あとは調子に乗らないで」
「ちぇっ、メグミさんも案外きついなあ」
「そうでしょうか」
「大人しい顔して。何か傷ついたぜ」
「何言ってやがる、何言われても平気な癖してよ」
 サブロウタがそれを聞いて話に入ってきた。
「御前さんとリュウセイはちょっとやそっとじゃへこたれねえだろ。そんな臭い演技は止めた方がいいぜ」
「ちぇっ、サブロウタさんまで」
「へこたれるのなんて俺が許さねからな。俺の歌でネオ=ジオンだろうが火星の後継者だろうが黙らせてやるぜ!」
「バサラさん、歌で人が黙るのですか」
「当然だ!」
 ルリのクールは質問も彼には効果がなかった。
「俺の歌は万人が感動するんだよ!それでハマーンだろうが草壁のおっさんだろうが感動させて何もできなくさせてやるぜ!」
「けれど火星の後継者は機械ですい」
「機械が何だってんだ!」
「わあ、相変わらず凄いこと言ってますねえ」
「ここまで凄いと何も言えないわね」
 メグミもハルカも呆れていた。ハルカはまた目を閉じ困った様な顔で笑っていた。
「機械でもですか」
「そうだ!」
 ルリの問いにまた答えた。
「動くものは何でも動けなくしてやる!俺の歌に敵はいねえんだよ!」
「何無茶苦茶言ってるのよ」
 そこにミレーヌの突込みが入る。
「機械に音楽がわかる筈ないでしょう」
「そんなことはねえよ」
 しかしバサラはそれを聞き入れようとはしない。
「機械だろうが異星人だろうが俺の歌の前には勝てはしねえよ」
「自信があるのですね」
 ルリはここでピントがずれたような問いをした。
「言うまでもねえだろ」
 それに対するバサラの返答はいつもの通りであった。
「やってやるぜ俺はよお、宇宙を俺の歌で平和にしてやる」
「そんなことできるわけないでしょ」
「頑張って下さいね」
 ミレーヌとルリはそれぞれ全く違う受け答えをした。
「バサラさん、期待していますよ」
「そうかい、ルリちゃんは俺の歌を聴きたいのか」
「それで戦いが終わるのなら。そしてバサラさんにはその力があります」
「そら見ろ。ルリちゃんがお世辞なんて言うか!?」
「ルリさん、こんな馬鹿を持ち上げちゃ駄目ですよ」
「誰が馬鹿だ、誰が!」
「あんた以外に誰がいるってのよ!」
「何かファイアーボンバーは相変わらずねえ」
「血気盛んな年頃なんだろ」
 レミーとキリーはそれを聞きながら話をしていた。
「俺達もかってはああだったな」
「というと真吾にも若い頃があったのね」
「おい、それはあんまりだろう」
 真吾はレミーの言葉に苦笑いを浮かべた。
「俺だってまだ若いんだぞ。少なくともアムロ中佐よりはな」
「あら、そうだったの」
「何か老成してるって感じがするがね」
「声のせいかな」
「まあそれもあるわね」
「俺達も人のこと言えないけれど」
「この前ブライト艦長や万丈君の真似やったらそっくりだったしな」
「そういえばあたしもキシリア=ザビの真似やったら受けたし」
「老けて見られるってことかね、俺達は」
「損な話ね、どうも」
「まあグッドサンダーはそうしたチームだから」
「どういうチームなのよ、それって」
「老けた若年寄のチームってことさ。まあそれはそれでいいさ」
「花も恥らう乙女がそんなのじゃ」
「恋の一つもしたいってね」
「キリーはもててたんじゃないのか?」
「ブロンクスには女は寄り付かないさ」
「そうは言っても実は違うんじゃないの?」
「だったら今度試しに付き合ってみるかい?」
「生憎本物のレディーは安くはないわよ」
「おやおや」
「ダカールに到着しました」
 きりのいいところでルリから報告が入った。
「おや、遂に」
「あっという間だったけれどね」
 それでもグッドサンダーチームはいつもの調子であった。
「東側から敵接近。そして宇宙からも来ます」
「空挺作戦ということだな」
 ブライトがそれを聞いて呟いた。
「ホシノ少佐、敵の数は」
「宇宙に五百」
「地上には」
「モビルスーツ部隊が六百、そして戦艦が数十隻です」
「多いな」
「それだけ敵も必死ということでしょう」
「それでもまた数的にはロシアでティターンズと戦った時よりはましだな」
「ましなのかしら、それって」
 大介の呟きにエクセレンが突っ込みを入れる。
