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髑髏天使

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第三十五話 瞑想その十四


「それに梅干と納豆だよ」
「納豆も食べるのか」
「おかしいかい?納豆嫌いかい?」
「いや、好きだ」
 すぐに返答を返した。
「むしろ大好きだ。他のものと同じだ」
「それならいいね」
「大阪でも納豆を食べるか」
「最近じゃ結構食べるようになったよ。時代は変わったからね」
 祖母は笑っている。納豆も好きであるらしい。話からそれがわかる。
「だからね」
「納豆はいい食べ物だ」
「美味しいし身体にもいいしね」
「家でもよく食べる」
「いいことだよ。あの娘に納豆を食べさせたのは私だし」
「お袋にか」
「そうだよ。私なんだよ」
 笑顔のままである。そのうえでの孫への言葉だった。
「あの人にもね。何とか食べさせてね」
「お爺ちゃんにもか」
「いや、あの人は生粋の大阪人だから。最初はもう見ただけで嫌がって」
 関西では昔は納豆は食べなかった。それこそ食べる人間はおろか納豆自体が忌み嫌われたものだ。食べる人間は異端視された程だ。
「凄かったからね」
「それを食べさせたのか」
「お婆ちゃんの家は大阪だけれど食べてたからね」
「その時は珍しい家だったのか」
「物凄くね。珍しい家だったんだよ」
 そうだったと話すのである。
「本当にね」
「そうだったのか」
「そうだよ。まあそれでも食べてもらって」
 そうしてである。
「今に至るんだよ。そうかい、納豆は好きなんだね」
「そのままかき混ぜて食べる」
 牧村は食べ方についても話した。
「白い御飯にかけてだ」
「その食べ方がいいね。じゃあ今から」
「食べるか」
「たっぷり食べるんだよ。遠慮はいらないからね」
「済まない」
「御礼なんていいよ。じゃあ皆で食べよう、お爺ちゃんも呼んでね」
 こうして三人で食べる。そして食べてからトレーニングに入った。いつも通りランニングに筋力トレーニング、それとフェシングとテニスの練習をした。それが終わり夕食の前にはだ。道場に入り座禅を組む。
 それが終わり目を開けるとだ。そこには祖父がいた。彼は自分の孫に対して静かに言ってきた。
「昨日よりも統一されてきているな」
「心がだな」
「左様、よいことだ」
 それをいいというのであった。
「まことにな。よいことだ」
「俺もそう思う」
「心を統一し迷いを払い」
 老人の言葉は続く。
「そうして全てを払うのだ」
「そこに俺の辿るべき道があるか」
「あるな」
 それは間違いないというのだ。
「少なくともここに来る前までならばだ」
「そのままだったなら」
「御前は取り込まれていた」
 こう孫に告げた。
「御前が進むべきでない世界の中にだ」
「そこにか」
「そうなっていた」
「危ないところだったか」
「今もだ」
 また言ってきた。
「今もそうなる恐れがある」
「危ないか」
「座禅だ」
 具体的な言葉だった。
「座禅を組みそしてだ」
「己の中に築いていくか」
「そうするのだ。御前は今まで身体を鍛錬してきたな」
「その通りだ」
「これからは心もだ」
 それもだというのである。 
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