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髑髏天使

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第三十六話 日常その五


「この街を作ったな」
「まあ元々は尾張の人だけれどね」
「信長さんと同じでね」
「それに言葉だってね」
「向こうの言葉だったし」
「そうだったな」
 牧村もこのことは知っていた。妖怪達のその言葉に対して頷く。
「尾張の言葉丸出しだったそうだな」
「今で言うあれだよね」
「名古屋弁ね」
「それね」
「名古屋の言葉は独特じゃからな」
 ここでまた言った博士だった。
「あの言葉には少し馴染めんものもある」
「そうなんだ」
「博士って名古屋苦手なんだ」
「苦手ではないが雰囲気が違うからのう」
 だからだというのであった。
「名古屋の食べ物は好きじゃがな」
「ああ、名古屋のはいいよね」
「そうそう、あれはね」
「確かにね」
 妖怪達は食べ物の話になるとさらに元気になる。いつも通りである。
「味噌の味が強くてね」
「海老も多いし」
「きし麺最高だよね」
「それにういろうもね」
「ただ。あの言葉で中日の応援をするとじゃ」
 博士の話は野球に関するものになってきた。
「いささかのう」
「ああ、博士って阪神ファンだからね」
「もう球団設立以来だから古いよね」
「六十年?七十年だったっけ」
「そこまで古くないんじゃないの?」
 妖怪達は野球にも詳しかった。やはり長生きをしているだけはある。
「まあかなり古いチームなのは確かだけれどね」
「巨人の次だったっけ」
「中日にしても古いけれど」
「うむ、思えば中日にも随分と負けた」
 阪神の長い歴史では多くのことがあった。中には暗黒時代もあったのだ。
「それこそ星の数だけだけのう」
「阪神ねえ。一時期凄く弱かったしね」
「確かにね」
 そんな話もするのであった。
「もうね。常に負けていたからね」
「負けて負けて負けまくって」
「実に見事なまでにね」
 所謂阪神暗黒時代である。その時の阪神の弱さは筆舌に尽くし難いものがあった。百敗ですら夢ではないとまで言われてきたのである。
「その時は凄かったね」
「けれど阪神応援止めなかったし」
「寿命が縮むんじゃないかって思ったけれど」
「それでも応援続けたし」
「阪神は別格のスポーツチームなのじゃよ」
 その博士の言葉である。
「あそこはのう」
「そうそう、どんな勝ち方でも負け方でもね」
「絵になるからね」
「納得できるから」
 妖怪達にしてもであった。どうやら阪神が好きなようだ。言葉も表情も明るいものになってそのうえで阪神の話もするのだった。
「どんな見事な勝ち方でも無様な負け方でもね」
「絵になるから凄いよね」
「普通にね」
「それが阪神なのじゃよ」
 博士の言葉は温かい。
「それこそがじゃ」
「勝っても負けてもなんだ」
「そうだからね」
「凄いチームだよ」
「それに対して巨人はどうじゃ」
 阪神ファンらしく巨人は嫌いな博士であった。 
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