「まずは全軍戦闘配置につけ」
「了解」
「そして敵を迎撃する。何としてもダカールに入れるな」
「わかりました。それでは」
 ロンド=ベルも戦闘配置についた。ダカールの丁度前で布陣する。
「いいか、敵を一兵たりともダカールには入れるな」
 再びブライトの指示が下る。
「その時点で我等は負けだ。ネオ=ジオンを寄せ付けるな!」
「口で言うのは簡単だけれどねえ」
 デュオはそれを聞きながら軽く呟いた。
「実際にやるのはこりゃ難しいぜ」
「だがやれないことはない」
 トロワは冷静に述べた。
「こちらが間違えなければな」
「つまり俺達の問題ということか」
「そういうことになりますね」
 カトルがウーヒェイに答えた。
「今まで僕達は常に劣勢の中で戦ってきましたし」
「いつもと変わらないと思っていいのか」
「そう思えば少なくとも気は楽になる」
 ウーヒェイの言葉に今度はヒイロが答えた。
「戦いとは。気の持ちようだ」
「そういうことだ。落ち着いていけば問題はない」
 ノインも言った。
「敵の数、決して多くはない」
「おい、ノインさん」
 そこにリョーコが入ってきた。
「そりゃあんたみたいな綺麗な人が言う台詞じゃないぜ」
「そうなのか」
「それはゴツイおっさんが言う言葉だよ」
「やらせはせん、やらせはせんぞ!とかですよね」
「よく知ってるな、ヒカル」
「漫画のネタになりますから」
「では何と言えばいいのだ?」
「それはまあ。敵の数に負けるな、とかじゃねえのかな」
 そこまでは深く考えてはいなかった。リョーコの言葉は急に弱くなった。
「他にもあんのかも知れねえけどよ」
「どれがいいかな」
「数に負けるな!はどうでしょうか」
「そりゃおめえの描いているスポ根漫画の台詞だろ」
「あっ、そうでした」
「ったくよお、やっぱりノインさんはクールでビシッとした声じゃねえとな。決まらないんだよ」
「何かやけに私のことを気にかけてくれるな」
「何かな。放っておけないんだよ」
「リョーコさんって口や態度はあれですけれどすっごく優しいんですよ」
「おい、褒めたって何も出ねえぜ」
 そう返しながらも頬を赤らめさせている。
「あたしはケチだからな」
「はいはい」
「まあビシッとやってくれりゃいいから」
「わかった」
 ノインはそれに頷いた。
「ではそうさせてもらおう」
「おうよ。ところでな」
「何だ」
「ミリアルドさんのこと。頑張れよな」
「有り難う」
 それを聞いてすっと微笑んだ。
「ではそうさせてもらう」
「まあそういうことだ。じゃあ戦いに向かうぜ」
「了解!」
「美味しく頂きま~~~す」
 イズミもやって来た。そして遅れてジュンも。エステバリスチームもナデシコと共に前線に出て来たのである。
「やっぱり戦いは前に出ないとな!」
 ダイゴウジが叫ぶ。
「収まらん!今まで護衛ばかりでイライラしていたところだ!」
「その割には派手に暴れていたな」
 ナガレがそれに突っ込む。
「俺の気のせいか」
「気のせいじゃなくてその通りだよ」
 いつものようにサブロウタがそれに合わせる。
「ヤマダさん。無茶すっからなあ」
「ヤマダではない。ダイゴウジだ!」
 そしてダイゴウジもいつもと変わりがなかった。
「俺の名はダイゴウジ=ガイだ!何度言えばわかる!」
「じゃあダイゴウジさん」
 たまりかねたサブロウタが言う。
「何だ」
「今回は大人しくやってくれるんでしょうね」
「フッ、笑止!」
「笑止って」
「つまりいつもと変わりがないということか」
「それが俺の戦闘スタイルだ!突撃、格闘、熱血、撃破!それが俺の戦い方だ!」
「エステバリスの特性とは少し違うな」
「まあそれでも戦えるんだけれどね」
「アキト、御前はどうだ!」
 ダイゴウジはアキトに話を振ってきた。
「あっ、俺ですか」
「そうだ。貴様の戦闘スタイルは何だ!熱血か!」
「そう言われましても」
 アキトは少し戸惑っていた。
「まあゲキガンガーみたいにはやりたいですけれど」
「では熱血だな!」
「はあ、まあ」 
 戸惑いながらも答える。
「ならばいい!男は熱血だ!」
「いいこと言うじゃん、ダイゴウジさん!」
 それにリュウセイが乗ってきた。
