髑髏天使
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第三十七話 光明その十六
「今日も素振りを何百、いや千本はしていた」
「千本もなの」
「素振りだけでな」
そうしていたと話す。
「他にも色々としていたな」
「相変わらず矍鑠たるっていうの?」
少し難しい言葉を出す未久だった。
「そういう感じよね」
「そしてお婆ちゃんもだ」
「相変わらず元気なのね」
「元気過ぎる程だ。それでだ」
「それで?」
「今からそこに行く」
話をかなり先に進めた言葉だった。
「わかったな」
「ええ、それじゃあ晩御飯もね」
「食べていないのか、まだ」
「あれっ、連絡してなかったっけ」
「聞いていないが」
こう妹に答える。
「今はじめて聞いた」
「お婆ちゃんには携帯でお話したけれど」
「お婆ちゃんにはか」
「お兄ちゃんには伝わっていなかったのね。けれどいいわ」
それでもだというのだった。
「お婆ちゃんが知ってるのならね」
「それでいいか」
「ええ。じゃあ行こう」
兄に対して出発を勧める。
「お屋敷にね」
「よし、行くぞ」
「それじゃあね」
こう話してだった。二人で屋敷に戻る。サイドカーは速度こそ出しているがそれでも安全な運転でだ。祖父母のいる屋敷に戻ったのであった。
屋敷に戻りだ。そうして夕食になった。とはいっても未久だけだ。牧村は既に食べていたので横で菓子を食べていた。そうした団欒だった。
未久は冷奴とカレイの煮たものを食べながらだ。兄に問うてきた。
「ねえ」
「ねえ?」
「その笹団子私のもある?」
牧村が食べているのは笹団子だった。それを見ながらの問いだった。
「それも」
「勿論だ」
食べながら妹の問いに答える。
「アイスもある」
「アイスもあるの」
「バニラだが。どうだ」
「それもいいわね」
話を聞いてだった。彼女は悩む顔になった。そのうえでの言葉だった。
「バニラも」
「どちらかだ」
「両方は駄目なのね」
「そうだ、どちらかだ」
これは外せないというのだ。
「夕食を食べてからだ。どちらかだ」
「ううん、どうしようかしら」
「まずは夕食だぞ」
「それはわかってるわよ」
当然といった返答だった。
「それはね」
「ではどうしてそう言う」
「だから。悩んでいるのよ」
「悩んでいるのか」
「そうよ、悩んでるのよ」
こう兄に返すのである。
「どっちにするかね」
「笹団子かバニラかか」
「どっちも捨て難いけれど」
「一つ言っておく」
ここでまた言う兄だった。
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