「おお、ダテ!」
「やっぱり男は熱くなくちゃな!派手にガーンと!」
「そう、派手にガーンと!」
「あんなこと言ってるぞ、サブロウタ」
「声が似てると複雑な気分だね、こりゃ」
 サブロウタはリュウセイとダイゴウジのやりとりを聞きながら苦笑していた。
「あんたはキャラ被っていていいけれどな」
「まあな」 
 ナガレはサブロウタの言葉に頷いた。
「それじゃあ今回も派手にやろうぜ!」
「そのうち合体を見せてくれよな!」
「おう、任せとけ!」
 リュウセイとダイゴウジは相変わらず熱い世界に入っていた。そして話を続ける。だがそれは中断されてしまった。
「ヤマダさん、ダテさん」
 ルリの声が通信に入ってきた。
「ダイゴウジだ!」
「敵が出現します」
 ルリはダイゴウジに構わず言う。
「何と」
「ってさっきから言われてることじゃないか」
「人の話は聞いて欲しいな、いつもながら」
「ええい、黙れ黙れ!」
 サブロウタとナガレの突込みをかわす。
「そして敵は!?ネオ=ジオンは前からだな」
「はい。そして火星の後継者達が今来ました」
「上から」
「そうです。今出ます」
 それと同時に彼等の前に木星トカゲ達が姿を現わした。かなりの数であった。
「来た!」
「彼等だけではありません」
 ルリの言葉が続く。
「ネオ=ジオンも。来ました」
 その声に従うかのようにネオ=ジオンも姿を現わした。彼等は数十隻の戦艦の前にモビルスーツ部隊を展開させてきていた。明らかに戦う気であった。
「決戦を挑むつもりだな」
「シャア、やはりいるな」
 グワダンの艦橋から声がした。ハマーンがそこにいたのだ。
「ハマーン、あくまでジオンの亡霊に従い続けるか」
「言え。どうせ貴様にはわからぬことだ」
 ハマーンは不敵に笑ってそれに返した。
「貴様にはな」
「言ってくれるな」
 思わせぶりに言ったハマーンに対してクワトロも返した。この時一瞬であるが彼はクワトロ=バジーナではなくシャア=アズナブルとなっていた。
「だが今は貴様と話している時間はない。全軍攻撃開始」
「はっ」
 ネオ=ジオンはそれを受けて攻撃態勢に入った。
「ダカールに突入する。よいな」
「やはり来るか」
 アムロがそれを聞いて呟く。
「皆、わかってるな」
「はい」
 シーブックがそれに応える。
「全軍守りを固めろ。何としても守り抜くぞ」
「守るのかよ。何か性に合わねえなあ」
「そうぼやくな、ジュドー」
 カミーユが彼を窘める。
「これもまた戦いの一つだからな」
「わかってますよ。カミーユさんは細かいなあ」
「君がまた大雑把過ぎるんだよ」
 カミーユは困った様な顔をして返した。
「そんなのだと周りが困るぞ」
「それはカミーユも気をつけなさいよ」
 ファが言った。
「俺もか」
「意外と乱暴なんだから。フォローするのが大変よ」
「済まない」
「まあそれがカミーユの持ち味だけれどね。それは覚悟のうえだし」
「悪いな、いつも」
「そのかわり後でコーヒーを頂戴ね。クリームをたっぷり入れたのを」
「了解」
「チョコレートケーキもつけて。いいかしら」
「何だよ、またケーキか」
「ファも好きね」
 フォウがそれを聞いて微笑む。
「そう言うフォウだってこの前ケーキ美味しそうに食べてたじゃない。人参のケーキ」
「セシリーちゃんの作ったのね。彼女ケーキも上手なのよ」
「まあパンと似た様なところもあるけれど。美味しかった?」
「ええ、とても」
 フォウはそれに頷いた。
「美味しかったわ。今度ファも食べてみればいいわ」
「今度ね。今はチョコレートケーキが」
「コーヒーにチョコレートって腹が黒くなるぞ」
「いいのよ、どうせカミーユみたいな我が侭なのと一緒にいるんだから」
「俺は我が侭か」
「自分の胸に聞いてみなさい。困ってるんだから」
「ちぇっ」
「話はそれで終わりね」
 まとめるようにしてエマが言った。
「エマさん」
「来たわよ。用意はいい?」
 エマはそう言いながら前に出て来た。そしてビームライフルを構える。
「はい」
 カミーユ達もそれに頷いた。そして前に出る。
 攻撃に移る。まずはエマがビームを放つ。
「前に出るから!」
 ガザCが一機撃墜された。ビームで貫かれ爆発四散する。それが戦いの合図となった。
 ネオ=ジオン、そして火星の後継者達とロンド=ベルのダカールを巡る攻防がはじまった。ロンド=ベルはダカールの前で陣を敷き突撃して来る敵軍を迎え撃っていた。
 敵は数を頼りに来る。しかしそれに対してロンド=ベルは的確な動きでそれを防ぐ。数をものとはしなかった。
「やるな、やはり」
 ハマーンはグワダンの艦橋で敵の動きを見ながらこう呟いた。
「やはりあちらに兵を向けておいて正解だったな」
「はい」
 周りの部下達がそれに頷く。
「ミネバ様もな。本来はこのようなことはしたくはなかったのだが」
「これも作戦ですな」
「オウギュスト達なら信頼できますが」
「それもそうだな」
 それには頷くことにした。
「我等の攻撃は陸と空からだけではない。それを思い知らせてやる」
「はっ」
 部下達はまた頷いた。
「それでは引き続き攻撃に移りましょう」
「そうだな。引き続き攻撃に取り掛かれ。よいな」
「了解」
 ネオ=ジオンの攻撃は続いた。彼等はあくまでもその数を背景に攻撃を続ける。時として回り込み、時としては離れ。ハマーンもまたその用兵を見せていた。
「木星トカゲはともかくネオ=ジオンの動きはいいな」
 ブライトもそれに気付いていた。
「敵の前線指揮官は誰だ」
「キャラ=スーンとイリア=パゾム、それにラカン=ダカランです」
 トーレスがそれに答える。
「ゲーマルクとリゲルグ、それにドーベンウルフが確認されています」
「彼等がか」
「はい。ですが全体的な指揮はハマーンが執っているようです」
「だからか。この動きは」
 ブライトはそれを聞いて納得した。
「では我々も警戒しなくてはならないな。アムロとクワトロ大尉に伝えてくれ」
「はい」
「細かい指揮は頼むと。私とグローバル艦長はあくまで艦隊の指揮に徹するとな」
「わかりました。それではそう連絡します」
「頼むぞ。細かいところまでやらないとこれは勝てない」
 ブライトは歴戦の勘からそう判断した。彼も伊達に多くの戦いを潜り抜けてきたわけではないのだ。
「あの二人、そしてバニング大尉、フォッカー少佐に細かい部分は任せたい」
「わかりました。それでは」
「頼むぞ。しかしハマーン=カーン」
 ブライトは呟いた。
「やってくれるな、何処までも」
 戦いは激しさを増していた。ネオ=ジオンは巧みな攻撃を仕掛け続ける。だがロンド=ベルは基本的に動じずそのまま守りを固めていたのであった。
「キュベレイは出ないのか!?」
 その中カミーユはあることに気付いた。
「これはどういうことなんだ」
「どうやら後方で全体の指揮に専念しているようね」
 エマがそれに応えた。
「全体の指揮に」
「少なくとも今は彼女が戦場に出る時じゃないってことよ」
「そうなんですか」
「ええ。それよりも今は敵を防ぐことを考えましょう」
「はい」
「ダカールに入れてはならないのは変わらないから。いいわね」
「わかりました。それじゃあ」
 カミーユのゼータツーからメガランチャーが放たれた。
「いっけえええええええええええええ!!」
 それで敵のエンドラを一隻撃沈する。戦いは遂にネオ=ジオンの後方に控える戦艦達にまで及んでいた。
「クッ、一撃かい!」
 キャラがそれを見て呻く。
「やってくれるねえ、坊や達」
「何時までもおばさんに遅れをとっているわけにはいかないんだよ!」
「言ってくれるね、ジュドー!」
 キッとジュドーを見返す。
「あたしだってまだ花の二十代なんだよ!」
「あっ、そういえばそうだった」
「ハマーン様なんて二十一歳だよ!」
「ううむ、とてもそうは見えねえなあ」
「けれどあたし達から見れば立派なおばさんだよね」
 プルが無邪気な声で言う。
「それを言うと後が怖いぞ、プル」
「だって本当のことだもん。や~~いおばさん」
「どうやらあんた達、死にたいらしいねえ」
 キャラはこめかみをヒクヒクとさせながら言った。
「まずはあんた達からやってあげるよ!このあたしの燃えるビートでね!」
「何かバサラさんみたいなこと言うなあ」
「面白いねえ。じゃああたしもファイアーボンバーみたいに派手にやってやろうかい!」
「あんたも若かしてファンか?」
「だったらどうしたっていうんだい?」
「・・・・・・いや、だったらいいんだけどよ」
 ジュドーは少し口篭った。
「まあ、元気でやってくれ」
「!?よくわかんないけれどやってやるよ!」
 そう言いながらファンネルを繰り出してきた。
「死になっ!」
「死ねって言われて」
「そう簡単に死ぬ奴なんていないんだよっ!」
「ファンネル!」
「あたし達だって持ってるんだよ!」
 プルとプルツーが返す。そしてキュベレイのファンネルでゲーマルクのファンネルを全て撃ち落してしまった。
「チッ、ファンネルをかい」
 キャラはそれを確認してまた舌打ちをした。
「じゃあ次の手段があるさ」
「二人共気をつけろ」
 ジュドーはプルとプルツーに対して言った。
「ゲーマルクはとにかく武装が多いからな。厄介だぞ」
「そんなのもう知ってるもん」
「伊達に前の戦争を生き抜いてきたわけじゃないよ」
「じゃあ大丈夫なんだな」
「任せて」
「それよりジュドーも自分の身は自分で守れよ」
「へッ、プルツーは相変わらずだな」
「そうじゃなきゃ気分が悪いだろ?」
 プルツーは笑いながらそう言葉を返した。
「あたしがプルみたいだと」
「いや、見分けつきにくいから」
「おや、面白いこと言ってくれるね」
「あまり変わりはねえと思うぜ。それじゃまあ話を最初に戻して」
「やるよ!」
「ジュドーも気をつけろよ!」
「言われなくたってわかってらあ!」
「アッハハハハハハハハハハハハハ!」
 キャラは高笑いを浮かべながら攻撃に入った。
「死ぬんだよ、ここで!」
 ゲーマルクの全身からビームを放つ。ゲーマルクの重武装を生かした効果的な攻撃であった。
「チッ!」
 だがジュドーとプル達はそのビームを的確な動きで全てかわした。左右に動き、そして舞う。とりわけプルとプルツーのキュベレイの動きは華麗であった。
「こんなモン!」
「あたし達には通用しないよ!」
「じゃあもう一回やってやるさ!」
 キャラは完全に戦いに酔っていた。
「このゲーマルクに勝てる奴なんていやしないんだよ!」
 三人とゲーマルクの戦いは続く。その横ではガンダムチームとラカン率いるドーベンウルフ隊の戦闘が繰り広げられていた。ガンダムとネオ=ジオンの誇る重モビルスーツ達の死闘であった。
「ネオ=ジオンのモビルスーツはやけに重装備だな」
 シナプスがそれを見て呟いた。
「あそこまで重装備のモビルスーツを前線に投入して来るとはな」
「だが数はそれ程ではありません」
 パサロフがそれに答えた。
「見たところ。一機一機の性能は高いですが量産性には劣っているようです」
「どうやらその様だな」
 シナプスもそれに頷いた。
「ザクⅢにしろ数が少ない」
「はい」
「ネオ=ジオンの弱点か。数の問題は」
「だからこそ重装備のモビルスーツを開発したのだと思われます」
 ジャクリーヌも話に入って来た。
「数の分を質で補う為に」
「ふむ」
「おそらくこれからも重装備のモビルスーツを戦場に投入してくるでしょう。サイコガンダムマークⅡやクイン=マンサといった
ものを」
「ネオ=ジオンも必死というわけだな」
「はい。今は戦線に投入して来てはいませんが」
「いずれは来るだろうな。その時は用心しておくか」
「はい」
「だが今投入して来ないのは。引っ掛かるな」
「整備の問題でしょうか」
「他に何かあるかも知れん」
「それは一体」
「まだわからないが。嫌な予感がする」
 シナプスは歴戦の勘からそれを感じ取っていた。
「ネオ=ジオンは奇襲を好む。今回もそうだった」
「はい」
 この迂回戦術のことを言っているのである。
「まだ何かやって来るかも知れない。警戒は続けよ」
「了解」
 戦いは続いていた。だが次第にマシン及びパイロットの質で遥かに優位に立つロンド=ベルが優勢となってきていた。木星トカゲはその殆どが姿を消し、ネオ=ジオンのモビルスーツ隊もかなりのダメージを受けていた。
「ハマーン様」
 ここでランス=ギーレンが申し出て来た。彼はガズアルで出撃していたが戻って来ていたのである。
「もう潮時かと思いますが」
「そうだな」
 ハマーンもそれに頷いた。
「では随時戦場から退いていく」
「ハッ」
「後は・・・・・・彼等がやってくれるな」
「はい」
 ランスは不敵に笑うハマーンに対して応えた。
「では撤退だ」
「了解」
「すぐには下がるな。敵に知られてはまずい」
「わかりました」
 こうしてネオ=ジオンは少しずつ戦勝から退いていった。それはあまりにも少しずつであったのでさしものロンド=ベルの者達も気付かなかった。只一人を除いて。
「これは」
 セレーナであった。前線でゼータに乗って戦う彼女はネオ=ジオンの動きに不審なものを感じていたのだ。
「ブライト大佐」 
 彼女はすぐにラー=カイラムに通信を入れた。するとすぐにブライトがモニターに出て来た。
「どうした」
「ネオ=ジオンの策にかかりました」
「策に」
「はい。彼等は今この東と北、そして西から攻撃を仕掛けていますね」
「ああ」
「ですが南は。今そちらへの備えはありますか」
「そういえば」
 ブライトもそう言われハッとした。
「だがあそこは海だ。まさかとは思うが」
「そのまさかです。ネオ=ジオンにはジオンの残党も協力しています」
「うむ」
「その中には潜水艦部隊もあります。ジオンの水中モビルスーツ部隊もです」
「彼等がか」
 かってキシリアの配下として暴れ回った者達であった。クワトロもシャア=アズナブルであった頃ジオンの水陸両用モビルスーツであるズゴッグに乗っていたことがある。そしてそれで連邦軍の本拠地であるジャブローに大々的な強襲を仕掛けたこともある。
「彼等がネオ=ジオンと協力しているとなると。恐ろしいことになります」
「ううむ」
 ブライトはそれを受けて考え込んだ。チラリと敵の動きを見る。
「確かにな」
 彼もここで敵の動きがわかった。
「どうやら撤退に移るようだ。この戦いで撤退するとなると」
「撤退できる状況にある、ということですから」
「そうだな。ではダカールに対して第二の奇襲の可能性がある」
「はい」
「わかった。ではすぐに足の速い部隊を数機ダカールの港に向かわせよう。気付かれぬようにな」
「わかりました。それでは」
「うむ」
 こうして数機ダカールの港に向けられた。だが主力は尚もこの戦場に釘付けとなってしまっていた。
「どうやら敵は我等の意図に気付いたようですな」
「その様だな」
 ハマーンは今度はニー=ギーレンの言葉に頷いた。彼もまたグワダンに戻っていたのだ。
「どうされますか」
「だからといって行かせるわけにはいかん。攻撃を続けよ」
「ハッ」
「そしてここから動かせるな。奴等が行けば我等の作戦は失敗に終わる」
「はい」
「既にサイは投げられた。後は作戦を成功させるだけだ。そしてその為には」
「ここで彼等を引き留める」
「うむ」
 こうしてネオ=ジオンは撤退を進めながらも攻撃に入っていった。戦いは更に熾烈なものとなっていた。
「クッ、しつこい!」
「また木星トカゲが来ました!」
 メグミの声が響く。するとそれに呼応するかの様に木星トカゲ達が姿を現わす。そしてロンド=ベルの動きを妨げる。
「ネオ=ジオンのモビルスーツも反転してきました!」
「またか!」
「中にはそのまま突っ込んで来る者達もいます!」
「クッ!」
 戦場に苦渋の声が聞こえた。それが誰のものであったのかはわからない。
 だがそれがロンド=ベルの今の声であった。彼等は勝ちながらも焦りを感じていた。
「このままでは」
「ダカールが・・・・・・」
 その焦りは逆にネオ=ジオンにとっては喜びであった。それこそが彼等の目的が達成されようとしていることの何よりの証であるからだ。
「もうすぐだな」
 ハマーンはグワダンの艦橋で会心の笑みを浮かべていた。
「ジオンの大義が現実のものとなる時は」
「はい」
 部下達もそれに頷く。
「いよいよです」
「ミネバ様もお喜びだろう」
 ダカールを見ながら呟く。
「このハマーン、ミネバ様の為なら鬼でもなろう」
 そう呟いた。戦いは尚も続いていた。

第六十二話   完


                                    2005・12・22

 
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